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「ゆっくり育児放棄」(前編) 後編に“ちーちー”の描写が薄っすらと含まれてるよ!! 「んほおおおおおおあおおあおあおあお!!!すっきりするううぅぅぅうっぅうぅぅぅぅ!!!!」 「れいむううううっぅぅぅぅぅう!!!すっぎりじでえええええぇえぇえぇぇ!!!」 飛び散る、汁、汁、汁。 木の根元に掘られた巣穴の奥。誰も入り込まない2人の愛の巣。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさは、生まれてはじめての“すっきり”をした。 「「んほほほほほあおあおおあおあおあおあおあおあ!!!すっきりいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!!」」 血走る目、大きく開かれた口。そこからばら撒かれる唾液と、その他のいろいろな粘液。 子供なら泣いて逃げ出してしまうだろう、バケモノのような風貌で2匹は同時に達した。 外は暗黒。れみりゃすら出歩かない真夜中。 2匹は、存分に余韻に浸っていた。 「んひゅうううぅぅぅ……すっきりしたよぉ…」 「まりさもぉ……すっきりぃー……」 ―――2匹がそれぞれの親元から離れ、共に新たなゆっくりプレイスを探す旅に出たのは、半年前ことだ。 それまで親の庇護の元、何不自由なくゆっくりしてきた2匹にとって、その旅は苦労の連続だった。 『ゆーん……おなかすいたよぉ……』 『がんばってね!!もうすぐおはなさんをたくさんたべられるからね!!』 度重なる野宿。3食満足な食事がとれる保証はなかった。 『ゆゆ!!あめさん!!ゆっくりやんでね!!』 『ゆっくりしすぎだよ!!まりさたちがゆっくりできないよ!!』 雨が3日間連続して降ったときは、このまま雨が二度と止まないのではないかと不安になった。 容赦ない雨に打たれ、溶けて死んでいったゆっくりを見て、2匹は恐ろしさに震えが止まらなかった。 『うー!!たーべちゃーうぞー♪』 『うわあああああああぁぁぁあぁぁぁ!!!れみりゃだああああぁぁああぁぁぁ!!!!』 『だべないでえぇぇえぇぇえっぇぇ!!!まりざはおいじぐないよおおおおおおぉぉぉ!!!』 寝床を見つけられないまま夜になってしまい、れみりゃと遭遇したときは死を覚悟した。 それでも運よく、れみりゃの入れない小さな洞穴を見つける事が出来、2匹揃って生き延びる事が出来た。 何度も何度も、命の危機を乗り越え……やっと見つけたゆっくりプレイス。 そこはゆっくりがみんな仲良くゆっくりしている最高の楽園。 れいむとまりさは、これ以上のゆっくりプレイスはないと確信し、定住を決意した。 『まりさ!!ここならずっとゆっくりできるよ!!』 『そうだね!!これからもいっしょにゆっくりしようね!!』 半年の旅を経て、2匹の愛は更に深まっていた。 共に危険を乗り越えてきた2匹。その愛を断ち切ることは、誰にも出来ない。 『れいむはまりさのあかちゃんがほしいよ!!とてもゆっくりしたあかちゃんがほしいよ!!』 『まりさもだよ!!れいむのゆっくりとしたあかちゃん!!ふたりでゆっくりつくろうね!!』 そして、今。 2匹は母ゆっくりから教わっていた方法で、記念すべき最初のすっきりをしたのだ。 「ゆー!!とてもゆっくりしたあかちゃんだよ!!」 「そうだね!!かわいいあかちゃんだね!!うまれたらみんなでゆっくりしようね!!」 れいむの頭の上に生えた、3本の蔓。 合計20個の実が、そこには実っていた。 2匹はなんとなく、こうなるだろうと思っていた。きっとれいむが子を実らせるだろう、と。 なんとなく、である。その方がゆっくり出来る気がした、それだけのことだ。 「ゆっくりうまれてきてね!!ゆっくりでいいからね!!」 「うまれてきたらいっしょにたくさんゆっくりしようね!!」 蔓に実った20匹のゆっくりに、微笑みながら話しかける2匹。 まだ目は開いておらず、口も閉じたまま。帽子もリボンも無いので、両親のどちらと同じ形で生まれるかもわからない。 でも、すでに耳は機能しているようで、両親の言葉を聞いてぴくりと身を震わす赤ん坊もいた。 「ゆぅぅぅぅ!!!ゆっくりきこえたんだね!!れいむはうれしいよおおおおおお!!!」 「これならうまれてからもゆっくりできるよおおおおお!!!」 2匹は嬉しさのあまり、大粒の涙を流した。 半年間の旅の苦労。至ることのできた最高のゆっくりプレイス。そして、これから生まれるであろうかわいい子供。 れいむとまりさが思い描く未来は、とても明るかった。ずっとずっとゆっくりできる。根拠はないけど、確信していた。 「「ゆっくりしていってね!!」」 そんな、夜。2匹が輝かしい未来に思いを馳せている、その瞬間。 それほど遠くない場所で、悲劇は起こっていた。 「いや……どぼぢで…ごんなごどにいいぃぃ………」 暗い巣穴。全身ボロボロの状態で、目に涙を浮かべながら外を見つめるのは、ゆっくりまりさだ。 その視線の先には、背を向けて満足げに去っていくゆっくりありす。 「ひどいよ……ぜんぜんゆっぐじでぎないよおおおおおお………」 まりさの頭上には3本の蔓が生えていた。原因は、ありすによるレイプだ。 昼間に草原で出会ったありすに一目惚れし、自分のおうちに連れてきてしまった結果がこれである。 まりさは、今になってかつての母親の教えを思い出した。 『ありすとふたりきりになったら、ゆっくりできなくなるよ!!』 間違っても、ありすをおうちに連れ込んで2人きりになってはいけなかったのだ。 しかし、それを思い出したところで、今更遅い。まりさはありすとの子を実らせてしまった事実は、取り消せない。 まりさの頭上には、合計20匹の赤ちゃんゆっくりが実っていた。 「ゆぐうううぅぅぅぅ!!!どうすればいいのおおおおおおおお!!??こんなこどもいやだよおおおおおおお!!!」 レイプ魔ありすの子供なんて、生みたくないし育てたくもない。 だからといって殺すわけにもいかなかった。もし子供を殺している現場が他のゆっくりに見つかれば、集団リンチものである。 この群れに処刑という概念はないが、ゆっくりを殺してはいけないという最低限の倫理観は存在していた。 「……このままじゃゆっぐじでぎなぐなるよおおおおおおお!!!」 自分は、まだまだゆっくりしたい。望んでもいない子供の世話なんてまっぴらだ。 成体になったとはいえ、まだまだ遊び盛りのまりさにとって、子育て……それもレイプされて生まれた子供を育てるという行為は、苦痛でしかなかった。 可能ならば、子供は生みたくない。生まれたとしても、絶対に育てたくない。 そんなまりさの思いとは裏腹に、蔓に実った子供は順調に形を成していく。 うっすら閉じた目。きゅっと結んだ口。髪飾りはまだないので、親のどちらに似て生まれるかはわからない。 それでも、確実にゆっくりとしての形は形成していた。おそらく、数時間後……日の出直後には生まれてしまうだろう。 「ゆぅ……ゆっくりしたいよぉ……こんなあかちゃんいやだよおぉ………どうすればいいのぉ!?」 その時だった。そう遠くない、離れた巣から2匹のゆっくりの声がかすかに聞こえたのは。 「ゆっくりうまれてきてね!!ゆっくりでいいからね!!」 「うまれてきたらいっしょにたくさんゆっくりしようね!!」 赤ん坊が実ったことを祝福する、ゆっくりれいむとゆっくりまりさの声だ。 2匹の明るい声色から、まりさは理解した。これから向こうで生まれる赤ん坊達は、みんな望まれて出来た、祝福されるべき赤ん坊なのだ。 まりさは、うらやましかった。存分に愛し合う2匹が。その結果生まれる、愛されることを約束された赤ん坊が。 それにくらべて、自分はどうだ。一目惚れしたありすに裏切られ、20匹もの赤ん坊を孕まされて独りぼっち。 もし、このまま赤ん坊が生まれれば、自分だけでその世話をしなければならない。 「ゆっぐ……ずるいよぉ………どうしてまりさだけ…ゆっくりさせてくれないのぉ……?」 まりさは、羨ましさを通り越して、2匹が憎くなった。 自分がこんな目にあっているのに、どうしてあいつらは幸せなんだ。ずるい。ずるい。こんなの不公平だ。 心の中で毒づくまりさ。自分の不幸を嘆き、そしてその不幸に対して何も出来ない、無力なまりさ。 その時、まりさは“ある事”を思いついた。 「ゆっ?………ゆゆゆゆゆゆゆゆっ!!」 まりさの表情が、一気に晴れた。自分の身に降りかかった不幸を払いのける、最良の方法を思いついたのだ。 自分で子供を殺す必要はなく、それでいて自分で子供を育てる必要もない……そんな最高の方法。 簡単なことだ。子供を育てるのが“自分”である必要はない。 「ゆふふ!!いいことおもいついたよ!!これでゆっくりできるよ!!」 まりさは、暗闇の向こうの……例の2匹の巣がある方向へ、視線を向けた。 早朝。 眠ることなく赤ん坊の誕生を今か今かと待っていた、れいむとまりさ。 かつて母ゆっくりに教わった事が本当なら、そろそろ生まれてもいい頃だ。 「ゆーん……あかちゃんたち、とてもゆっくりしてるね!!」 「そうだね!!でもまりさはそろそろうまれてきてほしいよ!!」 ゆっくり生まれてきて欲しいと望んではいるが、早く生まれた赤ちゃん達とゆっくりしたい。その気持ちも本物だ。 でも、無理やり蔓から切り離したら、赤ちゃん達がゆっくりできなくなる。 まりさはもどかしさに身悶えながら、誕生のときを待ち続けた。 そして。 「……ゆゆっ!?なんだかへんなかんじがするよ!!」 「れいむ!!あかちゃんがゆっくりうごいてるよ!!もうすぐゆっくりうまれるんだよ!!」 違和感を感じたれいむ。まりさはれいむの頭上を見上げた。 かすかに目を開き、もごもごと口を動かしている赤ちゃんゆっくり。出産のときが近いのだ。 その違和感の正体を知ったれいむは、その場にじっと留まって視線を上に向ける。 「ゆゆゆ!!うまれるよ!!ゆっくりうまれるよおおおおおお!!」 「がんばってね!!あかちゃんはゆっくりがんばってね!!」 ゆらゆらと、自分の力で実を揺らす赤ちゃんゆっくり。 母ゆっくりが手伝う必要はない。じっと待っていれば、そのうち自力で蔓から切り離れる。 赤ちゃんゆっくりは目をぎゅっと閉じ、力を振り絞って身体を揺らしている。 ぶち…ぶちぶち… 赤ちゃんゆっくりの頭と蔓とのつなぎ目が、少しずつ千切れていく。そして… ぶちっ!! ぽとん!! 最初の赤ちゃんゆっくりが、ぼよんと軽やかに弾みながら生れ落ちた。 「ゆっ…ゆゆ……ゆっくちしちぇいってね!!」 「ゆっくりしていってね!!れいむがおかーさんだよ!!」 「まりさもおかーさんだよ!!いっしょにゆっくりしようね!!」 これ以上ない幸福感だった。自分を生んだお母さんも、こんな思いだったのだろうか。 そんなことを考えながら、2匹の母親は最大級の歓迎でもって赤ちゃんゆっくりの誕生を祝福した。 「ゆっくちうまれりゅよー!!」「ゆっくちぃ~!!」 次々に生まれてくる、赤ちゃんゆっくりたち。 そのどれもがとてもゆっくりした、かけがえの無い子供たちだ。 10分ほどで、蔓に実っていた赤ちゃんゆっくり20匹全員が、無事に生まれ落ちた。 れいむ種が10匹、まりさ種が10匹、ちょうど半分ずつ。最適なバランスだった。 「ゆ~!!いっぱいうまれたね!!みんなとてもゆっくりしてるよぉ!!」 「そうだね!!これからはみんなでゆっくりするよ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!!」」 「「「「「ゆっきゅちしていってにぇ!!」」」」」 「ずっとみんなでゆっくりしようね!!」 「おかーさんたちがゆっくりさせてあげるからね!!」 「「「「「ゆっくちそだててね!!!」」」」」 明るい声。明るい笑顔。誰もが幸せを感じ、それが永遠に続くと信じて疑わない。 たくさんの子供に囲まれて、れいむとまりさは幸せの絶頂に達していた。 そんな明るい笑い声が絶えない、木の根元の横穴。 すぐ近くの草陰に隠れているのは、頭上に3本の蔓を生やしたゆっくりまりさだ。 「ゆゆゆ!!まりさもゆっくりうまれそうだよ!!」 奇しくも、その蔓に実っているのは巣の中の赤ちゃんゆっくりと同じ、20匹。 だがまりさにとっては、赤ん坊の数などどうでもいいことだった。 とにかく、一刻も早く頭上の赤ちゃんを何とかしたい、それだけしか考えていない。 「ゆーん!!もうすこしでゆっくりできるよ!!!」 まりさは、“その時”が来るのをゆっくりと待ち続けた。 朝。 赤ちゃんが生まれてから1時間半後。 赤ちゃんゆっくりたちは、れいむの頭から切り離した蔓を食べた後、仲良く眠りについた。 あれほど賑やかだったおうちの中も、赤ん坊が眠ってしまうと元通りの静けさを取り戻す。 「ゆー…ゆっくりねむってるね!!」 「れいむ!!いまのうちにたべものをとりにいこうよ!!」 「ゆゆ!!それはめいあんだね!!」 れいむとまりさは、赤ちゃん達のために食べ物を取りに行くことにした。 親が2匹とも健在ならば、片方は赤ちゃんを見守るために残るべきなのだが、2匹はそうしなかった。 この2匹の巣は、れみりゃにも発情ありすにも見つからない完璧なカムフラージュが施されている。 雨の日に雨宿りにやってくるゆっくりすらいないぐらいだ。 食べ物を取りに行っている間も誰も来ないだろうし、赤ちゃんが目覚める前に帰ってくる自信もあった。 だから、2匹は眠っている赤ちゃんを置いて、食べ物を取りに行くことにしたのだ。 「ゆっくりしないでとってこようね!!」 「そうだね!!あかちゃんがおきるまえにゆっくりかえってこようね!!」 若干食い違っているような会話を交えながら、れいむとまりさは巣の外へと飛び出していく。 協力して食べ物をたくさん集めて、子供たちを喜ばせてあげよう。 そう心に決めて、草原の彼方へと跳ねていった。 「ゆへへ!!やっとでてきたよ!!」 まりさは、その時を待っていた。 巣の中の幸せそうな2匹が、赤ん坊を置き去りにしておうちから離れる、その時を。 2匹が巣穴から飛び出してくるのをその目で確認し、完全に姿が見えなくなるのを待ってから、まりさはその巣穴へと飛び込んだ。 「ゆー……たくさんゆっくりしてるよ」 一箇所に固まって眠っている赤ちゃんゆっくりを見て、まりさは独り言をこぼした。 目の前に並ぶのは、これからゆっくりさせてもらうことが確定しているであろう、幸せな赤ちゃん達。 そんな赤ちゃん達の穏やかな寝顔を見て、まりさは可愛く思ったが同時に憎くも感じた。 可愛い赤ん坊の寝顔。幸せそうな夫婦の笑顔。そして、それを取り巻く愛情。すべてが憎かった。 「……どうしておまえたちだけゆっくりできるの?まりさだってゆっくりしたいんだよ!?」 その憎しみは、本来ならレイプ魔ありすにぶつけるべきものだ。 だが、その相手は昨夜に逃亡して行方知れず。怒りが湧き起こっても、それをぶつける相手はもういないのだ。 「ゆぐぐ!!さっさとうまれてね!!ゆっくりしないでうまれてね!!」 まりさは、自分がここへ来た目的を思い出し、頭上の蔓をゆっさゆっさと揺らし始めた。 ここには長居すべきではない。れいむとまりさの夫婦が帰ってこない間に、そして赤ん坊達が眠っている間に、出産を終えなければならない。 頭上の赤ちゃん達のことを考えれば、蔓を揺らして無理やり赤ちゃんを産み落とすのはよくないことだ。 しかし、望まない赤ちゃんと一刻も早く縁を切りたいまりさにとって、赤ん坊の生まれた後のことなどどうでもよかった。 「うぐぐぐっぐ!!!さっさとしてね!!はやくうまれないとおこるよ!!」 母親の怒声に覚醒した頭上の赤ちゃん達が、慌てて身を揺すり始める。 やっと生まれる気になったのか、悪魔の子供め。 まりさは半分呆れ顔で、蔓を揺らし続けた。 「ゆっくち!!ゆっくちゆらしゃないでね!!まりしゃはゆっきゅちうまれりゅよ!!」 「ありしゅもゆっきゅちうまれちゃいよ!!ゆらしゃないでね!!」 無理やり蔓を揺らされるのは、赤ん坊にとっては気分のいいものではない。 場合によっては乗り物酔いと同じような状態になり、中身を吐き出してしまうこともあるのだ。 「うるさいよ!!さっさとうまれないとゆるさないよ!!ゆっくりしないでうまれてね!!」 赤ん坊に対する言葉とは思えないぐらい、まりさはその声に怒気を込めている。 母の頭上で眠っているとき、誕生を祝福されることを夢見ていた赤ちゃん達にとって、その言葉は心にどう響くだろうか。 「ゆきゅぅ……わかっちゃよ!!ゆっくちしないでうまれるにぇ!!」 「ゆん!!おきゃーさんもてちゅだってね!!」 「いわれなくてもわかってるよ!!ゆっくりしないでうまれてね!!さっさとうまれてね!!」 さっきから怒ってばかりの母親を見て、赤ちゃん達は悲しげな表情を浮かべながら身体を揺らし続ける。 まりさの揺れと、赤ちゃん達の揺れ。その2つの揺れで、赤ちゃん達と蔓との繋ぎ目が千切れていく。 そして……ぶちん!ぶちぶちぶちん!!ぶちぶちん!! 「ゆっきゅちうまりぇたよ!!」「ゆっくし!!」「ゆっくりぃ~!!」 ほぼ同時に、20匹の赤ちゃんが生まれ落ちた。まりさ種が10匹、ありす種が10匹だ。 目の前にいる大きなゆっくりまりさを母親と認識し、揃ってまりさの方を向く。 そして小さな目をうるうると輝かせながら、赤ちゃん達は生まれてはじめて“挨拶”をした。 「「「「「ゆっきゅちしちぇいってね!!」」」」」 「うるさいよ!!ゆっくりだまってね!!」 赤ちゃん達は唖然としてしまった。元気な挨拶が返ってくると思っていたのに、母の口から飛び出した言葉は全然違うものだった。 その意味は正確には理解できなかったが、なんとなく……怒られたのだという事だけはわかった。 「ゆ……どおちておこるの?」 「まりしゃたちわりゅいことしちゃの?」 「ゆっくちおこりゃないでね!!ありしゅたちはおかーしゃんのかわいいこどもだよ!!」 「ゆっくりしゃべらないでね!!ゆっくりできなくするよ!!」 「「「ゆん……」」」 それっきり、赤ちゃんゆっくりたちは黙り込んでしまった。 赤ちゃん達は、自分が望まれないで生まれたということを知らない。 母まりさがこんなにも自分達につらくあたる理由が、まったくわからないのだ。 「おかーしゃん……まりしゃおなかすいたよ…」 「ありしゅも!!ありしゅもおなかすいた!!」 「まりさも!!」「ありすも!!」「おなかしゅいたー!!」 生まれたての赤ちゃんは、基本的に空腹である。 普通なら母ゆっくりに、蔓を噛み砕いたものを食べさせてもらうのだが、まりさはそれをしなかった。 「ゆぐぐぐぐぐ!!!そんなにおなかがすいたなら、そこらへんのものをたべればいいよ!!」 と、言い切ったところで……まりさの視界にあるものが入った。 それは、れいむとまりさの夫婦が生んだ、赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさである。 まりさはゆっくり考えた。 最初はこのまま赤ん坊達を置き去りにして、帰ってきたれいむとまりさに育てさせる予定だった。 でも、これだけ赤ちゃんが増えればさすがに気づかれてしまうだろう。そうしたら計画は水泡に帰してしまう。 だから、赤ちゃんの数を最初と同じ程度まで減らす必要がある。 そのためにはどうすればいい? ゆっくり殺しは、見つかればリンチものだ。こんなクソガキのために痛い目に遭いたくない。 どうすれば……どうすれば、子供の数を減らせる? 自分で殺さず、子供を減らす方法…… 「ゆっ!!ゆゆゆゆゆ!!!!」 その時、まりさの餡子脳に電撃が走った。 思いついたのだ。子供の数を減らす最良の方法を。自分の手を汚さず、子供を減らす方法だ。 簡単なことだ。子供を殺すのが“自分”である必要はない。 「みんな!!ゆっくりきいてね!!そこにころがってる“まんじゅう”をみてね!!」 「ゆっ?まんじゅう?」「ゆっくちできりゅの?」「おなかしゅいたよ!!」 “饅頭”という言葉を知らない赤ちゃん達は、それがゆっくりできるものなのか、腹を満たせるものなのか、そうでないのかわからない。 だが、その言葉が示しているのが目の前で眠っている赤ちゃんゆっくりだと分かると、赤ちゃん達は困ったように口々に呟いた。 「おかーしゃん!!それはまんじゅうじゃないよ!!れいみゅだよ!!」 「そうだお!!このまりしゃはまんじゅうじゃないお!!」 目の前のこれは、れいむとまりさである。だから饅頭ではない。そんな思考である。 それでもまりさは怒らず、大きな声でゆっくりと言い聞かせた。 「ゆ!!おまえたちにはそうみえるんだね!!でもこいつらはね、れいむとまりさによくにた“まんじゅう”なんだよ!!」 「「「ゆゆゆ!?そうにゃの!?」」」 饅頭がどんなものなのかは分からないが、目の前のれいむとまりさが、れいむとまりさに良く似た別のものだということは理解した。 そして、肝心の饅頭とはいったいどんなものなのか。赤ちゃん達は、母まりさの説明を待った。 「ゆっくりきいてね!!まんじゅうはとてもゆっくりできる“たべもの”だよ!!」 「ゆゆっ!!たべものなの!!ゆっくちたべたいよ!!」 「ゆっくりたべてね!!めをさましたらあばれるかもしれないけど、まけちゃだめだよ!!」 お膳立てはそれで十分だった。 生まれたての赤ちゃん達は、空腹にとても弱い。 目の前の“ゆっくりに似たもの”が食べ物だと教えられれば、もう迷うことはない。 赤ちゃんゆっくりは、眠っている赤ちゃん達に飛び掛って大きく口を開いた。 生まれてはじめての“食事”である。 「ゆっくち!!ゆっくちたべりゅよ!!」 「ありしゅもたべりゅよ!!おなかすいたもん!!」 「いびゃっ!?なに!?だれなにょ!?」 「やめでね!!まりしゃはたべものじゃないよ!!」 まりさが生んだ赤ちゃん達に食いつかれ、目を覚ますれいむとまりさたち。 だが、反撃することはできなかった。一度でも身体の一部分を食いちぎられれば、パワーで相手を押しのけることはできない。 体格が殆ど変わらない赤ちゃんゆっくりにとって、先攻を取ることは普通のゆっくり以上に重要なのだ。 「やめっで…たべぼのじゃ……ない…」 「うそつかないでね!!おかーさんがいってたよ!!おまえたちはたべものなんだよ!!」 「たべものはまりしゃたちにゆっくちたべられてね!!」 「いだいいだいいだいいだい!!もっど!!もっどゆっぎじじだいのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「おがーじゃんだじゅげでええええぇぇええぇぇ!!!!」 「もっどぉおおおお…ゆっぐじいいいぃぃ……しだが……った…」 あっという間だった。 突然起こされた赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさは、まともに反撃することもかなわず……一匹残らず食い殺された。 空腹だった赤ちゃん達によって欠片残さず飲み込まれ、周囲には小さなリボンと帽子だけが残されている。 生まれてから一時間も経たずして、赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさはこの世を去った。 「ゆー!!おなかいっぱい!!」「ゆっきゅりできゆよ!!」 これだけ赤ちゃんを減らせば、れいむとまりさの夫婦にも気づかれないだろう。 赤ちゃん達が満腹感に浸っている隙に、まりさはこっそりと巣穴から抜け出した。 「ゆへへ!!これでゆっくりできるよ!!ひとりでゆっくりできるよ!!」 身軽になったまりさは、ゆっくりするために草原へと跳びはねていった。 母親に捨てられてしまったことを、巣の中の赤ちゃん達はまだ知らない…… (続く) 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
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「ゆっくり育児放棄」(前編) 後編に“ちーちー”の描写が薄っすらと含まれてるよ!! 「んほおおおおおおあおおあおあおあお!!!すっきりするううぅぅぅうっぅうぅぅぅぅ!!!!」 「れいむううううっぅぅぅぅぅう!!!すっぎりじでえええええぇえぇえぇぇ!!!」 飛び散る、汁、汁、汁。 木の根元に掘られた巣穴の奥。誰も入り込まない2人の愛の巣。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさは、生まれてはじめての“すっきり”をした。 「「んほほほほほあおあおおあおあおあおあおあおあ!!!すっきりいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!!」」 血走る目、大きく開かれた口。そこからばら撒かれる唾液と、その他のいろいろな粘液。 子供なら泣いて逃げ出してしまうだろう、バケモノのような風貌で2匹は同時に達した。 外は暗黒。れみりゃすら出歩かない真夜中。 2匹は、存分に余韻に浸っていた。 「んひゅうううぅぅぅ……すっきりしたよぉ…」 「まりさもぉ……すっきりぃー……」 ―――2匹がそれぞれの親元から離れ、共に新たなゆっくりプレイスを探す旅に出たのは、半年前ことだ。 それまで親の庇護の元、何不自由なくゆっくりしてきた2匹にとって、その旅は苦労の連続だった。 『ゆーん……おなかすいたよぉ……』 『がんばってね!!もうすぐおはなさんをたくさんたべられるからね!!』 度重なる野宿。3食満足な食事がとれる保証はなかった。 『ゆゆ!!あめさん!!ゆっくりやんでね!!』 『ゆっくりしすぎだよ!!まりさたちがゆっくりできないよ!!』 雨が3日間連続して降ったときは、このまま雨が二度と止まないのではないかと不安になった。 容赦ない雨に打たれ、溶けて死んでいったゆっくりを見て、2匹は恐ろしさに震えが止まらなかった。 『うー!!たーべちゃーうぞー♪』 『うわあああああああぁぁぁあぁぁぁ!!!れみりゃだああああぁぁああぁぁぁ!!!!』 『だべないでえぇぇえぇぇえっぇぇ!!!まりざはおいじぐないよおおおおおおぉぉぉ!!!』 寝床を見つけられないまま夜になってしまい、れみりゃと遭遇したときは死を覚悟した。 それでも運よく、れみりゃの入れない小さな洞穴を見つける事が出来、2匹揃って生き延びる事が出来た。 何度も何度も、命の危機を乗り越え……やっと見つけたゆっくりプレイス。 そこはゆっくりがみんな仲良くゆっくりしている最高の楽園。 れいむとまりさは、これ以上のゆっくりプレイスはないと確信し、定住を決意した。 『まりさ!!ここならずっとゆっくりできるよ!!』 『そうだね!!これからもいっしょにゆっくりしようね!!』 半年の旅を経て、2匹の愛は更に深まっていた。 共に危険を乗り越えてきた2匹。その愛を断ち切ることは、誰にも出来ない。 『れいむはまりさのあかちゃんがほしいよ!!とてもゆっくりしたあかちゃんがほしいよ!!』 『まりさもだよ!!れいむのゆっくりとしたあかちゃん!!ふたりでゆっくりつくろうね!!』 そして、今。 2匹は母ゆっくりから教わっていた方法で、記念すべき最初のすっきりをしたのだ。 「ゆー!!とてもゆっくりしたあかちゃんだよ!!」 「そうだね!!かわいいあかちゃんだね!!うまれたらみんなでゆっくりしようね!!」 れいむの頭の上に生えた、3本の蔓。 合計20個の実が、そこには実っていた。 2匹はなんとなく、こうなるだろうと思っていた。きっとれいむが子を実らせるだろう、と。 なんとなく、である。その方がゆっくり出来る気がした、それだけのことだ。 「ゆっくりうまれてきてね!!ゆっくりでいいからね!!」 「うまれてきたらいっしょにたくさんゆっくりしようね!!」 蔓に実った20匹のゆっくりに、微笑みながら話しかける2匹。 まだ目は開いておらず、口も閉じたまま。帽子もリボンも無いので、両親のどちらと同じ形で生まれるかもわからない。 でも、すでに耳は機能しているようで、両親の言葉を聞いてぴくりと身を震わす赤ん坊もいた。 「ゆぅぅぅぅ!!!ゆっくりきこえたんだね!!れいむはうれしいよおおおおおお!!!」 「これならうまれてからもゆっくりできるよおおおおお!!!」 2匹は嬉しさのあまり、大粒の涙を流した。 半年間の旅の苦労。至ることのできた最高のゆっくりプレイス。そして、これから生まれるであろうかわいい子供。 れいむとまりさが思い描く未来は、とても明るかった。ずっとずっとゆっくりできる。根拠はないけど、確信していた。 「「ゆっくりしていってね!!」」 そんな、夜。2匹が輝かしい未来に思いを馳せている、その瞬間。 それほど遠くない場所で、悲劇は起こっていた。 「いや……どぼぢで…ごんなごどにいいぃぃ………」 暗い巣穴。全身ボロボロの状態で、目に涙を浮かべながら外を見つめるのは、ゆっくりまりさだ。 その視線の先には、背を向けて満足げに去っていくゆっくりありす。 「ひどいよ……ぜんぜんゆっぐじでぎないよおおおおおお………」 まりさの頭上には3本の蔓が生えていた。原因は、ありすによるレイプだ。 昼間に草原で出会ったありすに一目惚れし、自分のおうちに連れてきてしまった結果がこれである。 まりさは、今になってかつての母親の教えを思い出した。 『ありすとふたりきりになったら、ゆっくりできなくなるよ!!』 間違っても、ありすをおうちに連れ込んで2人きりになってはいけなかったのだ。 しかし、それを思い出したところで、今更遅い。まりさはありすとの子を実らせてしまった事実は、取り消せない。 まりさの頭上には、合計20匹の赤ちゃんゆっくりが実っていた。 「ゆぐうううぅぅぅぅ!!!どうすればいいのおおおおおおおお!!??こんなこどもいやだよおおおおおおお!!!」 レイプ魔ありすの子供なんて、生みたくないし育てたくもない。 だからといって殺すわけにもいかなかった。もし子供を殺している現場が他のゆっくりに見つかれば、集団リンチものである。 この群れに処刑という概念はないが、ゆっくりを殺してはいけないという最低限の倫理観は存在していた。 「……このままじゃゆっぐじでぎなぐなるよおおおおおおお!!!」 自分は、まだまだゆっくりしたい。望んでもいない子供の世話なんてまっぴらだ。 成体になったとはいえ、まだまだ遊び盛りのまりさにとって、子育て……それもレイプされて生まれた子供を育てるという行為は、苦痛でしかなかった。 可能ならば、子供は生みたくない。生まれたとしても、絶対に育てたくない。 そんなまりさの思いとは裏腹に、蔓に実った子供は順調に形を成していく。 うっすら閉じた目。きゅっと結んだ口。髪飾りはまだないので、親のどちらに似て生まれるかはわからない。 それでも、確実にゆっくりとしての形は形成していた。おそらく、数時間後……日の出直後には生まれてしまうだろう。 「ゆぅ……ゆっくりしたいよぉ……こんなあかちゃんいやだよおぉ………どうすればいいのぉ!?」 その時だった。そう遠くない、離れた巣から2匹のゆっくりの声がかすかに聞こえたのは。 「ゆっくりうまれてきてね!!ゆっくりでいいからね!!」 「うまれてきたらいっしょにたくさんゆっくりしようね!!」 赤ん坊が実ったことを祝福する、ゆっくりれいむとゆっくりまりさの声だ。 2匹の明るい声色から、まりさは理解した。これから向こうで生まれる赤ん坊達は、みんな望まれて出来た、祝福されるべき赤ん坊なのだ。 まりさは、うらやましかった。存分に愛し合う2匹が。その結果生まれる、愛されることを約束された赤ん坊が。 それにくらべて、自分はどうだ。一目惚れしたありすに裏切られ、20匹もの赤ん坊を孕まされて独りぼっち。 もし、このまま赤ん坊が生まれれば、自分だけでその世話をしなければならない。 「ゆっぐ……ずるいよぉ………どうしてまりさだけ…ゆっくりさせてくれないのぉ……?」 まりさは、羨ましさを通り越して、2匹が憎くなった。 自分がこんな目にあっているのに、どうしてあいつらは幸せなんだ。ずるい。ずるい。こんなの不公平だ。 心の中で毒づくまりさ。自分の不幸を嘆き、そしてその不幸に対して何も出来ない、無力なまりさ。 その時、まりさは“ある事”を思いついた。 「ゆっ?………ゆゆゆゆゆゆゆゆっ!!」 まりさの表情が、一気に晴れた。自分の身に降りかかった不幸を払いのける、最良の方法を思いついたのだ。 自分で子供を殺す必要はなく、それでいて自分で子供を育てる必要もない……そんな最高の方法。 簡単なことだ。子供を育てるのが“自分”である必要はない。 「ゆふふ!!いいことおもいついたよ!!これでゆっくりできるよ!!」 まりさは、暗闇の向こうの……例の2匹の巣がある方向へ、視線を向けた。 早朝。 眠ることなく赤ん坊の誕生を今か今かと待っていた、れいむとまりさ。 かつて母ゆっくりに教わった事が本当なら、そろそろ生まれてもいい頃だ。 「ゆーん……あかちゃんたち、とてもゆっくりしてるね!!」 「そうだね!!でもまりさはそろそろうまれてきてほしいよ!!」 ゆっくり生まれてきて欲しいと望んではいるが、早く生まれた赤ちゃん達とゆっくりしたい。その気持ちも本物だ。 でも、無理やり蔓から切り離したら、赤ちゃん達がゆっくりできなくなる。 まりさはもどかしさに身悶えながら、誕生のときを待ち続けた。 そして。 「……ゆゆっ!?なんだかへんなかんじがするよ!!」 「れいむ!!あかちゃんがゆっくりうごいてるよ!!もうすぐゆっくりうまれるんだよ!!」 違和感を感じたれいむ。まりさはれいむの頭上を見上げた。 かすかに目を開き、もごもごと口を動かしている赤ちゃんゆっくり。出産のときが近いのだ。 その違和感の正体を知ったれいむは、その場にじっと留まって視線を上に向ける。 「ゆゆゆ!!うまれるよ!!ゆっくりうまれるよおおおおおお!!」 「がんばってね!!あかちゃんはゆっくりがんばってね!!」 ゆらゆらと、自分の力で実を揺らす赤ちゃんゆっくり。 母ゆっくりが手伝う必要はない。じっと待っていれば、そのうち自力で蔓から切り離れる。 赤ちゃんゆっくりは目をぎゅっと閉じ、力を振り絞って身体を揺らしている。 ぶち…ぶちぶち… 赤ちゃんゆっくりの頭と蔓とのつなぎ目が、少しずつ千切れていく。そして… ぶちっ!! ぽとん!! 最初の赤ちゃんゆっくりが、ぼよんと軽やかに弾みながら生れ落ちた。 「ゆっ…ゆゆ……ゆっくちしちぇいってね!!」 「ゆっくりしていってね!!れいむがおかーさんだよ!!」 「まりさもおかーさんだよ!!いっしょにゆっくりしようね!!」 これ以上ない幸福感だった。自分を生んだお母さんも、こんな思いだったのだろうか。 そんなことを考えながら、2匹の母親は最大級の歓迎でもって赤ちゃんゆっくりの誕生を祝福した。 「ゆっくちうまれりゅよー!!」「ゆっくちぃ~!!」 次々に生まれてくる、赤ちゃんゆっくりたち。 そのどれもがとてもゆっくりした、かけがえの無い子供たちだ。 10分ほどで、蔓に実っていた赤ちゃんゆっくり20匹全員が、無事に生まれ落ちた。 れいむ種が10匹、まりさ種が10匹、ちょうど半分ずつ。最適なバランスだった。 「ゆ~!!いっぱいうまれたね!!みんなとてもゆっくりしてるよぉ!!」 「そうだね!!これからはみんなでゆっくりするよ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!!」」 「「「「「ゆっきゅちしていってにぇ!!」」」」」 「ずっとみんなでゆっくりしようね!!」 「おかーさんたちがゆっくりさせてあげるからね!!」 「「「「「ゆっくちそだててね!!!」」」」」 明るい声。明るい笑顔。誰もが幸せを感じ、それが永遠に続くと信じて疑わない。 たくさんの子供に囲まれて、れいむとまりさは幸せの絶頂に達していた。 そんな明るい笑い声が絶えない、木の根元の横穴。 すぐ近くの草陰に隠れているのは、頭上に3本の蔓を生やしたゆっくりまりさだ。 「ゆゆゆ!!まりさもゆっくりうまれそうだよ!!」 奇しくも、その蔓に実っているのは巣の中の赤ちゃんゆっくりと同じ、20匹。 だがまりさにとっては、赤ん坊の数などどうでもいいことだった。 とにかく、一刻も早く頭上の赤ちゃんを何とかしたい、それだけしか考えていない。 「ゆーん!!もうすこしでゆっくりできるよ!!!」 まりさは、“その時”が来るのをゆっくりと待ち続けた。 朝。 赤ちゃんが生まれてから1時間半後。 赤ちゃんゆっくりたちは、れいむの頭から切り離した蔓を食べた後、仲良く眠りについた。 あれほど賑やかだったおうちの中も、赤ん坊が眠ってしまうと元通りの静けさを取り戻す。 「ゆー…ゆっくりねむってるね!!」 「れいむ!!いまのうちにたべものをとりにいこうよ!!」 「ゆゆ!!それはめいあんだね!!」 れいむとまりさは、赤ちゃん達のために食べ物を取りに行くことにした。 親が2匹とも健在ならば、片方は赤ちゃんを見守るために残るべきなのだが、2匹はそうしなかった。 この2匹の巣は、れみりゃにも発情ありすにも見つからない完璧なカムフラージュが施されている。 雨の日に雨宿りにやってくるゆっくりすらいないぐらいだ。 食べ物を取りに行っている間も誰も来ないだろうし、赤ちゃんが目覚める前に帰ってくる自信もあった。 だから、2匹は眠っている赤ちゃんを置いて、食べ物を取りに行くことにしたのだ。 「ゆっくりしないでとってこようね!!」 「そうだね!!あかちゃんがおきるまえにゆっくりかえってこようね!!」 若干食い違っているような会話を交えながら、れいむとまりさは巣の外へと飛び出していく。 協力して食べ物をたくさん集めて、子供たちを喜ばせてあげよう。 そう心に決めて、草原の彼方へと跳ねていった。 「ゆへへ!!やっとでてきたよ!!」 まりさは、その時を待っていた。 巣の中の幸せそうな2匹が、赤ん坊を置き去りにしておうちから離れる、その時を。 2匹が巣穴から飛び出してくるのをその目で確認し、完全に姿が見えなくなるのを待ってから、まりさはその巣穴へと飛び込んだ。 「ゆー……たくさんゆっくりしてるよ」 一箇所に固まって眠っている赤ちゃんゆっくりを見て、まりさは独り言をこぼした。 目の前に並ぶのは、これからゆっくりさせてもらうことが確定しているであろう、幸せな赤ちゃん達。 そんな赤ちゃん達の穏やかな寝顔を見て、まりさは可愛く思ったが同時に憎くも感じた。 可愛い赤ん坊の寝顔。幸せそうな夫婦の笑顔。そして、それを取り巻く愛情。すべてが憎かった。 「……どうしておまえたちだけゆっくりできるの?まりさだってゆっくりしたいんだよ!?」 その憎しみは、本来ならレイプ魔ありすにぶつけるべきものだ。 だが、その相手は昨夜に逃亡して行方知れず。怒りが湧き起こっても、それをぶつける相手はもういないのだ。 「ゆぐぐ!!さっさとうまれてね!!ゆっくりしないでうまれてね!!」 まりさは、自分がここへ来た目的を思い出し、頭上の蔓をゆっさゆっさと揺らし始めた。 ここには長居すべきではない。れいむとまりさの夫婦が帰ってこない間に、そして赤ん坊達が眠っている間に、出産を終えなければならない。 頭上の赤ちゃん達のことを考えれば、蔓を揺らして無理やり赤ちゃんを産み落とすのはよくないことだ。 しかし、望まない赤ちゃんと一刻も早く縁を切りたいまりさにとって、赤ん坊の生まれた後のことなどどうでもよかった。 「うぐぐぐっぐ!!!さっさとしてね!!はやくうまれないとおこるよ!!」 母親の怒声に覚醒した頭上の赤ちゃん達が、慌てて身を揺すり始める。 やっと生まれる気になったのか、悪魔の子供め。 まりさは半分呆れ顔で、蔓を揺らし続けた。 「ゆっくち!!ゆっくちゆらしゃないでね!!まりしゃはゆっきゅちうまれりゅよ!!」 「ありしゅもゆっきゅちうまれちゃいよ!!ゆらしゃないでね!!」 無理やり蔓を揺らされるのは、赤ん坊にとっては気分のいいものではない。 場合によっては乗り物酔いと同じような状態になり、中身を吐き出してしまうこともあるのだ。 「うるさいよ!!さっさとうまれないとゆるさないよ!!ゆっくりしないでうまれてね!!」 赤ん坊に対する言葉とは思えないぐらい、まりさはその声に怒気を込めている。 母の頭上で眠っているとき、誕生を祝福されることを夢見ていた赤ちゃん達にとって、その言葉は心にどう響くだろうか。 「ゆきゅぅ……わかっちゃよ!!ゆっくちしないでうまれるにぇ!!」 「ゆん!!おきゃーさんもてちゅだってね!!」 「いわれなくてもわかってるよ!!ゆっくりしないでうまれてね!!さっさとうまれてね!!」 さっきから怒ってばかりの母親を見て、赤ちゃん達は悲しげな表情を浮かべながら身体を揺らし続ける。 まりさの揺れと、赤ちゃん達の揺れ。その2つの揺れで、赤ちゃん達と蔓との繋ぎ目が千切れていく。 そして……ぶちん!ぶちぶちぶちん!!ぶちぶちん!! 「ゆっきゅちうまりぇたよ!!」「ゆっくし!!」「ゆっくりぃ~!!」 ほぼ同時に、20匹の赤ちゃんが生まれ落ちた。まりさ種が10匹、ありす種が10匹だ。 目の前にいる大きなゆっくりまりさを母親と認識し、揃ってまりさの方を向く。 そして小さな目をうるうると輝かせながら、赤ちゃん達は生まれてはじめて“挨拶”をした。 「「「「「ゆっきゅちしちぇいってね!!」」」」」 「うるさいよ!!ゆっくりだまってね!!」 赤ちゃん達は唖然としてしまった。元気な挨拶が返ってくると思っていたのに、母の口から飛び出した言葉は全然違うものだった。 その意味は正確には理解できなかったが、なんとなく……怒られたのだという事だけはわかった。 「ゆ……どおちておこるの?」 「まりしゃたちわりゅいことしちゃの?」 「ゆっくちおこりゃないでね!!ありしゅたちはおかーしゃんのかわいいこどもだよ!!」 「ゆっくりしゃべらないでね!!ゆっくりできなくするよ!!」 「「「ゆん……」」」 それっきり、赤ちゃんゆっくりたちは黙り込んでしまった。 赤ちゃん達は、自分が望まれないで生まれたということを知らない。 母まりさがこんなにも自分達につらくあたる理由が、まったくわからないのだ。 「おかーしゃん……まりしゃおなかすいたよ…」 「ありしゅも!!ありしゅもおなかすいた!!」 「まりさも!!」「ありすも!!」「おなかしゅいたー!!」 生まれたての赤ちゃんは、基本的に空腹である。 普通なら母ゆっくりに、蔓を噛み砕いたものを食べさせてもらうのだが、まりさはそれをしなかった。 「ゆぐぐぐぐぐ!!!そんなにおなかがすいたなら、そこらへんのものをたべればいいよ!!」 と、言い切ったところで……まりさの視界にあるものが入った。 それは、れいむとまりさの夫婦が生んだ、赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさである。 まりさはゆっくり考えた。 最初はこのまま赤ん坊達を置き去りにして、帰ってきたれいむとまりさに育てさせる予定だった。 でも、これだけ赤ちゃんが増えればさすがに気づかれてしまうだろう。そうしたら計画は水泡に帰してしまう。 だから、赤ちゃんの数を最初と同じ程度まで減らす必要がある。 そのためにはどうすればいい? ゆっくり殺しは、見つかればリンチものだ。こんなクソガキのために痛い目に遭いたくない。 どうすれば……どうすれば、子供の数を減らせる? 自分で殺さず、子供を減らす方法…… 「ゆっ!!ゆゆゆゆゆ!!!!」 その時、まりさの餡子脳に電撃が走った。 思いついたのだ。子供の数を減らす最良の方法を。自分の手を汚さず、子供を減らす方法だ。 簡単なことだ。子供を殺すのが“自分”である必要はない。 「みんな!!ゆっくりきいてね!!そこにころがってる“まんじゅう”をみてね!!」 「ゆっ?まんじゅう?」「ゆっくちできりゅの?」「おなかしゅいたよ!!」 “饅頭”という言葉を知らない赤ちゃん達は、それがゆっくりできるものなのか、腹を満たせるものなのか、そうでないのかわからない。 だが、その言葉が示しているのが目の前で眠っている赤ちゃんゆっくりだと分かると、赤ちゃん達は困ったように口々に呟いた。 「おかーしゃん!!それはまんじゅうじゃないよ!!れいみゅだよ!!」 「そうだお!!このまりしゃはまんじゅうじゃないお!!」 目の前のこれは、れいむとまりさである。だから饅頭ではない。そんな思考である。 それでもまりさは怒らず、大きな声でゆっくりと言い聞かせた。 「ゆ!!おまえたちにはそうみえるんだね!!でもこいつらはね、れいむとまりさによくにた“まんじゅう”なんだよ!!」 「「「ゆゆゆ!?そうにゃの!?」」」 饅頭がどんなものなのかは分からないが、目の前のれいむとまりさが、れいむとまりさに良く似た別のものだということは理解した。 そして、肝心の饅頭とはいったいどんなものなのか。赤ちゃん達は、母まりさの説明を待った。 「ゆっくりきいてね!!まんじゅうはとてもゆっくりできる“たべもの”だよ!!」 「ゆゆっ!!たべものなの!!ゆっくちたべたいよ!!」 「ゆっくりたべてね!!めをさましたらあばれるかもしれないけど、まけちゃだめだよ!!」 お膳立てはそれで十分だった。 生まれたての赤ちゃん達は、空腹にとても弱い。 目の前の“ゆっくりに似たもの”が食べ物だと教えられれば、もう迷うことはない。 赤ちゃんゆっくりは、眠っている赤ちゃん達に飛び掛って大きく口を開いた。 生まれてはじめての“食事”である。 「ゆっくち!!ゆっくちたべりゅよ!!」 「ありしゅもたべりゅよ!!おなかすいたもん!!」 「いびゃっ!?なに!?だれなにょ!?」 「やめでね!!まりしゃはたべものじゃないよ!!」 まりさが生んだ赤ちゃん達に食いつかれ、目を覚ますれいむとまりさたち。 だが、反撃することはできなかった。一度でも身体の一部分を食いちぎられれば、パワーで相手を押しのけることはできない。 体格が殆ど変わらない赤ちゃんゆっくりにとって、先攻を取ることは普通のゆっくり以上に重要なのだ。 「やめっで…たべぼのじゃ……ない…」 「うそつかないでね!!おかーさんがいってたよ!!おまえたちはたべものなんだよ!!」 「たべものはまりしゃたちにゆっくちたべられてね!!」 「いだいいだいいだいいだい!!もっど!!もっどゆっぎじじだいのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「おがーじゃんだじゅげでええええぇぇええぇぇ!!!!」 「もっどぉおおおお…ゆっぐじいいいぃぃ……しだが……った…」 あっという間だった。 突然起こされた赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさは、まともに反撃することもかなわず……一匹残らず食い殺された。 空腹だった赤ちゃん達によって欠片残さず飲み込まれ、周囲には小さなリボンと帽子だけが残されている。 生まれてから一時間も経たずして、赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさはこの世を去った。 「ゆー!!おなかいっぱい!!」「ゆっきゅりできゆよ!!」 これだけ赤ちゃんを減らせば、れいむとまりさの夫婦にも気づかれないだろう。 赤ちゃん達が満腹感に浸っている隙に、まりさはこっそりと巣穴から抜け出した。 「ゆへへ!!これでゆっくりできるよ!!ひとりでゆっくりできるよ!!」 身軽になったまりさは、ゆっくりするために草原へと跳びはねていった。 母親に捨てられてしまったことを、巣の中の赤ちゃん達はまだ知らない…… (続く) 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
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序盤は虐待少ないです ゲスまりさ注意 そんなまりさを制裁もの 子ゆっくりは……少し虐待 お兄さんの活躍が少し足りない ストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり それでも構わないという方はどうぞ下へ 育児放棄? そんなもんじゃないんだぜ!! 雪も解けた春先。 ゆっくりゆうかとリリーホワイトが遊ぶ庭先で、一人のお兄さんがくつろいでいた。 「ああ、春だ…。春はいい。ゆっくりがまた顔を出す季節だ」 ゆっくりゆうかが種を植えた場所を教え、リリーが花を咲かせる。 そんなほのぼのした光景を眺めながら、お兄さんはお茶菓子にしていたゆっくりれいむの頭を齧る。 ゆっ、と小さな悲鳴をあげて絶命するれいむ。それを見て悲鳴を上げる他のお茶受けれいむたち。 「それにしても、実にゆっくりした光景だ……。いいね、春」 ゆっくりできなぃいいいい! と横に置いてあったお茶受けどもが何か叫ぶが、煩いので全てに爪楊枝を突き刺して黙らせる。 「さて、それじゃそろそろ趣味の時間に移りますか……」 右手には虐待お兄さんの必須アイテム透明な箱。 お兄さんは余った餡子を全てゆうかに食べていいと言い残し、自分の畑へと足を向けた。 それは、確固たる目的のため。彼自身が冬の間待ち望んだ考えるだけで楽しい計画のためである。 そして畑。 「ゆっくりだせええええ!! 早くまりさをここから出すんだぜええええええ!!!」 「ゆえーん、おきゃーしゃんおなきゃしゅいたー」 「にゃんで、おやしゃいしゃんちゃべりゃりぇにゃいにょおおおお?」 「ゆえーんゆえーん!」 そこは青年が趣味の為に所有している畑。 春キャベツなど雪解け早々に収穫のできる野菜を中心に育てている。 全ては山から畑荒らしを目的にするゆっくりを誘い出すためだ。 何のためか? 決まっている。ヒャア、虐待だ!! そして案の定、畑にしかけた罠の籠には十匹ほどのゆっくりまりさ一家が捕まっていた。 「よう、まりさ。随分大勢で来たじゃないか?」 待ちに待ったこの瞬間、お兄さんは口を三日月に開いて話しかけた。 はてさて、今回の獲物はゲスか善良なゆっくりか。 「ゆっ! じじいがまりさたちをここにとじこめたんだぜ!? はやくだすんだぜええ!!」 望み通り獲物はゲス。お兄さんは心の中でガッツポーズをとった。 今回はゲスだからこそできる虐待である。 とはいえ、そもそも畑を荒らす時点でゲス決定なのだが……。 「にんげんしゃんはゆっきゅりできにゃいよ!」 「ゆっきゅりにげりゅよ!」 「ゆっきゅりできにゃいにんげんしゃんはちね!」 「これも、にんげんしゃんのわにゃにゃんだにぇ?」(これも人間さんの罠なんだね?) 「ちね! ちね!」 そして、口の悪い赤ゆども。 家族総出で籠に体当たりしてお兄さんを罵るが、生憎箱は加工場の特別性なのでビクともしない。 この箱。仕掛けは半透明で、入り口だけがすっきりと見えるようになっている。 餡子脳でも最初は警戒するが、中にある餌を見つければ警戒心を解いてすぐ様飛び込んでくるのだ。 餌に食いつくと入り口が閉まるという仕組みである。 また返しが付いているので、外からでないと開けられないようになっている。 残念だったね。そういいだしたのを抑えてお兄さんは笑みを深めた。 「ふふ、まあそう焦るなよ。ゆっくりしていって……ね!」 ね! の部分で思いっきり箱を蹴り飛ばす。 足の裏で押し出すような蹴りなので、自身に籠を蹴った衝撃は来ない。 「「「「「ゆぎゃあああああああああああ!?」」」」」 一家全員が悲鳴をあげて籠ごと転がっていく。 数メートル先で止まると、突然の衝撃に赤ゆたちが騒ぎだす。 「ゆえーん! きょわいよ! ゆっきゅりできにゃいよ!」 「ゆぐっぷ……、えれえれえれえれ……」 「おきゃーしゃんにゃんちょかしちぇね!!」(お母さん何とかしてね) 「はやきゅゆっきゅりしゃしぇちぇええええ!!」(早くゆっくりさせてええ!) これでいい。餡子を吐いたり恐怖に泣きわめく赤ゆの反応を見てお兄さんはひとり頷く。 赤ゆはこの時点で自分たちでは敵わないと知ったはずだ。 そうすると、子供たちの視線は自然と親に向かうだろう。 あとは親がこちらの望む行動をとってくれるかということだけだ。 そして予想通り、赤ゆは母に今の状況を何とかしてくれと必死に声を上げ始めた。 対して親のまりさは、自らの子供を一瞥しただけ。 すぐさまお兄さんの方へ向き直ると、精一杯の媚た笑みを浮かべて言った。 「ゆっ! まりさがわるかったんだぜ! あかちゃんをぜんぶあげるからゆるしてほしいんだぜ!」 「「「「「「「ゆ゛っ!!!???」」」」」」 「あかちゃんたちが、おやさいさんをたべたいってかってにきちゃったんだぜ!」 計画通り。 ここまで予想した通りだと少しつまらないが、それでも無駄に時間を使うよりはいい。 お兄さんは黙ってまりさを見つめる。 「まりさのあかちゃんはゆっくりできるんだぜ! たべてもおいしいし、どれいにしてもいいんだぜ!」 ちょ、おい、ここまで言うか? さすがのお兄さんも呆れるが、それよりも驚いたのは赤ゆたちだ。 「おきゃーしゃんにゃにをゆっちぇりゅにょ!?」(お母さん何を言ってるの!?) 「まりしゃはきょんにゃにきゃわいいんだじぇ!?」(まりさはこんなに可愛いんだぜ!?) 「みゃみゃー、みゃみゃああああ!!」 「うるさいよ!!!!」 生まれた時、とてもゆっくりした笑顔で喜んでくれた母。 自分たちに優しく、とてもゆっくりさせてくれると信じていた。 ここに来るまで、疲れた自分たちを口に入れて運んでくれた。 人間を倒して美味しい野菜を食べさせてくれると思っていた。 その母が、今何て? 生まれて初めて怒鳴られたショックで赤ゆたちは目を見開く。 「まりさはゆっくりにげるよ! あかちゃんたちは、まりさのかわりだよ!」 「いいのか、せっかくの赤ちゃんだろ?」 「あかちゃんなんていくらでもかわりができるよ! でもまりさはひとりなんだよ!」 お兄さんが困った表情で親まりさに質問する。もちろん演技である。 赤ゆたちも、今のは何かの間違いだろう。すぐに訂正してくれるはずだ。そう信じて母を見上げる。 しかし答えは同じ。さらに代わりはいくらでも利くとまで言われ、赤まりさたちは茫然自失で固まった。 「それなら貰おうか。どうせ要らない子なんだろ?」 「じゃあきまりだね! おにいさんはやくだしてね!」 その様子を見ていたお兄さんは、自分の太ももを思い切り抓って笑うのをこらえている。 それに気付けないまりさは、いまだ放心状態で動かない赤ん坊たちを隅に押しのけると、入口に這って移動し始めた。 「みゃ、みゃみゃああああああ!!!」 「みゃっちぇ、しゅちぇにぇいでえええええ!!」(待って、捨てないでえええ!!) 「いいきょににゃりゅかりゃああああ!!」(いい子になるからああ!!) 何匹かの赤まりさたちはすぐに母親の下へ跳ねて捨てないでと懇願するが、振り返ったまりさはすでに母の顔を捨てていた。 「まりさは、もうおまえたちのままじゃないんだよ! そんなこともわからないの? ばかなの? しぬの?」 「「「「「ゆああああああああああん!!」」」」」 どうやらこのまりさ。子供は自分の中で一番低いとこに位置するらしい。 おそらく、今までもこんな風に取引材料にしてきたのだろう。 「仕方無い、約束だ。畑に入ったことは許してやるよ」 お兄さんは開くための突起を押して箱を少しだけ開ける。 「ゆっくりにげるよ! じゃあ、じじいとあかちゃんはゆっくりしんでね!」 「おきゃーしゃんまっちぇえええええええ!!!」 まだ箱から出していないというのに、早々と悪態をつくゲスまりさ。 もう親はやめたというし、ゲスでいいだろうとお兄さんは考える。 それでも母親を信じたいのか、一匹の赤まりさが追いかけてくる。 ぶつかるようにまりさに触れると、涙を流して顔を擦りつけ始めた。 「しゅーりしゅーりしちぇね! まりしゃたちをしゅちぇにゃいでね!?」 意外にもこの赤まりさ、自分だけでなく他の姉妹の事も考えている。 だが、どうやら鳶が鷹を生んだだけのようだ。 何度も泣き喚く子供に限界が来たのか、まりさは目を剥いて自分に近づいてきた赤まりさに振り返る。 そのままの勢いで赤まりさの頭を咥えると、何度も箱の壁に叩きつけた。 「ゆぎゃ! ゆびぇ!? やびぇ!? ぎゅぁぶ!?」 「いいかげんにうるさいんだよ! だまって、しね! しね!」 「おきゃーしゃん、おにぇーちゃんをはにゃしちぇええええ!!」 「ゆっきゅりじぇきにゃいみゃみゃはしにぇええええ!!」(ゆっくりできないママは死ねええ!) 今度は叩きつけられる姉の姿に悲鳴を上げる赤まりさたち。 見せしめなのか、ぐったりした赤まりさをぺっと姉妹の目の前に吐き出すと、ゲスまりさはゲラゲラと笑い始める。 「おきゃーさんってだれ? みゃみゃってだれ?」 「「「「ゆああああああああ!!」」」」 お兄さんはまだ何もしていないのだが、すでに親子関係というものは崩壊しきっていた。 もしかすると、まりさとしては丁度いい子捨ての言い訳だったのかもしれない。 それにしてもこのまりさ、いいゲスっぷりである。 本当はまりさが子供を捨てた時点で口八丁を使い親子関係を壊す予定だったのだが、その手間すら省いてくれた。 とはいえこれ以上入れておくと、赤ゆたちが全部潰されてしまうかもしれない。 ひとまずお兄さんはゲスまりさを取り出すために頭を掴む。 「クズなゆっくりはずっとそこでゆっくりすればいいんだぜ!!」 そうしてゲラゲラと笑い続けるまりさを、お兄さんは土の上に置いてある透明な箱にぶち込んだ。 「ゆっ!?」 もう逃げられる。すっかりその気になっていたまりさは、自分がされた事が理解できなかった。 「まりさ、お前この箱の中にあった野菜はどうした?」 お兄さんが指をさしたのは、先ほどまでまりさが閉じ込められていた箱。 たしか、箱の中にはにんじんや大根を入れていたはずである。 「ゆ、おやさいさんおいしかったんだぜ! おにいさんもっとくれるならたべてあげるんだぜ!!」 「ああ、食べちゃったんだ? まりさが?」 お兄さんは確認するようにまりさを見下ろす。 「いちいちうるさいんだぜ! はやくまりささまをここからだすんだぜ!!」 「ああ、ダメ。無理」 「ゆがっ!?」 あっさりと却下され、まりさは言葉を失った。 何故だ。自分の子をあげたのだから、許してくれるんじゃないのか!? 自分の命令を断られたことに、すぐさま激昂して箱の中で暴れ始める。 「ゆがあああ!! だせっ!! はやくここからだせええええええ!!」 「あーあ、こんなにぐしゃぐしゃになっちゃって……。治してあげようか?」 対するお兄さんはまりさを無視して、先ほどまで散々痛めつけられた赤まりさの方を診ている。 「おにーしゃん、なおしぇるひちょ?」 「はやくおねーちゃんをたしゅけちぇね!」 「ゆっきゅりしにゃいでなおしちぇね!!」 「いいけど、お兄さんの言うこと聞いてくれるならだよ?」 たしかに口は悪い赤ゆっくりだが、根はまともなのかもしれない。 お兄さんは赤ゆたちが姉を虐待していたゲスまりさに立ち向かった時のことを思い出しながら、そう切り出した。 最初はこちらの狙いがわからずに不安な表情をしていた赤まりさたちだったが、そのうちの一匹が前に出てきて声を上げた。 「おにーしゃん、じょうけんっちぇにゃに?」 「なに、簡単さ。うちのゆうかからお野菜さんの勉強をしてもらう」 「どういうきょちょ?」 「お野菜さんがどうして生えるのか。それを知ってもらうんだよ」 「ゆぅ……」 お野菜さんは勝手に生えるもの。そう信じていた赤まりさたちには、お兄さんの言葉の意味を理解しきれなかった。 もしかしたら、ゆっくりできないかもしれない。そう考える赤まりさもいた。 しかし、苦しげに唸る姉の姿を見て決心したらしく、赤まりさたちは顔を見合わせると大きくうなずいた。 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! だきゃらなおしちぇね!!」 「よし、わかった。じゃあ全員うちにおいで」 一家を捕まえるだけあって大きな箱だが、それを畑の隅に置いてあった手押し車に乗せて固定する。 そして、箱が落ちないように確認すると、お兄さんはずっと箱の中で騒ぎ立てていたまりさの方へ近づいていく。 「だせ! はやくだせじじいいいいいい!!」 「まりさ。お前少し黙れ」 近づくや否や、じじいと叫ぶまりさの箱をお兄さんは全力で蹴り飛ばす。 「ゆがあああああ!?」 箱の中に入れているので直接体にダメージが行くことはないが、それでも衝撃は直に届いたらしい。 一家用のものと違い、こちらは直径50cm程の箱だ。蹴れば先ほど以上に揺れるのは当然である。 「なんで……、なんであがちゃんあげたのにぃぃぃ……」 代価は支払った。だから自分は許されたはずだ。そうまりさの眼は語っていた。 「ああ、畑に入ったのは許してあげる。でも、まりさは野菜食べたんでしょ? あの箱の中の」 「ゆ……?」 ガスッ ガッ ゴッ ドカッ ガッ ゲシッ ミキッ 「ゆぎっ!? ゆあっ!? ひぎっ!? ゆぇっ!? ゆぎゃっ!? いいゅ!?」 「ねえ、あの、箱の、中の、野菜、食べちゃったよ、ね?」 一区切りごとに、箱を砕く勢いで何度も踏みつける。 無論、加工場特製の箱だ。そう簡単には壊れない。 相変わらずいい仕事をしてくれる職員さんたちである。 だがそんなことを知らないまりさは、いつ箱を破って潰されるかもしれないという恐怖に襲われている。 「やべで! やべでぐだざい!! あやばりばずがらづぶざないでぐだざいいい!!」 「お兄さん言ったよね? 畑に入ったことは許してあげるってさ」 箱を蹴りつけることをやめると、まりさが落ち着いたのを見計らってお兄さんはゆっくりと話し出した。 「でもね、まりさ野菜食べたよね。あの箱の中の野菜。僕が育てた野菜を!!」 「………? ………!?」 「野菜を食べた事は許せないなあ」 狭い箱の中でお兄さんの言葉を反芻する。 ようやくその意味を理解すると、まりさは悲鳴を上げて箱を揺らしだした。 「あればあがぢゃんがだべだのおおお!! ばりざばなんにもじらないよおおおおおお!!」 「でもまりさ食べたって言ったよね?」 「いっでない! ぞんなごどいっでないいいいいい!!」 どうやらシラを切りとおすつもりのようだが、そうはさせない。 「正直に話したら、にんじんさんと大根さんをあげるよ。あ、それとリンゴさんもあげよう」 「ゆっ!? ほんど!?」 「ああ、嘘じゃないよ」 お兄さんはにっこりと笑顔でこたえる。 それに安心したのか、まりさはぺらぺらと口を開いて喋り出す。 「にんじんざんもだいごんざんもおいじがっだよ! あがぢゃんのぜいでずぐながっだよ!! もっどだべだいよ!!」 「やっぱ食ったんじゃねえか、このクソ饅頭」 「ゆびゃああああああああああああああああああああああああああああ!?」 サッカボールと同じ扱いで思い切り蹴り飛ばす。 悲鳴の尾を引いて吹っ飛んでいくまりさ。 なに、箱の中だし死にはしないだろう。 お兄さんは赤まりさを治療するために、急ぎ足で車を押して我が家へと向かった。 その心中これから始まるゲスまりさの生活を想像して、何度もはしゃぎたくなったのは秘密である。 さあ、ゲスまりさ。お前の地獄はここからだ。 ゆっくりいじめ系2021 育児放棄?そんなもんじゃないんだぜ!! 中編につづく 初書きです 楽しい、けれど難しい。 久方ぶりにSSに挑戦しましたが、文章を短くわかりやすく書くということは、やはり難しい。 他の方とネタは被ってしまうし、書きながら凹んでます。 とはいえ自己満足ですが、書き始めたものは最後まで完成させたいと思っています。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3314.html
序盤は虐待少ないです ゲスまりさ注意 そんなまりさを制裁もの 子ゆっくりは……少し虐待 お兄さんの活躍が少し足りない ストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり それでも構わないという方はどうぞ下へ 育児放棄? そんなもんじゃないんだぜ!! 雪も解けた春先。 ゆっくりゆうかとリリーホワイトが遊ぶ庭先で、一人のお兄さんがくつろいでいた。 「ああ、春だ…。春はいい。ゆっくりがまた顔を出す季節だ」 ゆっくりゆうかが種を植えた場所を教え、リリーが花を咲かせる。 そんなほのぼのした光景を眺めながら、お兄さんはお茶菓子にしていたゆっくりれいむの頭を齧る。 ゆっ、と小さな悲鳴をあげて絶命するれいむ。それを見て悲鳴を上げる他のお茶受けれいむたち。 「それにしても、実にゆっくりした光景だ……。いいね、春」 ゆっくりできなぃいいいい! と横に置いてあったお茶受けどもが何か叫ぶが、煩いので全てに爪楊枝を突き刺して黙らせる。 「さて、それじゃそろそろ趣味の時間に移りますか……」 右手には虐待お兄さんの必須アイテム透明な箱。 お兄さんは余った餡子を全てゆうかに食べていいと言い残し、自分の畑へと足を向けた。 それは、確固たる目的のため。彼自身が冬の間待ち望んだ考えるだけで楽しい計画のためである。 そして畑。 「ゆっくりだせええええ!! 早くまりさをここから出すんだぜええええええ!!!」 「ゆえーん、おきゃーしゃんおなきゃしゅいたー」 「にゃんで、おやしゃいしゃんちゃべりゃりぇにゃいにょおおおお?」 「ゆえーんゆえーん!」 そこは青年が趣味の為に所有している畑。 春キャベツなど雪解け早々に収穫のできる野菜を中心に育てている。 全ては山から畑荒らしを目的にするゆっくりを誘い出すためだ。 何のためか? 決まっている。ヒャア、虐待だ!! そして案の定、畑にしかけた罠の籠には十匹ほどのゆっくりまりさ一家が捕まっていた。 「よう、まりさ。随分大勢で来たじゃないか?」 待ちに待ったこの瞬間、お兄さんは口を三日月に開いて話しかけた。 はてさて、今回の獲物はゲスか善良なゆっくりか。 「ゆっ! じじいがまりさたちをここにとじこめたんだぜ!? はやくだすんだぜええ!!」 望み通り獲物はゲス。お兄さんは心の中でガッツポーズをとった。 今回はゲスだからこそできる虐待である。 とはいえ、そもそも畑を荒らす時点でゲス決定なのだが……。 「にんげんしゃんはゆっきゅりできにゃいよ!」 「ゆっきゅりにげりゅよ!」 「ゆっきゅりできにゃいにんげんしゃんはちね!」 「これも、にんげんしゃんのわにゃにゃんだにぇ?」(これも人間さんの罠なんだね?) 「ちね! ちね!」 そして、口の悪い赤ゆども。 家族総出で籠に体当たりしてお兄さんを罵るが、生憎箱は加工場の特別性なのでビクともしない。 この箱。仕掛けは半透明で、入り口だけがすっきりと見えるようになっている。 餡子脳でも最初は警戒するが、中にある餌を見つければ警戒心を解いてすぐ様飛び込んでくるのだ。 餌に食いつくと入り口が閉まるという仕組みである。 また返しが付いているので、外からでないと開けられないようになっている。 残念だったね。そういいだしたのを抑えてお兄さんは笑みを深めた。 「ふふ、まあそう焦るなよ。ゆっくりしていって……ね!」 ね! の部分で思いっきり箱を蹴り飛ばす。 足の裏で押し出すような蹴りなので、自身に籠を蹴った衝撃は来ない。 「「「「「ゆぎゃあああああああああああ!?」」」」」 一家全員が悲鳴をあげて籠ごと転がっていく。 数メートル先で止まると、突然の衝撃に赤ゆたちが騒ぎだす。 「ゆえーん! きょわいよ! ゆっきゅりできにゃいよ!」 「ゆぐっぷ……、えれえれえれえれ……」 「おきゃーしゃんにゃんちょかしちぇね!!」(お母さん何とかしてね) 「はやきゅゆっきゅりしゃしぇちぇええええ!!」(早くゆっくりさせてええ!) これでいい。餡子を吐いたり恐怖に泣きわめく赤ゆの反応を見てお兄さんはひとり頷く。 赤ゆはこの時点で自分たちでは敵わないと知ったはずだ。 そうすると、子供たちの視線は自然と親に向かうだろう。 あとは親がこちらの望む行動をとってくれるかということだけだ。 そして予想通り、赤ゆは母に今の状況を何とかしてくれと必死に声を上げ始めた。 対して親のまりさは、自らの子供を一瞥しただけ。 すぐさまお兄さんの方へ向き直ると、精一杯の媚た笑みを浮かべて言った。 「ゆっ! まりさがわるかったんだぜ! あかちゃんをぜんぶあげるからゆるしてほしいんだぜ!」 「「「「「「「ゆ゛っ!!!???」」」」」」 「あかちゃんたちが、おやさいさんをたべたいってかってにきちゃったんだぜ!」 計画通り。 ここまで予想した通りだと少しつまらないが、それでも無駄に時間を使うよりはいい。 お兄さんは黙ってまりさを見つめる。 「まりさのあかちゃんはゆっくりできるんだぜ! たべてもおいしいし、どれいにしてもいいんだぜ!」 ちょ、おい、ここまで言うか? さすがのお兄さんも呆れるが、それよりも驚いたのは赤ゆたちだ。 「おきゃーしゃんにゃにをゆっちぇりゅにょ!?」(お母さん何を言ってるの!?) 「まりしゃはきょんにゃにきゃわいいんだじぇ!?」(まりさはこんなに可愛いんだぜ!?) 「みゃみゃー、みゃみゃああああ!!」 「うるさいよ!!!!」 生まれた時、とてもゆっくりした笑顔で喜んでくれた母。 自分たちに優しく、とてもゆっくりさせてくれると信じていた。 ここに来るまで、疲れた自分たちを口に入れて運んでくれた。 人間を倒して美味しい野菜を食べさせてくれると思っていた。 その母が、今何て? 生まれて初めて怒鳴られたショックで赤ゆたちは目を見開く。 「まりさはゆっくりにげるよ! あかちゃんたちは、まりさのかわりだよ!」 「いいのか、せっかくの赤ちゃんだろ?」 「あかちゃんなんていくらでもかわりができるよ! でもまりさはひとりなんだよ!」 お兄さんが困った表情で親まりさに質問する。もちろん演技である。 赤ゆたちも、今のは何かの間違いだろう。すぐに訂正してくれるはずだ。そう信じて母を見上げる。 しかし答えは同じ。さらに代わりはいくらでも利くとまで言われ、赤まりさたちは茫然自失で固まった。 「それなら貰おうか。どうせ要らない子なんだろ?」 「じゃあきまりだね! おにいさんはやくだしてね!」 その様子を見ていたお兄さんは、自分の太ももを思い切り抓って笑うのをこらえている。 それに気付けないまりさは、いまだ放心状態で動かない赤ん坊たちを隅に押しのけると、入口に這って移動し始めた。 「みゃ、みゃみゃああああああ!!!」 「みゃっちぇ、しゅちぇにぇいでえええええ!!」(待って、捨てないでえええ!!) 「いいきょににゃりゅかりゃああああ!!」(いい子になるからああ!!) 何匹かの赤まりさたちはすぐに母親の下へ跳ねて捨てないでと懇願するが、振り返ったまりさはすでに母の顔を捨てていた。 「まりさは、もうおまえたちのままじゃないんだよ! そんなこともわからないの? ばかなの? しぬの?」 「「「「「ゆああああああああああん!!」」」」」 どうやらこのまりさ。子供は自分の中で一番低いとこに位置するらしい。 おそらく、今までもこんな風に取引材料にしてきたのだろう。 「仕方無い、約束だ。畑に入ったことは許してやるよ」 お兄さんは開くための突起を押して箱を少しだけ開ける。 「ゆっくりにげるよ! じゃあ、じじいとあかちゃんはゆっくりしんでね!」 「おきゃーしゃんまっちぇえええええええ!!!」 まだ箱から出していないというのに、早々と悪態をつくゲスまりさ。 もう親はやめたというし、ゲスでいいだろうとお兄さんは考える。 それでも母親を信じたいのか、一匹の赤まりさが追いかけてくる。 ぶつかるようにまりさに触れると、涙を流して顔を擦りつけ始めた。 「しゅーりしゅーりしちぇね! まりしゃたちをしゅちぇにゃいでね!?」 意外にもこの赤まりさ、自分だけでなく他の姉妹の事も考えている。 だが、どうやら鳶が鷹を生んだだけのようだ。 何度も泣き喚く子供に限界が来たのか、まりさは目を剥いて自分に近づいてきた赤まりさに振り返る。 そのままの勢いで赤まりさの頭を咥えると、何度も箱の壁に叩きつけた。 「ゆぎゃ! ゆびぇ!? やびぇ!? ぎゅぁぶ!?」 「いいかげんにうるさいんだよ! だまって、しね! しね!」 「おきゃーしゃん、おにぇーちゃんをはにゃしちぇええええ!!」 「ゆっきゅりじぇきにゃいみゃみゃはしにぇええええ!!」(ゆっくりできないママは死ねええ!) 今度は叩きつけられる姉の姿に悲鳴を上げる赤まりさたち。 見せしめなのか、ぐったりした赤まりさをぺっと姉妹の目の前に吐き出すと、ゲスまりさはゲラゲラと笑い始める。 「おきゃーさんってだれ? みゃみゃってだれ?」 「「「「ゆああああああああ!!」」」」 お兄さんはまだ何もしていないのだが、すでに親子関係というものは崩壊しきっていた。 もしかすると、まりさとしては丁度いい子捨ての言い訳だったのかもしれない。 それにしてもこのまりさ、いいゲスっぷりである。 本当はまりさが子供を捨てた時点で口八丁を使い親子関係を壊す予定だったのだが、その手間すら省いてくれた。 とはいえこれ以上入れておくと、赤ゆたちが全部潰されてしまうかもしれない。 ひとまずお兄さんはゲスまりさを取り出すために頭を掴む。 「クズなゆっくりはずっとそこでゆっくりすればいいんだぜ!!」 そうしてゲラゲラと笑い続けるまりさを、お兄さんは土の上に置いてある透明な箱にぶち込んだ。 「ゆっ!?」 もう逃げられる。すっかりその気になっていたまりさは、自分がされた事が理解できなかった。 「まりさ、お前この箱の中にあった野菜はどうした?」 お兄さんが指をさしたのは、先ほどまでまりさが閉じ込められていた箱。 たしか、箱の中にはにんじんや大根を入れていたはずである。 「ゆ、おやさいさんおいしかったんだぜ! おにいさんもっとくれるならたべてあげるんだぜ!!」 「ああ、食べちゃったんだ? まりさが?」 お兄さんは確認するようにまりさを見下ろす。 「いちいちうるさいんだぜ! はやくまりささまをここからだすんだぜ!!」 「ああ、ダメ。無理」 「ゆがっ!?」 あっさりと却下され、まりさは言葉を失った。 何故だ。自分の子をあげたのだから、許してくれるんじゃないのか!? 自分の命令を断られたことに、すぐさま激昂して箱の中で暴れ始める。 「ゆがあああ!! だせっ!! はやくここからだせええええええ!!」 「あーあ、こんなにぐしゃぐしゃになっちゃって……。治してあげようか?」 対するお兄さんはまりさを無視して、先ほどまで散々痛めつけられた赤まりさの方を診ている。 「おにーしゃん、なおしぇるひちょ?」 「はやくおねーちゃんをたしゅけちぇね!」 「ゆっきゅりしにゃいでなおしちぇね!!」 「いいけど、お兄さんの言うこと聞いてくれるならだよ?」 たしかに口は悪い赤ゆっくりだが、根はまともなのかもしれない。 お兄さんは赤ゆたちが姉を虐待していたゲスまりさに立ち向かった時のことを思い出しながら、そう切り出した。 最初はこちらの狙いがわからずに不安な表情をしていた赤まりさたちだったが、そのうちの一匹が前に出てきて声を上げた。 「おにーしゃん、じょうけんっちぇにゃに?」 「なに、簡単さ。うちのゆうかからお野菜さんの勉強をしてもらう」 「どういうきょちょ?」 「お野菜さんがどうして生えるのか。それを知ってもらうんだよ」 「ゆぅ……」 お野菜さんは勝手に生えるもの。そう信じていた赤まりさたちには、お兄さんの言葉の意味を理解しきれなかった。 もしかしたら、ゆっくりできないかもしれない。そう考える赤まりさもいた。 しかし、苦しげに唸る姉の姿を見て決心したらしく、赤まりさたちは顔を見合わせると大きくうなずいた。 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! だきゃらなおしちぇね!!」 「よし、わかった。じゃあ全員うちにおいで」 一家を捕まえるだけあって大きな箱だが、それを畑の隅に置いてあった手押し車に乗せて固定する。 そして、箱が落ちないように確認すると、お兄さんはずっと箱の中で騒ぎ立てていたまりさの方へ近づいていく。 「だせ! はやくだせじじいいいいいい!!」 「まりさ。お前少し黙れ」 近づくや否や、じじいと叫ぶまりさの箱をお兄さんは全力で蹴り飛ばす。 「ゆがあああああ!?」 箱の中に入れているので直接体にダメージが行くことはないが、それでも衝撃は直に届いたらしい。 一家用のものと違い、こちらは直径50cm程の箱だ。蹴れば先ほど以上に揺れるのは当然である。 「なんで……、なんであがちゃんあげたのにぃぃぃ……」 代価は支払った。だから自分は許されたはずだ。そうまりさの眼は語っていた。 「ああ、畑に入ったのは許してあげる。でも、まりさは野菜食べたんでしょ? あの箱の中の」 「ゆ……?」 ガスッ ガッ ゴッ ドカッ ガッ ゲシッ ミキッ 「ゆぎっ!? ゆあっ!? ひぎっ!? ゆぇっ!? ゆぎゃっ!? いいゅ!?」 「ねえ、あの、箱の、中の、野菜、食べちゃったよ、ね?」 一区切りごとに、箱を砕く勢いで何度も踏みつける。 無論、加工場特製の箱だ。そう簡単には壊れない。 相変わらずいい仕事をしてくれる職員さんたちである。 だがそんなことを知らないまりさは、いつ箱を破って潰されるかもしれないという恐怖に襲われている。 「やべで! やべでぐだざい!! あやばりばずがらづぶざないでぐだざいいい!!」 「お兄さん言ったよね? 畑に入ったことは許してあげるってさ」 箱を蹴りつけることをやめると、まりさが落ち着いたのを見計らってお兄さんはゆっくりと話し出した。 「でもね、まりさ野菜食べたよね。あの箱の中の野菜。僕が育てた野菜を!!」 「………? ………!?」 「野菜を食べた事は許せないなあ」 狭い箱の中でお兄さんの言葉を反芻する。 ようやくその意味を理解すると、まりさは悲鳴を上げて箱を揺らしだした。 「あればあがぢゃんがだべだのおおお!! ばりざばなんにもじらないよおおおおおお!!」 「でもまりさ食べたって言ったよね?」 「いっでない! ぞんなごどいっでないいいいいい!!」 どうやらシラを切りとおすつもりのようだが、そうはさせない。 「正直に話したら、にんじんさんと大根さんをあげるよ。あ、それとリンゴさんもあげよう」 「ゆっ!? ほんど!?」 「ああ、嘘じゃないよ」 お兄さんはにっこりと笑顔でこたえる。 それに安心したのか、まりさはぺらぺらと口を開いて喋り出す。 「にんじんざんもだいごんざんもおいじがっだよ! あがぢゃんのぜいでずぐながっだよ!! もっどだべだいよ!!」 「やっぱ食ったんじゃねえか、このクソ饅頭」 「ゆびゃああああああああああああああああああああああああああああ!?」 サッカボールと同じ扱いで思い切り蹴り飛ばす。 悲鳴の尾を引いて吹っ飛んでいくまりさ。 なに、箱の中だし死にはしないだろう。 お兄さんは赤まりさを治療するために、急ぎ足で車を押して我が家へと向かった。 その心中これから始まるゲスまりさの生活を想像して、何度もはしゃぎたくなったのは秘密である。 さあ、ゲスまりさ。お前の地獄はここからだ。 ゆっくりいじめ系2021 育児放棄?そんなもんじゃないんだぜ!! 中編につづく 初書きです 楽しい、けれど難しい。 久方ぶりにSSに挑戦しましたが、文章を短くわかりやすく書くということは、やはり難しい。 他の方とネタは被ってしまうし、書きながら凹んでます。 とはいえ自己満足ですが、書き始めたものは最後まで完成させたいと思っています。
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序盤は虐待少ないです ゲスまりさ注意 そんなまりさを制裁もの 子ゆっくりは……少し虐待 お兄さんの活躍が少し足りない ストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり それでも構わないという方はどうぞ下へ 育児放棄? そんなもんじゃないんだぜ!! 雪も解けた春先。 ゆっくりゆうかとリリーホワイトが遊ぶ庭先で、一人のお兄さんがくつろいでいた。 「ああ、春だ…。春はいい。ゆっくりがまた顔を出す季節だ」 ゆっくりゆうかが種を植えた場所を教え、リリーが花を咲かせる。 そんなほのぼのした光景を眺めながら、お兄さんはお茶菓子にしていたゆっくりれいむの頭を齧る。 ゆっ、と小さな悲鳴をあげて絶命するれいむ。それを見て悲鳴を上げる他のお茶受けれいむたち。 「それにしても、実にゆっくりした光景だ……。いいね、春」 ゆっくりできなぃいいいい! と横に置いてあったお茶受けどもが何か叫ぶが、煩いので全てに爪楊枝を突き刺して黙らせる。 「さて、それじゃそろそろ趣味の時間に移りますか……」 右手には虐待お兄さんの必須アイテム透明な箱。 お兄さんは余った餡子を全てゆうかに食べていいと言い残し、自分の畑へと足を向けた。 それは、確固たる目的のため。彼自身が冬の間待ち望んだ考えるだけで楽しい計画のためである。 そして畑。 「ゆっくりだせええええ!! 早くまりさをここから出すんだぜええええええ!!!」 「ゆえーん、おきゃーしゃんおなきゃしゅいたー」 「にゃんで、おやしゃいしゃんちゃべりゃりぇにゃいにょおおおお?」 「ゆえーんゆえーん!」 そこは青年が趣味の為に所有している畑。 春キャベツなど雪解け早々に収穫のできる野菜を中心に育てている。 全ては山から畑荒らしを目的にするゆっくりを誘い出すためだ。 何のためか? 決まっている。ヒャア、虐待だ!! そして案の定、畑にしかけた罠の籠には十匹ほどのゆっくりまりさ一家が捕まっていた。 「よう、まりさ。随分大勢で来たじゃないか?」 待ちに待ったこの瞬間、お兄さんは口を三日月に開いて話しかけた。 はてさて、今回の獲物はゲスか善良なゆっくりか。 「ゆっ! じじいがまりさたちをここにとじこめたんだぜ!? はやくだすんだぜええ!!」 望み通り獲物はゲス。お兄さんは心の中でガッツポーズをとった。 今回はゲスだからこそできる虐待である。 とはいえ、そもそも畑を荒らす時点でゲス決定なのだが……。 「にんげんしゃんはゆっきゅりできにゃいよ!」 「ゆっきゅりにげりゅよ!」 「ゆっきゅりできにゃいにんげんしゃんはちね!」 「これも、にんげんしゃんのわにゃにゃんだにぇ?」(これも人間さんの罠なんだね?) 「ちね! ちね!」 そして、口の悪い赤ゆども。 家族総出で籠に体当たりしてお兄さんを罵るが、生憎箱は加工場の特別性なのでビクともしない。 この箱。仕掛けは半透明で、入り口だけがすっきりと見えるようになっている。 餡子脳でも最初は警戒するが、中にある餌を見つければ警戒心を解いてすぐ様飛び込んでくるのだ。 餌に食いつくと入り口が閉まるという仕組みである。 また返しが付いているので、外からでないと開けられないようになっている。 残念だったね。そういいだしたのを抑えてお兄さんは笑みを深めた。 「ふふ、まあそう焦るなよ。ゆっくりしていって……ね!」 ね! の部分で思いっきり箱を蹴り飛ばす。 足の裏で押し出すような蹴りなので、自身に籠を蹴った衝撃は来ない。 「「「「「ゆぎゃあああああああああああ!?」」」」」 一家全員が悲鳴をあげて籠ごと転がっていく。 数メートル先で止まると、突然の衝撃に赤ゆたちが騒ぎだす。 「ゆえーん! きょわいよ! ゆっきゅりできにゃいよ!」 「ゆぐっぷ……、えれえれえれえれ……」 「おきゃーしゃんにゃんちょかしちぇね!!」(お母さん何とかしてね) 「はやきゅゆっきゅりしゃしぇちぇええええ!!」(早くゆっくりさせてええ!) これでいい。餡子を吐いたり恐怖に泣きわめく赤ゆの反応を見てお兄さんはひとり頷く。 赤ゆはこの時点で自分たちでは敵わないと知ったはずだ。 そうすると、子供たちの視線は自然と親に向かうだろう。 あとは親がこちらの望む行動をとってくれるかということだけだ。 そして予想通り、赤ゆは母に今の状況を何とかしてくれと必死に声を上げ始めた。 対して親のまりさは、自らの子供を一瞥しただけ。 すぐさまお兄さんの方へ向き直ると、精一杯の媚た笑みを浮かべて言った。 「ゆっ! まりさがわるかったんだぜ! あかちゃんをぜんぶあげるからゆるしてほしいんだぜ!」 「「「「「「「ゆ゛っ!!!???」」」」」」 「あかちゃんたちが、おやさいさんをたべたいってかってにきちゃったんだぜ!」 計画通り。 ここまで予想した通りだと少しつまらないが、それでも無駄に時間を使うよりはいい。 お兄さんは黙ってまりさを見つめる。 「まりさのあかちゃんはゆっくりできるんだぜ! たべてもおいしいし、どれいにしてもいいんだぜ!」 ちょ、おい、ここまで言うか? さすがのお兄さんも呆れるが、それよりも驚いたのは赤ゆたちだ。 「おきゃーしゃんにゃにをゆっちぇりゅにょ!?」(お母さん何を言ってるの!?) 「まりしゃはきょんにゃにきゃわいいんだじぇ!?」(まりさはこんなに可愛いんだぜ!?) 「みゃみゃー、みゃみゃああああ!!」 「うるさいよ!!!!」 生まれた時、とてもゆっくりした笑顔で喜んでくれた母。 自分たちに優しく、とてもゆっくりさせてくれると信じていた。 ここに来るまで、疲れた自分たちを口に入れて運んでくれた。 人間を倒して美味しい野菜を食べさせてくれると思っていた。 その母が、今何て? 生まれて初めて怒鳴られたショックで赤ゆたちは目を見開く。 「まりさはゆっくりにげるよ! あかちゃんたちは、まりさのかわりだよ!」 「いいのか、せっかくの赤ちゃんだろ?」 「あかちゃんなんていくらでもかわりができるよ! でもまりさはひとりなんだよ!」 お兄さんが困った表情で親まりさに質問する。もちろん演技である。 赤ゆたちも、今のは何かの間違いだろう。すぐに訂正してくれるはずだ。そう信じて母を見上げる。 しかし答えは同じ。さらに代わりはいくらでも利くとまで言われ、赤まりさたちは茫然自失で固まった。 「それなら貰おうか。どうせ要らない子なんだろ?」 「じゃあきまりだね! おにいさんはやくだしてね!」 その様子を見ていたお兄さんは、自分の太ももを思い切り抓って笑うのをこらえている。 それに気付けないまりさは、いまだ放心状態で動かない赤ん坊たちを隅に押しのけると、入口に這って移動し始めた。 「みゃ、みゃみゃああああああ!!!」 「みゃっちぇ、しゅちぇにぇいでえええええ!!」(待って、捨てないでえええ!!) 「いいきょににゃりゅかりゃああああ!!」(いい子になるからああ!!) 何匹かの赤まりさたちはすぐに母親の下へ跳ねて捨てないでと懇願するが、振り返ったまりさはすでに母の顔を捨てていた。 「まりさは、もうおまえたちのままじゃないんだよ! そんなこともわからないの? ばかなの? しぬの?」 「「「「「ゆああああああああああん!!」」」」」 どうやらこのまりさ。子供は自分の中で一番低いとこに位置するらしい。 おそらく、今までもこんな風に取引材料にしてきたのだろう。 「仕方無い、約束だ。畑に入ったことは許してやるよ」 お兄さんは開くための突起を押して箱を少しだけ開ける。 「ゆっくりにげるよ! じゃあ、じじいとあかちゃんはゆっくりしんでね!」 「おきゃーしゃんまっちぇえええええええ!!!」 まだ箱から出していないというのに、早々と悪態をつくゲスまりさ。 もう親はやめたというし、ゲスでいいだろうとお兄さんは考える。 それでも母親を信じたいのか、一匹の赤まりさが追いかけてくる。 ぶつかるようにまりさに触れると、涙を流して顔を擦りつけ始めた。 「しゅーりしゅーりしちぇね! まりしゃたちをしゅちぇにゃいでね!?」 意外にもこの赤まりさ、自分だけでなく他の姉妹の事も考えている。 だが、どうやら鳶が鷹を生んだだけのようだ。 何度も泣き喚く子供に限界が来たのか、まりさは目を剥いて自分に近づいてきた赤まりさに振り返る。 そのままの勢いで赤まりさの頭を咥えると、何度も箱の壁に叩きつけた。 「ゆぎゃ! ゆびぇ!? やびぇ!? ぎゅぁぶ!?」 「いいかげんにうるさいんだよ! だまって、しね! しね!」 「おきゃーしゃん、おにぇーちゃんをはにゃしちぇええええ!!」 「ゆっきゅりじぇきにゃいみゃみゃはしにぇええええ!!」(ゆっくりできないママは死ねええ!) 今度は叩きつけられる姉の姿に悲鳴を上げる赤まりさたち。 見せしめなのか、ぐったりした赤まりさをぺっと姉妹の目の前に吐き出すと、ゲスまりさはゲラゲラと笑い始める。 「おきゃーさんってだれ? みゃみゃってだれ?」 「「「「ゆああああああああ!!」」」」 お兄さんはまだ何もしていないのだが、すでに親子関係というものは崩壊しきっていた。 もしかすると、まりさとしては丁度いい子捨ての言い訳だったのかもしれない。 それにしてもこのまりさ、いいゲスっぷりである。 本当はまりさが子供を捨てた時点で口八丁を使い親子関係を壊す予定だったのだが、その手間すら省いてくれた。 とはいえこれ以上入れておくと、赤ゆたちが全部潰されてしまうかもしれない。 ひとまずお兄さんはゲスまりさを取り出すために頭を掴む。 「クズなゆっくりはずっとそこでゆっくりすればいいんだぜ!!」 そうしてゲラゲラと笑い続けるまりさを、お兄さんは土の上に置いてある透明な箱にぶち込んだ。 「ゆっ!?」 もう逃げられる。すっかりその気になっていたまりさは、自分がされた事が理解できなかった。 「まりさ、お前この箱の中にあった野菜はどうした?」 お兄さんが指をさしたのは、先ほどまでまりさが閉じ込められていた箱。 たしか、箱の中にはにんじんや大根を入れていたはずである。 「ゆ、おやさいさんおいしかったんだぜ! おにいさんもっとくれるならたべてあげるんだぜ!!」 「ああ、食べちゃったんだ? まりさが?」 お兄さんは確認するようにまりさを見下ろす。 「いちいちうるさいんだぜ! はやくまりささまをここからだすんだぜ!!」 「ああ、ダメ。無理」 「ゆがっ!?」 あっさりと却下され、まりさは言葉を失った。 何故だ。自分の子をあげたのだから、許してくれるんじゃないのか!? 自分の命令を断られたことに、すぐさま激昂して箱の中で暴れ始める。 「ゆがあああ!! だせっ!! はやくここからだせええええええ!!」 「あーあ、こんなにぐしゃぐしゃになっちゃって……。治してあげようか?」 対するお兄さんはまりさを無視して、先ほどまで散々痛めつけられた赤まりさの方を診ている。 「おにーしゃん、なおしぇるひちょ?」 「はやくおねーちゃんをたしゅけちぇね!」 「ゆっきゅりしにゃいでなおしちぇね!!」 「いいけど、お兄さんの言うこと聞いてくれるならだよ?」 たしかに口は悪い赤ゆっくりだが、根はまともなのかもしれない。 お兄さんは赤ゆたちが姉を虐待していたゲスまりさに立ち向かった時のことを思い出しながら、そう切り出した。 最初はこちらの狙いがわからずに不安な表情をしていた赤まりさたちだったが、そのうちの一匹が前に出てきて声を上げた。 「おにーしゃん、じょうけんっちぇにゃに?」 「なに、簡単さ。うちのゆうかからお野菜さんの勉強をしてもらう」 「どういうきょちょ?」 「お野菜さんがどうして生えるのか。それを知ってもらうんだよ」 「ゆぅ……」 お野菜さんは勝手に生えるもの。そう信じていた赤まりさたちには、お兄さんの言葉の意味を理解しきれなかった。 もしかしたら、ゆっくりできないかもしれない。そう考える赤まりさもいた。 しかし、苦しげに唸る姉の姿を見て決心したらしく、赤まりさたちは顔を見合わせると大きくうなずいた。 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! だきゃらなおしちぇね!!」 「よし、わかった。じゃあ全員うちにおいで」 一家を捕まえるだけあって大きな箱だが、それを畑の隅に置いてあった手押し車に乗せて固定する。 そして、箱が落ちないように確認すると、お兄さんはずっと箱の中で騒ぎ立てていたまりさの方へ近づいていく。 「だせ! はやくだせじじいいいいいい!!」 「まりさ。お前少し黙れ」 近づくや否や、じじいと叫ぶまりさの箱をお兄さんは全力で蹴り飛ばす。 「ゆがあああああ!?」 箱の中に入れているので直接体にダメージが行くことはないが、それでも衝撃は直に届いたらしい。 一家用のものと違い、こちらは直径50cm程の箱だ。蹴れば先ほど以上に揺れるのは当然である。 「なんで……、なんであがちゃんあげたのにぃぃぃ……」 代価は支払った。だから自分は許されたはずだ。そうまりさの眼は語っていた。 「ああ、畑に入ったのは許してあげる。でも、まりさは野菜食べたんでしょ? あの箱の中の」 「ゆ……?」 ガスッ ガッ ゴッ ドカッ ガッ ゲシッ ミキッ 「ゆぎっ!? ゆあっ!? ひぎっ!? ゆぇっ!? ゆぎゃっ!? いいゅ!?」 「ねえ、あの、箱の、中の、野菜、食べちゃったよ、ね?」 一区切りごとに、箱を砕く勢いで何度も踏みつける。 無論、加工場特製の箱だ。そう簡単には壊れない。 相変わらずいい仕事をしてくれる職員さんたちである。 だがそんなことを知らないまりさは、いつ箱を破って潰されるかもしれないという恐怖に襲われている。 「やべで! やべでぐだざい!! あやばりばずがらづぶざないでぐだざいいい!!」 「お兄さん言ったよね? 畑に入ったことは許してあげるってさ」 箱を蹴りつけることをやめると、まりさが落ち着いたのを見計らってお兄さんはゆっくりと話し出した。 「でもね、まりさ野菜食べたよね。あの箱の中の野菜。僕が育てた野菜を!!」 「………? ………!?」 「野菜を食べた事は許せないなあ」 狭い箱の中でお兄さんの言葉を反芻する。 ようやくその意味を理解すると、まりさは悲鳴を上げて箱を揺らしだした。 「あればあがぢゃんがだべだのおおお!! ばりざばなんにもじらないよおおおおおお!!」 「でもまりさ食べたって言ったよね?」 「いっでない! ぞんなごどいっでないいいいいい!!」 どうやらシラを切りとおすつもりのようだが、そうはさせない。 「正直に話したら、にんじんさんと大根さんをあげるよ。あ、それとリンゴさんもあげよう」 「ゆっ!? ほんど!?」 「ああ、嘘じゃないよ」 お兄さんはにっこりと笑顔でこたえる。 それに安心したのか、まりさはぺらぺらと口を開いて喋り出す。 「にんじんざんもだいごんざんもおいじがっだよ! あがぢゃんのぜいでずぐながっだよ!! もっどだべだいよ!!」 「やっぱ食ったんじゃねえか、このクソ饅頭」 「ゆびゃああああああああああああああああああああああああああああ!?」 サッカボールと同じ扱いで思い切り蹴り飛ばす。 悲鳴の尾を引いて吹っ飛んでいくまりさ。 なに、箱の中だし死にはしないだろう。 お兄さんは赤まりさを治療するために、急ぎ足で車を押して我が家へと向かった。 その心中これから始まるゲスまりさの生活を想像して、何度もはしゃぎたくなったのは秘密である。 さあ、ゲスまりさ。お前の地獄はここからだ。 ゆっくりいじめ系2021 育児放棄?そんなもんじゃないんだぜ!! 中編につづく 初書きです 楽しい、けれど難しい。 久方ぶりにSSに挑戦しましたが、文章を短くわかりやすく書くということは、やはり難しい。 他の方とネタは被ってしまうし、書きながら凹んでます。 とはいえ自己満足ですが、書き始めたものは最後まで完成させたいと思っています。
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これは、『育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 中編』の続きです。 それとすみません、終われませんでした。次回で完結します。 ゲスまりさ注意 そんなまりさを制裁もの 子ゆっくりは……今回お休みです お兄さんが前面に出すぎ ストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり それでも構わないという方はどうぞ下へ 育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 後編1 『まりさサイド』 「みんにゃ! これきゃらはおにーしゃんとおねーしゃんのいうこちょをきかなきゃだみぇだよ!!」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」」」」」 姉まりさの言葉に返事を返す妹まりさたち。 本当に理解しているか怪しいが、それでも姉妹を引っ張れる存在がいるだけでだいぶ違う。 自分たちに勉強を教えてほしい。その姉まりさのお願いを快諾したお兄さんは、同居人であるゆっくりゆうかに視線を移す。 「……ゆうか、赤まりさたちを畑に連れて行ってあげてくれ」 「……いいの、おにいさん? きっとこいつらはたけをあらすよ」 今回の事はすべて聞いているものの、やはり野生のゆっくりを畑にいれることには抵抗があるらしいゆうか。 「庭の隅にクズ野菜を埋めてた畑があったから、そこなら荒らされても大丈夫だよ。それにもし言うことを聞かなかったら………」 一気にしゃべるトーンを落としたお兄さんは、ゆうかにだけ聞こえるように対策を伝える。 本当に大丈夫なのか。彼の話を聞いても半信半疑のゆうかだが、家主の願いを無碍にするわけにもいかない。 渋々ながらそれを了承すると、箱から出された赤まりさたちを率いて台所を後にする。 「じゃあ、おしえてあげる。ちゃんとおにいさんにおれいをいってね」 「「「「「おにーしゃん、ありがちょね!!!!」」」」」 ぺそぺそと気の抜ける音を立てて、ゆうかを追いかける赤まりさたち。 お兄さんに治療してもらった姉まりさもそれに追随するが、足が潰れたままなので跳ねることができず、一回分の這いずれる距離も妹たちの半分程度だ。 また片目も失明しているせいで、時折進行方向が姉妹たちとずれてしまい、追いかけることもままならない。 するとそれに気づいた何匹かの妹が、姉の体を気遣って時折振り向いたり立ち止まって追いつくのを待っている様がみられた。 (………姉含めて6個か。結構優秀な赤ゆだな) 一度も振り返ろうとしない個体と、姉を気遣う個体を見極めるお兄さん。 その二種の距離がはっきりと分かれたところを見計らうと、玄関に向かう途中のゆうかを止めて、姉まりさとくっついていた妹たちを持ち上げた。 「大丈夫かい?」 「ゆぅ……、あんよしゃんがうごいちぇくりぇにゃいの……それにおみぇみぇも」 「そりゃあねえ、どっちも君のお母さんにぺちゃんこに潰されていたからね。けれどそのうち治せるようにしてあげるから、少しだけ我慢しててね」 「「「おねーしゃんをなおしちゃげちぇね?」」」 「わかっているさ、そのためにはまだ準備がいるからね。お姉ちゃんはそれまで我慢してね」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! おにーしゃんありがちょね!!」 お兄さんの言葉に素直に返事する赤まりさ姉妹。 無論大ウソである。彼の技量なら一日で治すことも可能である。 ただ、彼は楽しみを一度に消費したくなかったのだ。 そもそも、出たらめを形にしたような存在がゆっくりだ。真面目に治すだけ損である。 その間に姉まりさと気遣っていた姉妹にだけ、お兄さんは識別できるようこっそりと印を付ける。 目的の赤ゆたちに印をつけ終わると、お兄さんはゆうかを左手に、赤まりさ達を右手に乗せた。 「じゃ、今日はお兄さんが運んであげよう。ゆうかと他のまりさはお兄さんの後に付いてきてね」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!!」」」」」 「ゆー、おそらをとんでるみちゃい~♪」 いまはまだ、玄関から出る際に放置していたゲスまりさと赤まりさたちを会わせるわけにはいかない。 ならば別の出口を使えばいいと言われそうだが、あくまでも家への出入りは玄関を使うということを理解させる意味もあるからだ。 こうして母と娘たちは、同じ屋根の下にいながら互いの存在に気付かない生活を送ることとなる。それを親子が知るのは、もう少しだけ先のことだ。 「それじゃゆうか。後はよろしくね」 「「「おにーしゃん、ありがちょう!! ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」 「はいはい、ゆっくりしていってね」 畑についたお兄さんが全員を降ろしてゆうかにお願いすると、彼女は頷いた仕草を見せてくれた。 それを確認して赤まりさたちに適当な声をかけると、お兄さんはすぐに畑を後にした。 後はゆっくりゆうかのドS(スパルタ)授業が行われるだろう。 もし赤まりさ達にゲスが出れば、容赦なくお仕置きをしていいと伝えてある。 姉まりさを気遣える個体を選んだのは、この時点で仲間意識の強い個体を見極めるため。 特にまりさ種の場合、姉妹でも仲間意識が弱ければすぐに裏切ってしまう。 だが赤ゆっくりならば、まだ矯正が間に合うことも少なくない。 印を得られなかった個体への手本として、お兄さんは印のある姉たちを利用する考えであった。 その狙いが外れた場合、つまり印のない妹の矯正が不可能だと判断した時は、そいつらを徹底的に虐待して賢い個体への見せしめに使えばよい。 試せるものは何でも試す。このようなチャレンジ精神が、日々新たな虐待を生み出すのだ。そうお兄さんは信じていた。 「さて、それじゃいよいよ矯正の効かないゲスに移りますか……」 お兄さんは家に戻ると、今度はゲスまりさの箱を抱え、お馴染みの虐待部屋へと移動した。 そこに転がるは虐待お兄さんたちの必需品となる様々な道具たち。 かぴかぴになった餡子がいまだこびり付くスプーン。 たっぷりと砂糖水が染み込んだ釘バット。 何度も使用されて硬さを失ってしまったハリセン。 饅頭を焼くためだけに準備された鉄板。 赤ゆの足を痛めつけるための定規等など…。 お子様の文房具から本格的な拷問具まで、品ぞろえはばっちりだ。 ゆにゃゆにゃ、と幸せそうに居眠りしているまりさ。いつの間に気絶から睡眠へと移行したのだろうか。相も変わらず図太いナマモノである。 やれやれとお兄さんは苦笑した次の瞬間、彼は抱えていた箱を思い切り部屋の床へと叩き落とした。 ッッガァン!!!! 「ゆぎゃあああああああ!?」 完全な防音仕様の部屋の中にだけ響く衝撃音とまりさの悲鳴。 本気で落としたのにヒビ一つ入らない加工所特製の箱を見て、満足そうなお兄さん。 相変わらずいい仕事をしてくれる職員の皆様だ。 「ゆっ!? なに!? なんなんだぜ!?」 「やあ、ゲス饅頭。ゆっくりしていってね」 目が覚めたばかりで状況を把握していないまりさに対し、お兄さんは爽やかな笑顔で毒を吐いた。 「ゆ!? ゆっくりしていってね!! ……ゆ!? うごけないんだぜ!?」 「そりゃあね、箱の中にいるんだから仕方ないじゃない?」 「ゆ!! じじいがまりささまを………!」 そこまで言って、まりさはお兄さんの顔を見て凍りついた。 目の前の人間の顔を思い出したのか、次第に餡子の詰まった身体が震えだす。 「どうしたんだい?」 「な……なんでもないんだぜ……です」 ゆっくりが隠し事などできるはずもないが、お兄さんはあえて気付かないふりを続ける。 「まあ、別にいいよ。これからまりさには、罰を受けてもらうから」 「ゆ!?」 罰。その言葉に敏感に反応するまりさ。 餡子脳の饅頭でも、その言葉の意味はわかる。 「な、なんでまりさがそんなものをうけなきゃいけないんだぜ!?」 「だってまりさは野菜を食べたんでしょ? さっき言ったよね」 「ゆ……!? ゆ、そ、そうだよ!! まりさはしょうじきにはなしたよ!! だからおにいさんはおやさいさんをよこすんだぜ!!」 「ん? …………ああ。そういえば約束したっけ。ちょっと待ってな」 まりさが言った内容とは、彼の質問に対して正直に話せばお兄さんが野菜をあげるというものだった。 自分に都合の悪いこと以外は、わりと記憶力のいい餡子脳。 愛護派でもない限り、饅頭との約束なんて守る必要がないというのが、一般的である。 とはいえ、約束は約束だ。お兄さんは台所から約束のりんごと大根と人参を持って来る。 もちろん、彼がそのまま言うことを聞くつもりは全くないのだが……。 「おいしそうなやさいさんなんだぜ!! はやくここからだしてまりささまにおやさいをたべさせるんだぜ!!」 目の前の野菜に意識を持っていかれたまりさは、すぐにお兄さんへの恐怖を忘れて命令する。 だが、もはやその程度など些細なこと。 おにいさんは無言でまりさの髪を引っ張ると、言われたとおり箱の外へ放り投げる。 ゆべっ、と悲鳴をあげて転がるまりさだが、今はそれよりも目の前の食べ物だ。 すぐに起き上がると、お兄さんの持つ野菜へと飛び跳ねて食いつこうと飛び跳ねる。 だから、まりさは先ほど見たお兄さんの顔が、いまどんな表情をしているのか知ることができなかった。 もし気づいていたとしても、その未来は変わらなかったではあろうが……。 「はやく!! はやくまりささまにおやさいをよこすんだぜ!! たべさせるんだぜ!!」 「…………そう。それじゃ、お望みどおり食べさせてあげる………よ!」 めごりっ!! 合図も何もない。全くの不意打ちだった。 よ! の部分で、お兄さんはりんごをまりさの顔面へと投げつけたのだ。 「ゆべあぁぁぁぁぁっ!!」 りんごを与えられたまりさに待っていたのは、むーしゃむーしゃ♪ ではなく、しあわせー♪ でもなく、顔の潰れるような激痛。 食べ物といえど人間の力によって放たれた固形物は、ゆっくりにとって驚異の威力を発揮する。 瑞々しいリンゴは、音を立ててまりさの鼻に当たる部分にめり込んだ。 「ゆべあ!? ぶあああ!? ば、ばりざのおがお!? いだいいだいいだいいいいいいいい!!」 「あぁ、まりさ。ダメだよ、ちゃんと受け止めなきゃ………」 突然の痛みにのたうつまりさ。 対するお兄さんは、まるで子供の粗相を優しく咎めるような口調。 「な…、なにずるんだぜええ!! じじいはまりざざまにおやざいをよごぜえええ!!」 「あげてるじゃないか。まりさがちゃんと受け止めないからだよ」 手に抱えた人参と大根を持ち上げながら、お兄さんは当然とばかりに答える。 「『食べさせろ』って言われたからね。僕がしっかりお口に運んであげるよ」 お兄さんの回答に、ゲスまりさはそれがどういう意味を持つか理解した。 もともと狡賢い種族だ。言葉の裏に含まれる意図に気づくのにも時間はかからなかった。 「ゆ、ゆっぐりじねええええええ!!」 「あ、大根食べる?」 ばぢん!! 一杯食わされた。ハメられた。ゲスまりさはその事実に激怒し、彼に食ってかかる。 対するお兄さんは握っていた大根で、熱烈に飛び込んできたまりさの顔面をクリーンヒット。まりさの話なんて聞いちゃいない。 カウンターの衝撃に、身体全体を回転させて吹っ飛ぶまりさ。部屋の壁に顔をぶつけ、その際に小麦粉の皮膚が一部削れる。 「ゆべがああああああ!?」 「ほら、はやく食べなよ。ちゃんと口を開けるんだ」 「!? …ま……まっで! まっでええええ!!」 「はい、あーー……ん!」 文字通り身を削られる痛みに泣き叫ぶゲスまりさ。 このままではいけない。本能で一度態勢を整えようと身を捩じらせる。 だが、あくまでもお兄さんは自分のペースを崩さない。 頬を打たれた拍子にまりさの顔から転がり落ちたりんごを拾い、今度は悲鳴を上げる口に叩きつけた。 餡子脳では反応していたが、痛みに動きが鈍っていたゲスまりさは結局、為す術なくその直撃を受ける。 みぢりっ……! 歯茎の裂ける音とともに、ゲスまりさの口から液状餡子にまみれた前歯が何本か転がり落ちた。 「びゃぎゃ!? びゃりびゃにょびゃが!?」(歯が!? まりさの歯が!?) 「ああもう……、落としちゃダメだって……の!」 まりさの悲鳴は、一回ごとに大きくなるにつれて、意味が聞き取りづらくなっていく。 しかし、お兄さんはそんなことを気にしない。再び大根を食べさせようとまりさに近づいた。 「ゆひっ…!? ゆびぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁっ!! ぐるな!! ぐるなあああああああ!! ……ゆごびゅっ!?」 「来てほしくなかったら、逃げるんだ。でもそうなると野菜は食べられないよ?」 最初は野菜に気を取られていたまりさも、ここまで来るとそれどころではない。 いや、そもそもまりさが意識を食べ物に向けることを許されていた時間は一分も無かった。 ゆっくりにとっては広い部屋を、必死に這いずって逃げ回る。 しかし、人間にとってみれば本当に小部屋である。まりさがどんなに逃げたと思っても、五歩もかからず追いつける程度の。 また隠れて休もうにも、まりさが身をひそめるような隙間はどこにもなかった。そして追いつかれれば、また大根とリンゴ。 必死に距離を取ろうと逃げる間。ゲスまりさの脳裏に浮かんだのは、恐怖だった。 このゲスまりさは、人間というものが自分たちにとってゆっくりできない存在であることを知っていた。 知ってはいたが、それは鈍くさい他のゆっくりだからそんな目にあうのだと考えていた。 狩りに秀でて賢い自分がやれば、人間なんてすぐに倒してしまえる。いや、それよりも下僕にして利用しよう。そう企んでいた。 だが現実はどうだ。まんまと人間の罠にかかり、なまじ賢い分人間との実力差を理解してしまった。 こんなことになるなら、最初から自分の娘たちを交換道具として扱えばよかった。 元々春になれば捨てるつもりだった子供だ。夫のれいむもいない今、不要な子供をまりさが育てる理由もない。 そうだ、全てはあのガキどもが悪いんだ。あいつらがいたから人間の里へ来てしまったのだ。 あのゴミどもを自分が人間のための奴隷として躾ると提案すれば、喜んで受け入れてくれるだろう。 少しは自分の餡子を受け継いでいるのだから、物覚えはいいはずだ。 言うことを聞かないやつがいれば、人間に食べさせればいい。全部潰して逃げるということだってできる。 もしかすると、お礼に美味しいごはんを用意してくれるかもしれない。いや、きっとそうに決まってる。 そうと決まれば、早くこの素晴らしい提案を人間に伝えよう。自分は悪くない。被害者なんだって。 そうすれば、人間も同情してくれるに違いない。赤まりさたちは憎たらしい顔をしていたが、自分はこんなに美ゆっくりなんだから。 だから……だから早く止めてええええええええええ!!!! 叫びたくとも叫べない。うかつに声を出そうとすれば、先ほどのように口を痛めてしまうことに、ゲスまりさは気づいていた。 そんなまりさの懇願など知らず、お兄さんはまりさの顔に向けて野菜を向ける。 起き上がれば大根、倒れればリンゴの大盤振る舞いだ。 「ぼ、ぼうやべで……いだいのいやだぁぁぁぁ……」 この行動が5分ほど続いた頃、呆れるほど遅いながら全力で逃げていたまりさは体力の限界を迎えた。 限界まで動かした身体は痙攣気味に激しく上下し、時折少量の餡子が、口から濁った音と共に噴き出して床を汚す。 先ほどまでふてぶてしかったその顔は、りんごや大根によって何本も歯が抜けおち、顔の所々は内出餡で黒ずんでいる。 恐怖と激痛によって穴と言う穴から垂れ流した砂糖水が、フローリングの床に水たまりを作っていた。 まりさ種自慢の帽子も、初めの時より半分以上も潰れて縮んでいた。これでは鍋を逆さまにして被っているのと大差ない。 「じゃ、お野菜さんはもういらないんだね。……残念だな、すごく新鮮ですごくゆっくりできた大根さんたちだったのに……」 やれやれ…。とお兄さんはため息をついて首を振る。あざとい、さすが虐待お兄さん、あざとい。 そんな彼が握る大根とリンゴはいまだ無傷。野菜は食べるものであって、遊ぶものではない。それを忠実に守っているお兄さんであった。 「じ……じじいがだべざぜでぐれないがらでじょおおおおお!!」 「食べさせてあげようとしたのに、まりさが逃げたり口を閉じたりするからだよ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの? ……あ、それと」 何かを思い出したようにお兄さんは言葉を切ると、何の躊躇もなくゲスまりさのぐずぐずになった顔へ指先をぶち込んだ。 ずぶり。という音とともに、湿った感触がお兄さんの指の先端へ伝わってくる。 「ゆがああああああ!? いだい!! いだいいいいいいいい!!!」 「その薄汚い喋り方を今すぐ止めろ。このゲスが」 「おがおづぶれるうううううう!!」(お顔潰れるうううう!!) 「潰れたって死にはしないよ」 「やべでぬいでいだいいだいぬいでいだいやべでいだいいだいいいいい!!」 「黙れ」 「おべがいじまずごろざないでぐだざい!! おべがいじまずおべがいじばず!!!」 「動くな、死ぬぞ」 死ぬ。突如雰囲気を豹変させたお兄さんに、自分が最も恐れる単語を言われて、まりさは口をつぐむ。 危機管理能力が疎いゆっくりでも、さすがに自分の現状を理解できたようだ。 お兄さんが刺しこんだ箇所は、ゲスまりさの眉の部分であった。 指を全て頭へ埋めこむと、指先を僅かに動かして中枢餡付近に食いこませる。 「いいかい、ゲス饅頭。いまから僕の話をよく聞いてね?」 「ど、どぼじでごんなごど……」 「返事」 ぐずり…… 指を動かして、体内の餡子をかき混ぜる振動を直に伝える。 「わがりまじだ! なんでもぎぎばず! だがらごろざ…!」 「うるさい」 「ゆぐりいいいいい!!」 「もしまた生意気な口…。さっきのじじいとかね。ああいうことを言ったら、まりさの中身を全部出すからね。理解出来た?」 「ゆ……、ゆっぐりりがいじだよ…!!」 「敬語忘れてるよ」 「ゆゆゆゆゆっぐりりがいじまじだ!!!」 痛みと不快感の中で、まりさはお兄さんの言葉を待つしかなかった。 間近に見える死。まりさはそれを回避するために全意識を集中させる。 その反応に満足そうな表情のお兄さん。いつの間にか口調も元に戻っていた。 「話は簡単だ。まりさはどうしてこんな目にあってるのかな?」 「ゆ……、ば、ばりざのあがぢゃんがわるいんだよ!! わがままばがりいっで、ばりざをごばらぜるがら!!」 「答えになっていません。はいお仕置き」 お兄さんは手首を回すと、額に当たる部分の餡子をぐりぐりとかき回した。 「ゆぎゃ!? ゆびょ!? びょ! ゆっっぴょ!? ゆっぐ!?」 「次はこんなもんじゃないぞー? それとも、身体の中ぐちゃぐちゃにされたいの?」 ぐずりぐずりと体内から湧き上がる音にパニックを起こすまりさ。 それが治まるのを待って、再びおにいさんは声をかける。 体内をかき回されたことにショックを受けたまりさは、大人しくお兄さんの質問に答えるようになった。 自分たちはぎりぎりで冬を越せたが、量が足りないため人間の畑に餌を取りに来たこと。 番のれいむが死んだことで育児が面倒になり、赤ゆたちを最初から捨てる考えだったこと。 人間はゆっくりより弱いと考えていたこと。 一刻も早く手を抜いてもらいたい。そのためにまりさは偽りを騙る手間さえ惜しんでいた。 だがまりさは体験したことない責め苦に怯えながらも、自分が先ほど考えていた提案を口にする。 「じ、……おにいざん! ば、ばりざのおはなしをゆっぐりぎいでね!? ぎっどすごぐおどろぐよ!!」 「ん……お話?」 「ば、ばりざがあのおぢびじゃんだぢをどれいにぞだでであげるよ!!」(あのおちびちゃんたちを奴隷に育ててあげるよ) 餡子をこねくり回す手を止めて、お兄さんはまりさの顔を覗き込む。 かかった。ゲスまりさは心の中で笑みを浮かべながら、自分の提案を口にする。 その間お兄さんは空いていた手を顎に当て、何事か考えるそぶりを見せていた。 「…ど、どうおにいざん!? ごはんはうんうんだげだべざぜるじ、ずっぎりのあいでもできるようにざぜるよ!?」 お兄さんはずっと黙っているが、まりさには手ごたえがあったと根拠のない確信があった。 もしかすると、まりさの考えに驚いて声が出ないのかもしれない。 やがてお兄さんが口の端を釣り上げて自分を見下ろす。 そうして受け入れられる自分の未来を想像し…… 「お断りします」 「ゆ゛っ!?」 お兄さんから明確な拒絶を食らい、痛みも忘れて固まった。 ああ、よく似た親子だ。その様子を見て、お兄さんは苦笑する。 そもそも、子供を奴隷とする様なゆっくりと取引するつもりはなかった。 それにいつの間にか敬語も忘れている。だから早くお仕置きという名の虐待に移りたいのだ。 真面目に取り合うだけ時間の無駄だ。適当な嘘でお兄さんはこの話を切り上げることにした。 「あのゲス饅頭どもさ、全然使えなかったよ。ゴミだねゴミ」 「ゆ!?」 そんなはずはない。まりさは咄嗟にそう口に出そうとしたが、続くお兄さんに遮られる形となった。 「全く、言った話を聞きやしないし覚えもしない。ほとんど潰しちゃったよ」 「ど、どぼじでぞんなごどじだのおおおお!?」 「だって捨てたじゃないか。それをどう扱おうが僕の勝手だよ。もういないけど」 「じゃあばりざをゆるじでよおおおおお!!」 「ダメだよ、お野菜食べたんだし。それに、あの赤まりさたちは役に立たなかったし……もういないけど」 「ばりざのごどもがやぐにだだないわげないでじょおおおお!? ばがなの!? じぬの!?」 「まあ、そんなわけで穴埋めをゲスまりさにしてもらうことと相成りました。はい拍手」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおお!?」 「それにさ、ゲスの子供が何の役に立つの、ゴミでしょ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「ばりざばげすじゃないいいいいいいいいいい!!」 「全く。赤ん坊も言ってたよ。おかーさんを潰してまりさを助けてね、ってさ。もういないけど」 「ゆがあああああああ!! ぐぞばりざどもおおおおおおおお!!」 「いや、お前の子だし。役に立たないとことかそっくりだね。もういないけど」 「あんなのばりざのごどぼじゃないいいい!!」 「じゃあやっぱり好きにしていいんだよね。もういないけど」 「ゆっぐりじねえええええええ!!」 「一々煩いんだよこのゲス饅頭」 ここでようやくお兄さんはまりさの中に突っ込んでいた手を引いた。その手にわずかばかりのオマケを掴んでいる。 「ゆぎゃああああああ!! ば、ばりざのおべべえええええええええ!!」 「全く、敬語を使えと言っただろうに……あと、うるさい」 彼はまりさの顔から手を引き抜くと同時に手首のスナップを利かせ、掻き出す要領でまりさの眼から頬にかけて削ぎ落としていた。 ぽっかりと顔の左上半分が削られたまりさ。さぞかし甘くなったはずの餡子は、まりさが垂れ流した水分が多すぎて硬くなっていた。 お兄さんは掴んだ餡子を手の中でおにぎりの様に固めると、それを部屋の隅へ放り投げる。 「……あれは餡団子なのか、はたまた善哉の素になるのか……それが問題だ」 「ば、ばりざ! ばりざのおべべがえぜえええ!!」 その様子を見ていたまりさは餡子の転がった隅へ這いずると、どうにか自分の身体を取り返そうと舌を伸ばす。 だが、そんなことを許すほど虐待お兄さんは優しくない。 「はい、よく聞いてねゲスまりさ。じゃないと踏み潰すよ。この舌」 「ゆひぇ!?」 もう少しで届く、そう思って全神経を集中させた先端部分に、お兄さんは容赦なく足を置いた。 「まりさにはこれからしばらくの間、子供たちの分までお仕置きを受けてもらいます」 「ゆひぇひぇひぇ! ゆひゃんひゃにょほ!!」 「何言ってるかわかんないんで、こっちが勝手にしゃべるよ。それとも、踏みつぶしたらちゃんと喋れるかな?」 赤くなったり青くなったり忙しい饅頭だ。お兄さんは悪戯に足に力を込める。 残った片目が大きく見開かれた直後、すぐにまた力を抜く。安心したらまた力を込める。 お兄さんはこれを何度か繰り返し、お仕置きが嫌ならここで潰されるかと迫った。 その選択に、もはやまりさは目を伏せて諦めるしかなかった。 絶望を顔に張り付けた土饅頭を見て、ようやくお兄さんは舌から足を離す。 「じゃあ、まりさ。いよいよ本格的なお仕置きに行こうか?」 「あ、あれがおじおぎじゃないの!?」 当然です。 お兄さんはオレンジジュースを混ぜて練った小麦粉の塊をまりさの顔にくっつけて応急処置をすると、部屋を見渡して道具を探す。 「……そうだ。これにしよう」 「ゆ!? なにをずるの!? ぼうばりざをいじめないでね!? ゆっぐりざぜでね!!」 「ああ、終わったらゆっくりできるよ。……まあ、したくなくてもすることになるけど」 「おべがいだがらゆっぐりざぜでええええええええええ!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 適当に答えながら部屋の中を物色していると、ある物を発見して動きを止めた。 それは以前解体したゆっくりまりさの舌の長さを測るために使用した定規と、番いのありすの目の前で引き抜いた舌を輪切りにするために使った包丁。 そして輪切りにされた舌をありすに食べさせるために使用した爪楊枝だった。 結局ありすはまりさの舌を食べた直後に発狂し、自ら包丁を無理やり飲み込んで死んだ。 その二匹の亡骸は今、我が家のゆうかの畑の栄養としてゆっくりしていることだろう。 「そうだ、いい事を思いついた……」 お兄さんは早速それらをまとめて抱え上げると、すぐにまりさの方へ向き直る。 「ゆ!? なにずるの!? やべでね!! ゆっぐりできないがらやべでね!!」 「だから、終わったらさせてあげるって」 それだけ言うと、お兄さんは距離を取ろうとしていたまりさを髪を掴んでひっくり返す。 その拍子に帽子がとれたと騒がれても迷惑なので、素早く頭の下に敷いてやる。 潰れるとかゆっくりできないとか騒いだが、すでに直し様のない状態だったので、お兄さんは黙殺した。 「や、やべるんだぜ!! ゆっぐりできないんだぜ!! ゆっぐりじないでもどずんだぜ!?」 「うへぁ……気持ち悪」 少しの間だけとはいえ、休めたことで落ち着いたのだろうか。口調が「だぜ」に戻っていた。 それにしても、どうやらゆっくりは自分で起き上がることが難しいのは本当らしい。 横倒しならまだしも、逆さまにされると体を揺らすのも厳しいようだ。 うねうねうねうねうねうねうねうね……と、ゆっくりで言う『足』の部分が忙しなく動いている。 それはまるで、波打つ芋虫の背中のようだった。きもい、さすがゆっくり、きもい。 一瞬決意を挫かれそうになるお兄さんだが、そこは虐待魂。意を決して波打つ底辺に包丁を当てる。 残念だが、こんなにうねるようでは定規は役に立ちそうにないので放り投げる。 「なに!? なにをずるんだぜええええ!?」 自分で確認できない場所に何かをされる。その事実に、まりさは声を震わせた。 すでに片目付近がごっそりと失われているのだ。死角が増えている今、自分の状況を知ることは無理だろう。 さてと、これからは集中力が大事である。彼は素早く包丁を突き立てた。 失敗しても支障はないが、やはり自分なりに難易度を上げるのも一興だろう。 お兄さんは大きく息を吐くと、すっと深く長い一本線の切り込みをまりさの足に引いていく。 「ゆぎゃあああああ!? なに!? なにじでるんだぜええええええ!!」 「何って、足を切ってるんだよ……」 「やべでよおおお!! ばりざあるげなぐなっぢゃうでじょおおお!!」 あ、また「だぜ」口調じゃなくなった。 だがそんなことはどうでもいい。 「まりさ、これはお仕置きだ。もう二度と君が狩りをできない身体にするんだよ」 「ゆぎゃあああ!! おべがいでず! やべでぐだざい!! ばりざあるげなぐなっぢゃうううう!!」 「……当然じゃないか。その為にしているんだから」 何を言ってるんだい? お兄さんは呆れた声でまりさの足へ切り込みを入れていく。 「いやだあああああああ!! あるげなぐなるのいやだああああああ!!」 「そりゃ僕だって嫌だよ。でもまりさはお仕置きだからね。ゆっくり切られてね」 「ばりざなんいもじでないいいいい!! いだいいだいよおおおやべでくだざいいいいい!!」 「人の畑に入ったし、子供を見捨てた。それに何より饅頭風情が人間をバカにした。殺されないだけいいと思うんだね」 「ごべんなざい、もうじまぜん! にどとじまぜん!! いうごどだっでぎぎまずがらあああああ!!」 「じゃあ動くなよ。足を切り落とすのが面倒になるから」 「あじをぎらないでぐだざいいいいいいいいいい!!」 「相変わらず無茶を言う…。なら、加工所に行こうか?」 「かこうじょいやだああああああああああ!!」 「だったら、諦めるんだね」 まりさの意味のない声を聞き流して、お兄さんはさらに包丁を突き刺して切り込みを入れていく。 それは寺小屋で子供たちが画用紙を縦に切って短冊を作るのと、よく似ていた。 数分後、彼の目の前には、縦に何本もの切り込みを入れられたまりさがひっくり返っていた。 その顔は水分を出し切ったはずなのに、まだ砂糖水の涙でぐしょぐしょに濡れていた。 「ふう……」 「ゆぐっ……、こんなんじゃもうばりざゆっぐりでぎないいいいい……」 まりさは自分で見ることはできないが、どんな風にされてしまったのかは感覚でわかるのだろう。 縦に切られた足はまだ時折動くが、先ほどまでの様に元気よく波を立てることができなくなっていた。 うねる波が不規則になり、その隙間からは餡子が見え隠れする。 中身を傷をつけずに捌けたことに彼は少しばかりの達成感。 だが、これならまだ十分治癒できる程度だ。お兄さんはまりさに声をかける。 「まさか、これくらいならすぐに治るよ」 「ゆ!? ぼんど!? なおるの!?」 「もちろん。だから、もっと切らないとダメだね」 無論、絶望を与えるために。 「ごのおにいいいい!! あぐまああああ!! ゆっぐりじねえええええええええ!!」 「ははは、ありがとう。それなら、本当に悪魔みたいなことをしてあげようか?」 「ばなぜ!! もどぜ!! ばりざをだずげろおおおおおおお!!」 「さーて、次は横に細切れだー」 まりさの罵詈雑言など当然スルー。 むしろ、余計な事を言えば尚更痛い目を見ると教えてやる。 お兄さんは先ほど切り込みをを入れた傷に交わるように、今度は横に包丁の切っ先を走らせた。 縦で慣れたおかげもあり、横切りは実にスムーズに進む。 「やべでよおおおお!!! いだいよおおおおおお!!」 「止めろと言われてやめるわけないじゃないか、馬鹿なの? 死ぬの?」 「やべで!! やべでよ!! どぼじでごんばごどずるのおおおおお!?」 「何言ってるかわかんないよ。……ほい、半分」 「おにいざんだっで、いだいごどざれだらいやでじょおおおおお!!」(痛いことされたらいやでしょおおお) 「うん、嫌だね。だから人は悪い事をしないんだよ。でも、まりさは悪いゆっくりだから仕方無いの」 「おにいざんがゆるじでぐれればいいんだよおおおおおお!! ぞんなごどもわがらないの!? ばがなの!? じぬの!?」 「ええと……、………そうだあれだ。『絶対に許さない、絶対にだ』」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおお!? いだいいだいいだいだいいだい!!」 「ははは、そんな流れに運んだまりさが悪いんだよ。……よし、できた」 絶えず痛みを訴えるまりさを適当にあしらいつつ、お兄さんは順調に作業を進めていた。 そしてようやく完成したことに満足すると、額の汗をぬぐう仕草をする。 お兄さんの前にあるもの。それはいくつもの見事な正方形に区分けされたまりさの底面だった。 ちょうど、将棋盤のようなものだと思ってもらえればいいだろう。 そんな細かく切り分けられたまりさの小麦粉の皮膚は、辛うじて中身の餡子とくっついてる程度だ。 動かそうとしてもここまで(あるかわからない)神経を断裂されると、それは最早無理なこと。 人間で言うならば、足の指の根元を裂かれたようなものだ。 まりさの足も所々が個別に痙攣するだけで、底面が波打つことはもうできないだろう。 オレンジジュースでもかければ傷も塞がるだろうが、そんなことは死にそうになってからで十分である。 終わらない拷問に叫び、神経をすり減らしたことで、まりさは心身ともにズタボロになっていた。 「うーん、将棋の網目の数ってこれでよかったんだっけかな……。今度やる時はちゃんと調べておこう」 「ぼ、ぼうやべでぐだざい…。ばりざをおうぢにがえぢでぐだざい………」 「加工所に提案したら採用されないかな……。河童の棟梁とか……さすがに気に入ってくれないか……」 「おにいざん……、ばりざを……ばりざをだずげでぐざだざい」 先ほどまでは怒ったり泣いたりと忙しかったまりさも、足を刻まれたせいで抵抗する気を奪われてしまったようだった。 もう許してほしい。助けてほしい。ゲス特有の傲慢さすら、涙と共に体外へ出てしまっているような大人しさだ。 「………おいおい、何を言ってるんだ。まだまだこれからだろ?」 「ゆびぇぇぇえええええええええん!! おうぢがえるううううううう!!」 だが、それでもお兄さんは許してくれない。むしろ、ようやくギアが入ってきたところだ。 地獄は行った事がないが、生き地獄とは、もっともっと苦しいものだと思う。 そう、これからが本番である。 「さて、それじゃその足も役に立たないし、剥こうか」 「ゆ゛っっっっ!?」 剥く。それがどんな意味を持つかまりさにはわからなかったが、とにかくゆっくりできないことは間違いない。 一時は為すがままに諦めようとも考えたまりさは、必死に身体を揺らして態勢を整えようとする。 だが悲しいかな。立て続けの責め苦にまりさの体力は限界を超え、足を切られたせいで運動能力は元の半分以下。 さらには、潰れた帽子の中へ逆さまに入る形になっているせいで、妙な安定感がまりさに働いていた。 何一つ、まりさの味方になってくれる存在は無かった。 頼れるのは己のみ。その己すら、お兄さんには手も足も出ないという現実が、まりさをより追い詰める。 「おべがいだがらやべでよ!! ばりざをゆっぐりざぜでええええ!!」 「やれやれ……いい加減何度も騒がれると鬱陶しいな」 お兄さんは再びまりさの顔に手刀を打ち込むと、半ば叩きつけるようにして閉じ込めていた箱の中へと戻した。 続きの事も考えて、逆さまのままである。 箱の中でも騒ぎ続けるまりさだが、箱の中に声がたまるので幾分か聞こえてくる声は小さくなった。 相変わらず甲高いが、それでも先ほどに比べれば随分マシである。 「さ、まりさ。覚悟はできたかい?」 手を振り払って餡子を床にまき散らしながら、お兄さんは親しみをこめた三日月型の笑顔を向けた。 後編2 まりさ一家 へ続きます ============================================ あとがき 長すぎました……。 あまりにもやりたかったことを試して行ったら伸びる伸びる……。 お兄さんの独壇場で、まりさが頑丈すぎました……。 wikiなどで感想を下さった方、こうして目を通して下さった方、ありがとうございました。 次回で完結します。 正直長いうえにやり過ぎだとは思いますが、最後は簡潔に済ませたいと思っています。
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これは、『育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 中編』の続きです。 それとすみません、終われませんでした。次回で完結します。 ゲスまりさ注意 そんなまりさを制裁もの 子ゆっくりは……今回お休みです お兄さんが前面に出すぎ ストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり それでも構わないという方はどうぞ下へ 育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 後編1 『まりさサイド』 「みんにゃ! これきゃらはおにーしゃんとおねーしゃんのいうこちょをきかなきゃだみぇだよ!!」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」」」」」 姉まりさの言葉に返事を返す妹まりさたち。 本当に理解しているか怪しいが、それでも姉妹を引っ張れる存在がいるだけでだいぶ違う。 自分たちに勉強を教えてほしい。その姉まりさのお願いを快諾したお兄さんは、同居人であるゆっくりゆうかに視線を移す。 「……ゆうか、赤まりさたちを畑に連れて行ってあげてくれ」 「……いいの、おにいさん? きっとこいつらはたけをあらすよ」 今回の事はすべて聞いているものの、やはり野生のゆっくりを畑にいれることには抵抗があるらしいゆうか。 「庭の隅にクズ野菜を埋めてた畑があったから、そこなら荒らされても大丈夫だよ。それにもし言うことを聞かなかったら………」 一気にしゃべるトーンを落としたお兄さんは、ゆうかにだけ聞こえるように対策を伝える。 本当に大丈夫なのか。彼の話を聞いても半信半疑のゆうかだが、家主の願いを無碍にするわけにもいかない。 渋々ながらそれを了承すると、箱から出された赤まりさたちを率いて台所を後にする。 「じゃあ、おしえてあげる。ちゃんとおにいさんにおれいをいってね」 「「「「「おにーしゃん、ありがちょね!!!!」」」」」 ぺそぺそと気の抜ける音を立てて、ゆうかを追いかける赤まりさたち。 お兄さんに治療してもらった姉まりさもそれに追随するが、足が潰れたままなので跳ねることができず、一回分の這いずれる距離も妹たちの半分程度だ。 また片目も失明しているせいで、時折進行方向が姉妹たちとずれてしまい、追いかけることもままならない。 するとそれに気づいた何匹かの妹が、姉の体を気遣って時折振り向いたり立ち止まって追いつくのを待っている様がみられた。 (………姉含めて6個か。結構優秀な赤ゆだな) 一度も振り返ろうとしない個体と、姉を気遣う個体を見極めるお兄さん。 その二種の距離がはっきりと分かれたところを見計らうと、玄関に向かう途中のゆうかを止めて、姉まりさとくっついていた妹たちを持ち上げた。 「大丈夫かい?」 「ゆぅ……、あんよしゃんがうごいちぇくりぇにゃいの……それにおみぇみぇも」 「そりゃあねえ、どっちも君のお母さんにぺちゃんこに潰されていたからね。けれどそのうち治せるようにしてあげるから、少しだけ我慢しててね」 「「「おねーしゃんをなおしちゃげちぇね?」」」 「わかっているさ、そのためにはまだ準備がいるからね。お姉ちゃんはそれまで我慢してね」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! おにーしゃんありがちょね!!」 お兄さんの言葉に素直に返事する赤まりさ姉妹。 無論大ウソである。彼の技量なら一日で治すことも可能である。 ただ、彼は楽しみを一度に消費したくなかったのだ。 そもそも、出たらめを形にしたような存在がゆっくりだ。真面目に治すだけ損である。 その間に姉まりさと気遣っていた姉妹にだけ、お兄さんは識別できるようこっそりと印を付ける。 目的の赤ゆたちに印をつけ終わると、お兄さんはゆうかを左手に、赤まりさ達を右手に乗せた。 「じゃ、今日はお兄さんが運んであげよう。ゆうかと他のまりさはお兄さんの後に付いてきてね」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!!」」」」」 「ゆー、おそらをとんでるみちゃい~♪」 いまはまだ、玄関から出る際に放置していたゲスまりさと赤まりさたちを会わせるわけにはいかない。 ならば別の出口を使えばいいと言われそうだが、あくまでも家への出入りは玄関を使うということを理解させる意味もあるからだ。 こうして母と娘たちは、同じ屋根の下にいながら互いの存在に気付かない生活を送ることとなる。それを親子が知るのは、もう少しだけ先のことだ。 「それじゃゆうか。後はよろしくね」 「「「おにーしゃん、ありがちょう!! ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」 「はいはい、ゆっくりしていってね」 畑についたお兄さんが全員を降ろしてゆうかにお願いすると、彼女は頷いた仕草を見せてくれた。 それを確認して赤まりさたちに適当な声をかけると、お兄さんはすぐに畑を後にした。 後はゆっくりゆうかのドS(スパルタ)授業が行われるだろう。 もし赤まりさ達にゲスが出れば、容赦なくお仕置きをしていいと伝えてある。 姉まりさを気遣える個体を選んだのは、この時点で仲間意識の強い個体を見極めるため。 特にまりさ種の場合、姉妹でも仲間意識が弱ければすぐに裏切ってしまう。 だが赤ゆっくりならば、まだ矯正が間に合うことも少なくない。 印を得られなかった個体への手本として、お兄さんは印のある姉たちを利用する考えであった。 その狙いが外れた場合、つまり印のない妹の矯正が不可能だと判断した時は、そいつらを徹底的に虐待して賢い個体への見せしめに使えばよい。 試せるものは何でも試す。このようなチャレンジ精神が、日々新たな虐待を生み出すのだ。そうお兄さんは信じていた。 「さて、それじゃいよいよ矯正の効かないゲスに移りますか……」 お兄さんは家に戻ると、今度はゲスまりさの箱を抱え、お馴染みの虐待部屋へと移動した。 そこに転がるは虐待お兄さんたちの必需品となる様々な道具たち。 かぴかぴになった餡子がいまだこびり付くスプーン。 たっぷりと砂糖水が染み込んだ釘バット。 何度も使用されて硬さを失ってしまったハリセン。 饅頭を焼くためだけに準備された鉄板。 赤ゆの足を痛めつけるための定規等など…。 お子様の文房具から本格的な拷問具まで、品ぞろえはばっちりだ。 ゆにゃゆにゃ、と幸せそうに居眠りしているまりさ。いつの間に気絶から睡眠へと移行したのだろうか。相も変わらず図太いナマモノである。 やれやれとお兄さんは苦笑した次の瞬間、彼は抱えていた箱を思い切り部屋の床へと叩き落とした。 ッッガァン!!!! 「ゆぎゃあああああああ!?」 完全な防音仕様の部屋の中にだけ響く衝撃音とまりさの悲鳴。 本気で落としたのにヒビ一つ入らない加工所特製の箱を見て、満足そうなお兄さん。 相変わらずいい仕事をしてくれる職員の皆様だ。 「ゆっ!? なに!? なんなんだぜ!?」 「やあ、ゲス饅頭。ゆっくりしていってね」 目が覚めたばかりで状況を把握していないまりさに対し、お兄さんは爽やかな笑顔で毒を吐いた。 「ゆ!? ゆっくりしていってね!! ……ゆ!? うごけないんだぜ!?」 「そりゃあね、箱の中にいるんだから仕方ないじゃない?」 「ゆ!! じじいがまりささまを………!」 そこまで言って、まりさはお兄さんの顔を見て凍りついた。 目の前の人間の顔を思い出したのか、次第に餡子の詰まった身体が震えだす。 「どうしたんだい?」 「な……なんでもないんだぜ……です」 ゆっくりが隠し事などできるはずもないが、お兄さんはあえて気付かないふりを続ける。 「まあ、別にいいよ。これからまりさには、罰を受けてもらうから」 「ゆ!?」 罰。その言葉に敏感に反応するまりさ。 餡子脳の饅頭でも、その言葉の意味はわかる。 「な、なんでまりさがそんなものをうけなきゃいけないんだぜ!?」 「だってまりさは野菜を食べたんでしょ? さっき言ったよね」 「ゆ……!? ゆ、そ、そうだよ!! まりさはしょうじきにはなしたよ!! だからおにいさんはおやさいさんをよこすんだぜ!!」 「ん? …………ああ。そういえば約束したっけ。ちょっと待ってな」 まりさが言った内容とは、彼の質問に対して正直に話せばお兄さんが野菜をあげるというものだった。 自分に都合の悪いこと以外は、わりと記憶力のいい餡子脳。 愛護派でもない限り、饅頭との約束なんて守る必要がないというのが、一般的である。 とはいえ、約束は約束だ。お兄さんは台所から約束のりんごと大根と人参を持って来る。 もちろん、彼がそのまま言うことを聞くつもりは全くないのだが……。 「おいしそうなやさいさんなんだぜ!! はやくここからだしてまりささまにおやさいをたべさせるんだぜ!!」 目の前の野菜に意識を持っていかれたまりさは、すぐにお兄さんへの恐怖を忘れて命令する。 だが、もはやその程度など些細なこと。 おにいさんは無言でまりさの髪を引っ張ると、言われたとおり箱の外へ放り投げる。 ゆべっ、と悲鳴をあげて転がるまりさだが、今はそれよりも目の前の食べ物だ。 すぐに起き上がると、お兄さんの持つ野菜へと飛び跳ねて食いつこうと飛び跳ねる。 だから、まりさは先ほど見たお兄さんの顔が、いまどんな表情をしているのか知ることができなかった。 もし気づいていたとしても、その未来は変わらなかったではあろうが……。 「はやく!! はやくまりささまにおやさいをよこすんだぜ!! たべさせるんだぜ!!」 「…………そう。それじゃ、お望みどおり食べさせてあげる………よ!」 めごりっ!! 合図も何もない。全くの不意打ちだった。 よ! の部分で、お兄さんはりんごをまりさの顔面へと投げつけたのだ。 「ゆべあぁぁぁぁぁっ!!」 りんごを与えられたまりさに待っていたのは、むーしゃむーしゃ♪ ではなく、しあわせー♪ でもなく、顔の潰れるような激痛。 食べ物といえど人間の力によって放たれた固形物は、ゆっくりにとって驚異の威力を発揮する。 瑞々しいリンゴは、音を立ててまりさの鼻に当たる部分にめり込んだ。 「ゆべあ!? ぶあああ!? ば、ばりざのおがお!? いだいいだいいだいいいいいいいい!!」 「あぁ、まりさ。ダメだよ、ちゃんと受け止めなきゃ………」 突然の痛みにのたうつまりさ。 対するお兄さんは、まるで子供の粗相を優しく咎めるような口調。 「な…、なにずるんだぜええ!! じじいはまりざざまにおやざいをよごぜえええ!!」 「あげてるじゃないか。まりさがちゃんと受け止めないからだよ」 手に抱えた人参と大根を持ち上げながら、お兄さんは当然とばかりに答える。 「『食べさせろ』って言われたからね。僕がしっかりお口に運んであげるよ」 お兄さんの回答に、ゲスまりさはそれがどういう意味を持つか理解した。 もともと狡賢い種族だ。言葉の裏に含まれる意図に気づくのにも時間はかからなかった。 「ゆ、ゆっぐりじねええええええ!!」 「あ、大根食べる?」 ばぢん!! 一杯食わされた。ハメられた。ゲスまりさはその事実に激怒し、彼に食ってかかる。 対するお兄さんは握っていた大根で、熱烈に飛び込んできたまりさの顔面をクリーンヒット。まりさの話なんて聞いちゃいない。 カウンターの衝撃に、身体全体を回転させて吹っ飛ぶまりさ。部屋の壁に顔をぶつけ、その際に小麦粉の皮膚が一部削れる。 「ゆべがああああああ!?」 「ほら、はやく食べなよ。ちゃんと口を開けるんだ」 「!? …ま……まっで! まっでええええ!!」 「はい、あーー……ん!」 文字通り身を削られる痛みに泣き叫ぶゲスまりさ。 このままではいけない。本能で一度態勢を整えようと身を捩じらせる。 だが、あくまでもお兄さんは自分のペースを崩さない。 頬を打たれた拍子にまりさの顔から転がり落ちたりんごを拾い、今度は悲鳴を上げる口に叩きつけた。 餡子脳では反応していたが、痛みに動きが鈍っていたゲスまりさは結局、為す術なくその直撃を受ける。 みぢりっ……! 歯茎の裂ける音とともに、ゲスまりさの口から液状餡子にまみれた前歯が何本か転がり落ちた。 「びゃぎゃ!? びゃりびゃにょびゃが!?」(歯が!? まりさの歯が!?) 「ああもう……、落としちゃダメだって……の!」 まりさの悲鳴は、一回ごとに大きくなるにつれて、意味が聞き取りづらくなっていく。 しかし、お兄さんはそんなことを気にしない。再び大根を食べさせようとまりさに近づいた。 「ゆひっ…!? ゆびぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁっ!! ぐるな!! ぐるなあああああああ!! ……ゆごびゅっ!?」 「来てほしくなかったら、逃げるんだ。でもそうなると野菜は食べられないよ?」 最初は野菜に気を取られていたまりさも、ここまで来るとそれどころではない。 いや、そもそもまりさが意識を食べ物に向けることを許されていた時間は一分も無かった。 ゆっくりにとっては広い部屋を、必死に這いずって逃げ回る。 しかし、人間にとってみれば本当に小部屋である。まりさがどんなに逃げたと思っても、五歩もかからず追いつける程度の。 また隠れて休もうにも、まりさが身をひそめるような隙間はどこにもなかった。そして追いつかれれば、また大根とリンゴ。 必死に距離を取ろうと逃げる間。ゲスまりさの脳裏に浮かんだのは、恐怖だった。 このゲスまりさは、人間というものが自分たちにとってゆっくりできない存在であることを知っていた。 知ってはいたが、それは鈍くさい他のゆっくりだからそんな目にあうのだと考えていた。 狩りに秀でて賢い自分がやれば、人間なんてすぐに倒してしまえる。いや、それよりも下僕にして利用しよう。そう企んでいた。 だが現実はどうだ。まんまと人間の罠にかかり、なまじ賢い分人間との実力差を理解してしまった。 こんなことになるなら、最初から自分の娘たちを交換道具として扱えばよかった。 元々春になれば捨てるつもりだった子供だ。夫のれいむもいない今、不要な子供をまりさが育てる理由もない。 そうだ、全てはあのガキどもが悪いんだ。あいつらがいたから人間の里へ来てしまったのだ。 あのゴミどもを自分が人間のための奴隷として躾ると提案すれば、喜んで受け入れてくれるだろう。 少しは自分の餡子を受け継いでいるのだから、物覚えはいいはずだ。 言うことを聞かないやつがいれば、人間に食べさせればいい。全部潰して逃げるということだってできる。 もしかすると、お礼に美味しいごはんを用意してくれるかもしれない。いや、きっとそうに決まってる。 そうと決まれば、早くこの素晴らしい提案を人間に伝えよう。自分は悪くない。被害者なんだって。 そうすれば、人間も同情してくれるに違いない。赤まりさたちは憎たらしい顔をしていたが、自分はこんなに美ゆっくりなんだから。 だから……だから早く止めてええええええええええ!!!! 叫びたくとも叫べない。うかつに声を出そうとすれば、先ほどのように口を痛めてしまうことに、ゲスまりさは気づいていた。 そんなまりさの懇願など知らず、お兄さんはまりさの顔に向けて野菜を向ける。 起き上がれば大根、倒れればリンゴの大盤振る舞いだ。 「ぼ、ぼうやべで……いだいのいやだぁぁぁぁ……」 この行動が5分ほど続いた頃、呆れるほど遅いながら全力で逃げていたまりさは体力の限界を迎えた。 限界まで動かした身体は痙攣気味に激しく上下し、時折少量の餡子が、口から濁った音と共に噴き出して床を汚す。 先ほどまでふてぶてしかったその顔は、りんごや大根によって何本も歯が抜けおち、顔の所々は内出餡で黒ずんでいる。 恐怖と激痛によって穴と言う穴から垂れ流した砂糖水が、フローリングの床に水たまりを作っていた。 まりさ種自慢の帽子も、初めの時より半分以上も潰れて縮んでいた。これでは鍋を逆さまにして被っているのと大差ない。 「じゃ、お野菜さんはもういらないんだね。……残念だな、すごく新鮮ですごくゆっくりできた大根さんたちだったのに……」 やれやれ…。とお兄さんはため息をついて首を振る。あざとい、さすが虐待お兄さん、あざとい。 そんな彼が握る大根とリンゴはいまだ無傷。野菜は食べるものであって、遊ぶものではない。それを忠実に守っているお兄さんであった。 「じ……じじいがだべざぜでぐれないがらでじょおおおおお!!」 「食べさせてあげようとしたのに、まりさが逃げたり口を閉じたりするからだよ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの? ……あ、それと」 何かを思い出したようにお兄さんは言葉を切ると、何の躊躇もなくゲスまりさのぐずぐずになった顔へ指先をぶち込んだ。 ずぶり。という音とともに、湿った感触がお兄さんの指の先端へ伝わってくる。 「ゆがああああああ!? いだい!! いだいいいいいいいい!!!」 「その薄汚い喋り方を今すぐ止めろ。このゲスが」 「おがおづぶれるうううううう!!」(お顔潰れるうううう!!) 「潰れたって死にはしないよ」 「やべでぬいでいだいいだいぬいでいだいやべでいだいいだいいいいい!!」 「黙れ」 「おべがいじまずごろざないでぐだざい!! おべがいじまずおべがいじばず!!!」 「動くな、死ぬぞ」 死ぬ。突如雰囲気を豹変させたお兄さんに、自分が最も恐れる単語を言われて、まりさは口をつぐむ。 危機管理能力が疎いゆっくりでも、さすがに自分の現状を理解できたようだ。 お兄さんが刺しこんだ箇所は、ゲスまりさの眉の部分であった。 指を全て頭へ埋めこむと、指先を僅かに動かして中枢餡付近に食いこませる。 「いいかい、ゲス饅頭。いまから僕の話をよく聞いてね?」 「ど、どぼじでごんなごど……」 「返事」 ぐずり…… 指を動かして、体内の餡子をかき混ぜる振動を直に伝える。 「わがりまじだ! なんでもぎぎばず! だがらごろざ…!」 「うるさい」 「ゆぐりいいいいい!!」 「もしまた生意気な口…。さっきのじじいとかね。ああいうことを言ったら、まりさの中身を全部出すからね。理解出来た?」 「ゆ……、ゆっぐりりがいじだよ…!!」 「敬語忘れてるよ」 「ゆゆゆゆゆっぐりりがいじまじだ!!!」 痛みと不快感の中で、まりさはお兄さんの言葉を待つしかなかった。 間近に見える死。まりさはそれを回避するために全意識を集中させる。 その反応に満足そうな表情のお兄さん。いつの間にか口調も元に戻っていた。 「話は簡単だ。まりさはどうしてこんな目にあってるのかな?」 「ゆ……、ば、ばりざのあがぢゃんがわるいんだよ!! わがままばがりいっで、ばりざをごばらぜるがら!!」 「答えになっていません。はいお仕置き」 お兄さんは手首を回すと、額に当たる部分の餡子をぐりぐりとかき回した。 「ゆぎゃ!? ゆびょ!? びょ! ゆっっぴょ!? ゆっぐ!?」 「次はこんなもんじゃないぞー? それとも、身体の中ぐちゃぐちゃにされたいの?」 ぐずりぐずりと体内から湧き上がる音にパニックを起こすまりさ。 それが治まるのを待って、再びおにいさんは声をかける。 体内をかき回されたことにショックを受けたまりさは、大人しくお兄さんの質問に答えるようになった。 自分たちはぎりぎりで冬を越せたが、量が足りないため人間の畑に餌を取りに来たこと。 番のれいむが死んだことで育児が面倒になり、赤ゆたちを最初から捨てる考えだったこと。 人間はゆっくりより弱いと考えていたこと。 一刻も早く手を抜いてもらいたい。そのためにまりさは偽りを騙る手間さえ惜しんでいた。 だがまりさは体験したことない責め苦に怯えながらも、自分が先ほど考えていた提案を口にする。 「じ、……おにいざん! ば、ばりざのおはなしをゆっぐりぎいでね!? ぎっどすごぐおどろぐよ!!」 「ん……お話?」 「ば、ばりざがあのおぢびじゃんだぢをどれいにぞだでであげるよ!!」(あのおちびちゃんたちを奴隷に育ててあげるよ) 餡子をこねくり回す手を止めて、お兄さんはまりさの顔を覗き込む。 かかった。ゲスまりさは心の中で笑みを浮かべながら、自分の提案を口にする。 その間お兄さんは空いていた手を顎に当て、何事か考えるそぶりを見せていた。 「…ど、どうおにいざん!? ごはんはうんうんだげだべざぜるじ、ずっぎりのあいでもできるようにざぜるよ!?」 お兄さんはずっと黙っているが、まりさには手ごたえがあったと根拠のない確信があった。 もしかすると、まりさの考えに驚いて声が出ないのかもしれない。 やがてお兄さんが口の端を釣り上げて自分を見下ろす。 そうして受け入れられる自分の未来を想像し…… 「お断りします」 「ゆ゛っ!?」 お兄さんから明確な拒絶を食らい、痛みも忘れて固まった。 ああ、よく似た親子だ。その様子を見て、お兄さんは苦笑する。 そもそも、子供を奴隷とする様なゆっくりと取引するつもりはなかった。 それにいつの間にか敬語も忘れている。だから早くお仕置きという名の虐待に移りたいのだ。 真面目に取り合うだけ時間の無駄だ。適当な嘘でお兄さんはこの話を切り上げることにした。 「あのゲス饅頭どもさ、全然使えなかったよ。ゴミだねゴミ」 「ゆ!?」 そんなはずはない。まりさは咄嗟にそう口に出そうとしたが、続くお兄さんに遮られる形となった。 「全く、言った話を聞きやしないし覚えもしない。ほとんど潰しちゃったよ」 「ど、どぼじでぞんなごどじだのおおおお!?」 「だって捨てたじゃないか。それをどう扱おうが僕の勝手だよ。もういないけど」 「じゃあばりざをゆるじでよおおおおお!!」 「ダメだよ、お野菜食べたんだし。それに、あの赤まりさたちは役に立たなかったし……もういないけど」 「ばりざのごどもがやぐにだだないわげないでじょおおおお!? ばがなの!? じぬの!?」 「まあ、そんなわけで穴埋めをゲスまりさにしてもらうことと相成りました。はい拍手」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおお!?」 「それにさ、ゲスの子供が何の役に立つの、ゴミでしょ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「ばりざばげすじゃないいいいいいいいいいい!!」 「全く。赤ん坊も言ってたよ。おかーさんを潰してまりさを助けてね、ってさ。もういないけど」 「ゆがあああああああ!! ぐぞばりざどもおおおおおおおお!!」 「いや、お前の子だし。役に立たないとことかそっくりだね。もういないけど」 「あんなのばりざのごどぼじゃないいいい!!」 「じゃあやっぱり好きにしていいんだよね。もういないけど」 「ゆっぐりじねえええええええ!!」 「一々煩いんだよこのゲス饅頭」 ここでようやくお兄さんはまりさの中に突っ込んでいた手を引いた。その手にわずかばかりのオマケを掴んでいる。 「ゆぎゃああああああ!! ば、ばりざのおべべえええええええええ!!」 「全く、敬語を使えと言っただろうに……あと、うるさい」 彼はまりさの顔から手を引き抜くと同時に手首のスナップを利かせ、掻き出す要領でまりさの眼から頬にかけて削ぎ落としていた。 ぽっかりと顔の左上半分が削られたまりさ。さぞかし甘くなったはずの餡子は、まりさが垂れ流した水分が多すぎて硬くなっていた。 お兄さんは掴んだ餡子を手の中でおにぎりの様に固めると、それを部屋の隅へ放り投げる。 「……あれは餡団子なのか、はたまた善哉の素になるのか……それが問題だ」 「ば、ばりざ! ばりざのおべべがえぜえええ!!」 その様子を見ていたまりさは餡子の転がった隅へ這いずると、どうにか自分の身体を取り返そうと舌を伸ばす。 だが、そんなことを許すほど虐待お兄さんは優しくない。 「はい、よく聞いてねゲスまりさ。じゃないと踏み潰すよ。この舌」 「ゆひぇ!?」 もう少しで届く、そう思って全神経を集中させた先端部分に、お兄さんは容赦なく足を置いた。 「まりさにはこれからしばらくの間、子供たちの分までお仕置きを受けてもらいます」 「ゆひぇひぇひぇ! ゆひゃんひゃにょほ!!」 「何言ってるかわかんないんで、こっちが勝手にしゃべるよ。それとも、踏みつぶしたらちゃんと喋れるかな?」 赤くなったり青くなったり忙しい饅頭だ。お兄さんは悪戯に足に力を込める。 残った片目が大きく見開かれた直後、すぐにまた力を抜く。安心したらまた力を込める。 お兄さんはこれを何度か繰り返し、お仕置きが嫌ならここで潰されるかと迫った。 その選択に、もはやまりさは目を伏せて諦めるしかなかった。 絶望を顔に張り付けた土饅頭を見て、ようやくお兄さんは舌から足を離す。 「じゃあ、まりさ。いよいよ本格的なお仕置きに行こうか?」 「あ、あれがおじおぎじゃないの!?」 当然です。 お兄さんはオレンジジュースを混ぜて練った小麦粉の塊をまりさの顔にくっつけて応急処置をすると、部屋を見渡して道具を探す。 「……そうだ。これにしよう」 「ゆ!? なにをずるの!? ぼうばりざをいじめないでね!? ゆっぐりざぜでね!!」 「ああ、終わったらゆっくりできるよ。……まあ、したくなくてもすることになるけど」 「おべがいだがらゆっぐりざぜでええええええええええ!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 適当に答えながら部屋の中を物色していると、ある物を発見して動きを止めた。 それは以前解体したゆっくりまりさの舌の長さを測るために使用した定規と、番いのありすの目の前で引き抜いた舌を輪切りにするために使った包丁。 そして輪切りにされた舌をありすに食べさせるために使用した爪楊枝だった。 結局ありすはまりさの舌を食べた直後に発狂し、自ら包丁を無理やり飲み込んで死んだ。 その二匹の亡骸は今、我が家のゆうかの畑の栄養としてゆっくりしていることだろう。 「そうだ、いい事を思いついた……」 お兄さんは早速それらをまとめて抱え上げると、すぐにまりさの方へ向き直る。 「ゆ!? なにずるの!? やべでね!! ゆっぐりできないがらやべでね!!」 「だから、終わったらさせてあげるって」 それだけ言うと、お兄さんは距離を取ろうとしていたまりさを髪を掴んでひっくり返す。 その拍子に帽子がとれたと騒がれても迷惑なので、素早く頭の下に敷いてやる。 潰れるとかゆっくりできないとか騒いだが、すでに直し様のない状態だったので、お兄さんは黙殺した。 「や、やべるんだぜ!! ゆっぐりできないんだぜ!! ゆっぐりじないでもどずんだぜ!?」 「うへぁ……気持ち悪」 少しの間だけとはいえ、休めたことで落ち着いたのだろうか。口調が「だぜ」に戻っていた。 それにしても、どうやらゆっくりは自分で起き上がることが難しいのは本当らしい。 横倒しならまだしも、逆さまにされると体を揺らすのも厳しいようだ。 うねうねうねうねうねうねうねうね……と、ゆっくりで言う『足』の部分が忙しなく動いている。 それはまるで、波打つ芋虫の背中のようだった。きもい、さすがゆっくり、きもい。 一瞬決意を挫かれそうになるお兄さんだが、そこは虐待魂。意を決して波打つ底辺に包丁を当てる。 残念だが、こんなにうねるようでは定規は役に立ちそうにないので放り投げる。 「なに!? なにをずるんだぜええええ!?」 自分で確認できない場所に何かをされる。その事実に、まりさは声を震わせた。 すでに片目付近がごっそりと失われているのだ。死角が増えている今、自分の状況を知ることは無理だろう。 さてと、これからは集中力が大事である。彼は素早く包丁を突き立てた。 失敗しても支障はないが、やはり自分なりに難易度を上げるのも一興だろう。 お兄さんは大きく息を吐くと、すっと深く長い一本線の切り込みをまりさの足に引いていく。 「ゆぎゃあああああ!? なに!? なにじでるんだぜええええええ!!」 「何って、足を切ってるんだよ……」 「やべでよおおお!! ばりざあるげなぐなっぢゃうでじょおおお!!」 あ、また「だぜ」口調じゃなくなった。 だがそんなことはどうでもいい。 「まりさ、これはお仕置きだ。もう二度と君が狩りをできない身体にするんだよ」 「ゆぎゃあああ!! おべがいでず! やべでぐだざい!! ばりざあるげなぐなっぢゃうううう!!」 「……当然じゃないか。その為にしているんだから」 何を言ってるんだい? お兄さんは呆れた声でまりさの足へ切り込みを入れていく。 「いやだあああああああ!! あるげなぐなるのいやだああああああ!!」 「そりゃ僕だって嫌だよ。でもまりさはお仕置きだからね。ゆっくり切られてね」 「ばりざなんいもじでないいいいい!! いだいいだいよおおおやべでくだざいいいいい!!」 「人の畑に入ったし、子供を見捨てた。それに何より饅頭風情が人間をバカにした。殺されないだけいいと思うんだね」 「ごべんなざい、もうじまぜん! にどとじまぜん!! いうごどだっでぎぎまずがらあああああ!!」 「じゃあ動くなよ。足を切り落とすのが面倒になるから」 「あじをぎらないでぐだざいいいいいいいいいい!!」 「相変わらず無茶を言う…。なら、加工所に行こうか?」 「かこうじょいやだああああああああああ!!」 「だったら、諦めるんだね」 まりさの意味のない声を聞き流して、お兄さんはさらに包丁を突き刺して切り込みを入れていく。 それは寺小屋で子供たちが画用紙を縦に切って短冊を作るのと、よく似ていた。 数分後、彼の目の前には、縦に何本もの切り込みを入れられたまりさがひっくり返っていた。 その顔は水分を出し切ったはずなのに、まだ砂糖水の涙でぐしょぐしょに濡れていた。 「ふう……」 「ゆぐっ……、こんなんじゃもうばりざゆっぐりでぎないいいいい……」 まりさは自分で見ることはできないが、どんな風にされてしまったのかは感覚でわかるのだろう。 縦に切られた足はまだ時折動くが、先ほどまでの様に元気よく波を立てることができなくなっていた。 うねる波が不規則になり、その隙間からは餡子が見え隠れする。 中身を傷をつけずに捌けたことに彼は少しばかりの達成感。 だが、これならまだ十分治癒できる程度だ。お兄さんはまりさに声をかける。 「まさか、これくらいならすぐに治るよ」 「ゆ!? ぼんど!? なおるの!?」 「もちろん。だから、もっと切らないとダメだね」 無論、絶望を与えるために。 「ごのおにいいいい!! あぐまああああ!! ゆっぐりじねえええええええええ!!」 「ははは、ありがとう。それなら、本当に悪魔みたいなことをしてあげようか?」 「ばなぜ!! もどぜ!! ばりざをだずげろおおおおおおお!!」 「さーて、次は横に細切れだー」 まりさの罵詈雑言など当然スルー。 むしろ、余計な事を言えば尚更痛い目を見ると教えてやる。 お兄さんは先ほど切り込みをを入れた傷に交わるように、今度は横に包丁の切っ先を走らせた。 縦で慣れたおかげもあり、横切りは実にスムーズに進む。 「やべでよおおおお!!! いだいよおおおおおお!!」 「止めろと言われてやめるわけないじゃないか、馬鹿なの? 死ぬの?」 「やべで!! やべでよ!! どぼじでごんばごどずるのおおおおお!?」 「何言ってるかわかんないよ。……ほい、半分」 「おにいざんだっで、いだいごどざれだらいやでじょおおおおお!!」(痛いことされたらいやでしょおおお) 「うん、嫌だね。だから人は悪い事をしないんだよ。でも、まりさは悪いゆっくりだから仕方無いの」 「おにいざんがゆるじでぐれればいいんだよおおおおおお!! ぞんなごどもわがらないの!? ばがなの!? じぬの!?」 「ええと……、………そうだあれだ。『絶対に許さない、絶対にだ』」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおお!? いだいいだいいだいだいいだい!!」 「ははは、そんな流れに運んだまりさが悪いんだよ。……よし、できた」 絶えず痛みを訴えるまりさを適当にあしらいつつ、お兄さんは順調に作業を進めていた。 そしてようやく完成したことに満足すると、額の汗をぬぐう仕草をする。 お兄さんの前にあるもの。それはいくつもの見事な正方形に区分けされたまりさの底面だった。 ちょうど、将棋盤のようなものだと思ってもらえればいいだろう。 そんな細かく切り分けられたまりさの小麦粉の皮膚は、辛うじて中身の餡子とくっついてる程度だ。 動かそうとしてもここまで(あるかわからない)神経を断裂されると、それは最早無理なこと。 人間で言うならば、足の指の根元を裂かれたようなものだ。 まりさの足も所々が個別に痙攣するだけで、底面が波打つことはもうできないだろう。 オレンジジュースでもかければ傷も塞がるだろうが、そんなことは死にそうになってからで十分である。 終わらない拷問に叫び、神経をすり減らしたことで、まりさは心身ともにズタボロになっていた。 「うーん、将棋の網目の数ってこれでよかったんだっけかな……。今度やる時はちゃんと調べておこう」 「ぼ、ぼうやべでぐだざい…。ばりざをおうぢにがえぢでぐだざい………」 「加工所に提案したら採用されないかな……。河童の棟梁とか……さすがに気に入ってくれないか……」 「おにいざん……、ばりざを……ばりざをだずげでぐざだざい」 先ほどまでは怒ったり泣いたりと忙しかったまりさも、足を刻まれたせいで抵抗する気を奪われてしまったようだった。 もう許してほしい。助けてほしい。ゲス特有の傲慢さすら、涙と共に体外へ出てしまっているような大人しさだ。 「………おいおい、何を言ってるんだ。まだまだこれからだろ?」 「ゆびぇぇぇえええええええええん!! おうぢがえるううううううう!!」 だが、それでもお兄さんは許してくれない。むしろ、ようやくギアが入ってきたところだ。 地獄は行った事がないが、生き地獄とは、もっともっと苦しいものだと思う。 そう、これからが本番である。 「さて、それじゃその足も役に立たないし、剥こうか」 「ゆ゛っっっっ!?」 剥く。それがどんな意味を持つかまりさにはわからなかったが、とにかくゆっくりできないことは間違いない。 一時は為すがままに諦めようとも考えたまりさは、必死に身体を揺らして態勢を整えようとする。 だが悲しいかな。立て続けの責め苦にまりさの体力は限界を超え、足を切られたせいで運動能力は元の半分以下。 さらには、潰れた帽子の中へ逆さまに入る形になっているせいで、妙な安定感がまりさに働いていた。 何一つ、まりさの味方になってくれる存在は無かった。 頼れるのは己のみ。その己すら、お兄さんには手も足も出ないという現実が、まりさをより追い詰める。 「おべがいだがらやべでよ!! ばりざをゆっぐりざぜでええええ!!」 「やれやれ……いい加減何度も騒がれると鬱陶しいな」 お兄さんは再びまりさの顔に手刀を打ち込むと、半ば叩きつけるようにして閉じ込めていた箱の中へと戻した。 続きの事も考えて、逆さまのままである。 箱の中でも騒ぎ続けるまりさだが、箱の中に声がたまるので幾分か聞こえてくる声は小さくなった。 相変わらず甲高いが、それでも先ほどに比べれば随分マシである。 「さ、まりさ。覚悟はできたかい?」 手を振り払って餡子を床にまき散らしながら、お兄さんは親しみをこめた三日月型の笑顔を向けた。 後編2 まりさ一家 へ続きます ============================================ あとがき 長すぎました……。 あまりにもやりたかったことを試して行ったら伸びる伸びる……。 お兄さんの独壇場で、まりさが頑丈すぎました……。 wikiなどで感想を下さった方、こうして目を通して下さった方、ありがとうございました。 次回で完結します。 正直長いうえにやり過ぎだとは思いますが、最後は簡潔に済ませたいと思っています。
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これは、『育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 中編』の続きです。 それとすみません、終われませんでした。次回で完結します。 ゲスまりさ注意 そんなまりさを制裁もの 子ゆっくりは……今回お休みです お兄さんが前面に出すぎ ストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり それでも構わないという方はどうぞ下へ 育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 後編1 『まりさサイド』 「みんにゃ! これきゃらはおにーしゃんとおねーしゃんのいうこちょをきかなきゃだみぇだよ!!」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」」」」」 姉まりさの言葉に返事を返す妹まりさたち。 本当に理解しているか怪しいが、それでも姉妹を引っ張れる存在がいるだけでだいぶ違う。 自分たちに勉強を教えてほしい。その姉まりさのお願いを快諾したお兄さんは、同居人であるゆっくりゆうかに視線を移す。 「……ゆうか、赤まりさたちを畑に連れて行ってあげてくれ」 「……いいの、おにいさん? きっとこいつらはたけをあらすよ」 今回の事はすべて聞いているものの、やはり野生のゆっくりを畑にいれることには抵抗があるらしいゆうか。 「庭の隅にクズ野菜を埋めてた畑があったから、そこなら荒らされても大丈夫だよ。それにもし言うことを聞かなかったら………」 一気にしゃべるトーンを落としたお兄さんは、ゆうかにだけ聞こえるように対策を伝える。 本当に大丈夫なのか。彼の話を聞いても半信半疑のゆうかだが、家主の願いを無碍にするわけにもいかない。 渋々ながらそれを了承すると、箱から出された赤まりさたちを率いて台所を後にする。 「じゃあ、おしえてあげる。ちゃんとおにいさんにおれいをいってね」 「「「「「おにーしゃん、ありがちょね!!!!」」」」」 ぺそぺそと気の抜ける音を立てて、ゆうかを追いかける赤まりさたち。 お兄さんに治療してもらった姉まりさもそれに追随するが、足が潰れたままなので跳ねることができず、一回分の這いずれる距離も妹たちの半分程度だ。 また片目も失明しているせいで、時折進行方向が姉妹たちとずれてしまい、追いかけることもままならない。 するとそれに気づいた何匹かの妹が、姉の体を気遣って時折振り向いたり立ち止まって追いつくのを待っている様がみられた。 (………姉含めて6個か。結構優秀な赤ゆだな) 一度も振り返ろうとしない個体と、姉を気遣う個体を見極めるお兄さん。 その二種の距離がはっきりと分かれたところを見計らうと、玄関に向かう途中のゆうかを止めて、姉まりさとくっついていた妹たちを持ち上げた。 「大丈夫かい?」 「ゆぅ……、あんよしゃんがうごいちぇくりぇにゃいの……それにおみぇみぇも」 「そりゃあねえ、どっちも君のお母さんにぺちゃんこに潰されていたからね。けれどそのうち治せるようにしてあげるから、少しだけ我慢しててね」 「「「おねーしゃんをなおしちゃげちぇね?」」」 「わかっているさ、そのためにはまだ準備がいるからね。お姉ちゃんはそれまで我慢してね」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! おにーしゃんありがちょね!!」 お兄さんの言葉に素直に返事する赤まりさ姉妹。 無論大ウソである。彼の技量なら一日で治すことも可能である。 ただ、彼は楽しみを一度に消費したくなかったのだ。 そもそも、出たらめを形にしたような存在がゆっくりだ。真面目に治すだけ損である。 その間に姉まりさと気遣っていた姉妹にだけ、お兄さんは識別できるようこっそりと印を付ける。 目的の赤ゆたちに印をつけ終わると、お兄さんはゆうかを左手に、赤まりさ達を右手に乗せた。 「じゃ、今日はお兄さんが運んであげよう。ゆうかと他のまりさはお兄さんの後に付いてきてね」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!!」」」」」 「ゆー、おそらをとんでるみちゃい~♪」 いまはまだ、玄関から出る際に放置していたゲスまりさと赤まりさたちを会わせるわけにはいかない。 ならば別の出口を使えばいいと言われそうだが、あくまでも家への出入りは玄関を使うということを理解させる意味もあるからだ。 こうして母と娘たちは、同じ屋根の下にいながら互いの存在に気付かない生活を送ることとなる。それを親子が知るのは、もう少しだけ先のことだ。 「それじゃゆうか。後はよろしくね」 「「「おにーしゃん、ありがちょう!! ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」 「はいはい、ゆっくりしていってね」 畑についたお兄さんが全員を降ろしてゆうかにお願いすると、彼女は頷いた仕草を見せてくれた。 それを確認して赤まりさたちに適当な声をかけると、お兄さんはすぐに畑を後にした。 後はゆっくりゆうかのドS(スパルタ)授業が行われるだろう。 もし赤まりさ達にゲスが出れば、容赦なくお仕置きをしていいと伝えてある。 姉まりさを気遣える個体を選んだのは、この時点で仲間意識の強い個体を見極めるため。 特にまりさ種の場合、姉妹でも仲間意識が弱ければすぐに裏切ってしまう。 だが赤ゆっくりならば、まだ矯正が間に合うことも少なくない。 印を得られなかった個体への手本として、お兄さんは印のある姉たちを利用する考えであった。 その狙いが外れた場合、つまり印のない妹の矯正が不可能だと判断した時は、そいつらを徹底的に虐待して賢い個体への見せしめに使えばよい。 試せるものは何でも試す。このようなチャレンジ精神が、日々新たな虐待を生み出すのだ。そうお兄さんは信じていた。 「さて、それじゃいよいよ矯正の効かないゲスに移りますか……」 お兄さんは家に戻ると、今度はゲスまりさの箱を抱え、お馴染みの虐待部屋へと移動した。 そこに転がるは虐待お兄さんたちの必需品となる様々な道具たち。 かぴかぴになった餡子がいまだこびり付くスプーン。 たっぷりと砂糖水が染み込んだ釘バット。 何度も使用されて硬さを失ってしまったハリセン。 饅頭を焼くためだけに準備された鉄板。 赤ゆの足を痛めつけるための定規等など…。 お子様の文房具から本格的な拷問具まで、品ぞろえはばっちりだ。 ゆにゃゆにゃ、と幸せそうに居眠りしているまりさ。いつの間に気絶から睡眠へと移行したのだろうか。相も変わらず図太いナマモノである。 やれやれとお兄さんは苦笑した次の瞬間、彼は抱えていた箱を思い切り部屋の床へと叩き落とした。 ッッガァン!!!! 「ゆぎゃあああああああ!?」 完全な防音仕様の部屋の中にだけ響く衝撃音とまりさの悲鳴。 本気で落としたのにヒビ一つ入らない加工所特製の箱を見て、満足そうなお兄さん。 相変わらずいい仕事をしてくれる職員の皆様だ。 「ゆっ!? なに!? なんなんだぜ!?」 「やあ、ゲス饅頭。ゆっくりしていってね」 目が覚めたばかりで状況を把握していないまりさに対し、お兄さんは爽やかな笑顔で毒を吐いた。 「ゆ!? ゆっくりしていってね!! ……ゆ!? うごけないんだぜ!?」 「そりゃあね、箱の中にいるんだから仕方ないじゃない?」 「ゆ!! じじいがまりささまを………!」 そこまで言って、まりさはお兄さんの顔を見て凍りついた。 目の前の人間の顔を思い出したのか、次第に餡子の詰まった身体が震えだす。 「どうしたんだい?」 「な……なんでもないんだぜ……です」 ゆっくりが隠し事などできるはずもないが、お兄さんはあえて気付かないふりを続ける。 「まあ、別にいいよ。これからまりさには、罰を受けてもらうから」 「ゆ!?」 罰。その言葉に敏感に反応するまりさ。 餡子脳の饅頭でも、その言葉の意味はわかる。 「な、なんでまりさがそんなものをうけなきゃいけないんだぜ!?」 「だってまりさは野菜を食べたんでしょ? さっき言ったよね」 「ゆ……!? ゆ、そ、そうだよ!! まりさはしょうじきにはなしたよ!! だからおにいさんはおやさいさんをよこすんだぜ!!」 「ん? …………ああ。そういえば約束したっけ。ちょっと待ってな」 まりさが言った内容とは、彼の質問に対して正直に話せばお兄さんが野菜をあげるというものだった。 自分に都合の悪いこと以外は、わりと記憶力のいい餡子脳。 愛護派でもない限り、饅頭との約束なんて守る必要がないというのが、一般的である。 とはいえ、約束は約束だ。お兄さんは台所から約束のりんごと大根と人参を持って来る。 もちろん、彼がそのまま言うことを聞くつもりは全くないのだが……。 「おいしそうなやさいさんなんだぜ!! はやくここからだしてまりささまにおやさいをたべさせるんだぜ!!」 目の前の野菜に意識を持っていかれたまりさは、すぐにお兄さんへの恐怖を忘れて命令する。 だが、もはやその程度など些細なこと。 おにいさんは無言でまりさの髪を引っ張ると、言われたとおり箱の外へ放り投げる。 ゆべっ、と悲鳴をあげて転がるまりさだが、今はそれよりも目の前の食べ物だ。 すぐに起き上がると、お兄さんの持つ野菜へと飛び跳ねて食いつこうと飛び跳ねる。 だから、まりさは先ほど見たお兄さんの顔が、いまどんな表情をしているのか知ることができなかった。 もし気づいていたとしても、その未来は変わらなかったではあろうが……。 「はやく!! はやくまりささまにおやさいをよこすんだぜ!! たべさせるんだぜ!!」 「…………そう。それじゃ、お望みどおり食べさせてあげる………よ!」 めごりっ!! 合図も何もない。全くの不意打ちだった。 よ! の部分で、お兄さんはりんごをまりさの顔面へと投げつけたのだ。 「ゆべあぁぁぁぁぁっ!!」 りんごを与えられたまりさに待っていたのは、むーしゃむーしゃ♪ ではなく、しあわせー♪ でもなく、顔の潰れるような激痛。 食べ物といえど人間の力によって放たれた固形物は、ゆっくりにとって驚異の威力を発揮する。 瑞々しいリンゴは、音を立ててまりさの鼻に当たる部分にめり込んだ。 「ゆべあ!? ぶあああ!? ば、ばりざのおがお!? いだいいだいいだいいいいいいいい!!」 「あぁ、まりさ。ダメだよ、ちゃんと受け止めなきゃ………」 突然の痛みにのたうつまりさ。 対するお兄さんは、まるで子供の粗相を優しく咎めるような口調。 「な…、なにずるんだぜええ!! じじいはまりざざまにおやざいをよごぜえええ!!」 「あげてるじゃないか。まりさがちゃんと受け止めないからだよ」 手に抱えた人参と大根を持ち上げながら、お兄さんは当然とばかりに答える。 「『食べさせろ』って言われたからね。僕がしっかりお口に運んであげるよ」 お兄さんの回答に、ゲスまりさはそれがどういう意味を持つか理解した。 もともと狡賢い種族だ。言葉の裏に含まれる意図に気づくのにも時間はかからなかった。 「ゆ、ゆっぐりじねええええええ!!」 「あ、大根食べる?」 ばぢん!! 一杯食わされた。ハメられた。ゲスまりさはその事実に激怒し、彼に食ってかかる。 対するお兄さんは握っていた大根で、熱烈に飛び込んできたまりさの顔面をクリーンヒット。まりさの話なんて聞いちゃいない。 カウンターの衝撃に、身体全体を回転させて吹っ飛ぶまりさ。部屋の壁に顔をぶつけ、その際に小麦粉の皮膚が一部削れる。 「ゆべがああああああ!?」 「ほら、はやく食べなよ。ちゃんと口を開けるんだ」 「!? …ま……まっで! まっでええええ!!」 「はい、あーー……ん!」 文字通り身を削られる痛みに泣き叫ぶゲスまりさ。 このままではいけない。本能で一度態勢を整えようと身を捩じらせる。 だが、あくまでもお兄さんは自分のペースを崩さない。 頬を打たれた拍子にまりさの顔から転がり落ちたりんごを拾い、今度は悲鳴を上げる口に叩きつけた。 餡子脳では反応していたが、痛みに動きが鈍っていたゲスまりさは結局、為す術なくその直撃を受ける。 みぢりっ……! 歯茎の裂ける音とともに、ゲスまりさの口から液状餡子にまみれた前歯が何本か転がり落ちた。 「びゃぎゃ!? びゃりびゃにょびゃが!?」(歯が!? まりさの歯が!?) 「ああもう……、落としちゃダメだって……の!」 まりさの悲鳴は、一回ごとに大きくなるにつれて、意味が聞き取りづらくなっていく。 しかし、お兄さんはそんなことを気にしない。再び大根を食べさせようとまりさに近づいた。 「ゆひっ…!? ゆびぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁっ!! ぐるな!! ぐるなあああああああ!! ……ゆごびゅっ!?」 「来てほしくなかったら、逃げるんだ。でもそうなると野菜は食べられないよ?」 最初は野菜に気を取られていたまりさも、ここまで来るとそれどころではない。 いや、そもそもまりさが意識を食べ物に向けることを許されていた時間は一分も無かった。 ゆっくりにとっては広い部屋を、必死に這いずって逃げ回る。 しかし、人間にとってみれば本当に小部屋である。まりさがどんなに逃げたと思っても、五歩もかからず追いつける程度の。 また隠れて休もうにも、まりさが身をひそめるような隙間はどこにもなかった。そして追いつかれれば、また大根とリンゴ。 必死に距離を取ろうと逃げる間。ゲスまりさの脳裏に浮かんだのは、恐怖だった。 このゲスまりさは、人間というものが自分たちにとってゆっくりできない存在であることを知っていた。 知ってはいたが、それは鈍くさい他のゆっくりだからそんな目にあうのだと考えていた。 狩りに秀でて賢い自分がやれば、人間なんてすぐに倒してしまえる。いや、それよりも下僕にして利用しよう。そう企んでいた。 だが現実はどうだ。まんまと人間の罠にかかり、なまじ賢い分人間との実力差を理解してしまった。 こんなことになるなら、最初から自分の娘たちを交換道具として扱えばよかった。 元々春になれば捨てるつもりだった子供だ。夫のれいむもいない今、不要な子供をまりさが育てる理由もない。 そうだ、全てはあのガキどもが悪いんだ。あいつらがいたから人間の里へ来てしまったのだ。 あのゴミどもを自分が人間のための奴隷として躾ると提案すれば、喜んで受け入れてくれるだろう。 少しは自分の餡子を受け継いでいるのだから、物覚えはいいはずだ。 言うことを聞かないやつがいれば、人間に食べさせればいい。全部潰して逃げるということだってできる。 もしかすると、お礼に美味しいごはんを用意してくれるかもしれない。いや、きっとそうに決まってる。 そうと決まれば、早くこの素晴らしい提案を人間に伝えよう。自分は悪くない。被害者なんだって。 そうすれば、人間も同情してくれるに違いない。赤まりさたちは憎たらしい顔をしていたが、自分はこんなに美ゆっくりなんだから。 だから……だから早く止めてええええええええええ!!!! 叫びたくとも叫べない。うかつに声を出そうとすれば、先ほどのように口を痛めてしまうことに、ゲスまりさは気づいていた。 そんなまりさの懇願など知らず、お兄さんはまりさの顔に向けて野菜を向ける。 起き上がれば大根、倒れればリンゴの大盤振る舞いだ。 「ぼ、ぼうやべで……いだいのいやだぁぁぁぁ……」 この行動が5分ほど続いた頃、呆れるほど遅いながら全力で逃げていたまりさは体力の限界を迎えた。 限界まで動かした身体は痙攣気味に激しく上下し、時折少量の餡子が、口から濁った音と共に噴き出して床を汚す。 先ほどまでふてぶてしかったその顔は、りんごや大根によって何本も歯が抜けおち、顔の所々は内出餡で黒ずんでいる。 恐怖と激痛によって穴と言う穴から垂れ流した砂糖水が、フローリングの床に水たまりを作っていた。 まりさ種自慢の帽子も、初めの時より半分以上も潰れて縮んでいた。これでは鍋を逆さまにして被っているのと大差ない。 「じゃ、お野菜さんはもういらないんだね。……残念だな、すごく新鮮ですごくゆっくりできた大根さんたちだったのに……」 やれやれ…。とお兄さんはため息をついて首を振る。あざとい、さすが虐待お兄さん、あざとい。 そんな彼が握る大根とリンゴはいまだ無傷。野菜は食べるものであって、遊ぶものではない。それを忠実に守っているお兄さんであった。 「じ……じじいがだべざぜでぐれないがらでじょおおおおお!!」 「食べさせてあげようとしたのに、まりさが逃げたり口を閉じたりするからだよ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの? ……あ、それと」 何かを思い出したようにお兄さんは言葉を切ると、何の躊躇もなくゲスまりさのぐずぐずになった顔へ指先をぶち込んだ。 ずぶり。という音とともに、湿った感触がお兄さんの指の先端へ伝わってくる。 「ゆがああああああ!? いだい!! いだいいいいいいいい!!!」 「その薄汚い喋り方を今すぐ止めろ。このゲスが」 「おがおづぶれるうううううう!!」(お顔潰れるうううう!!) 「潰れたって死にはしないよ」 「やべでぬいでいだいいだいぬいでいだいやべでいだいいだいいいいい!!」 「黙れ」 「おべがいじまずごろざないでぐだざい!! おべがいじまずおべがいじばず!!!」 「動くな、死ぬぞ」 死ぬ。突如雰囲気を豹変させたお兄さんに、自分が最も恐れる単語を言われて、まりさは口をつぐむ。 危機管理能力が疎いゆっくりでも、さすがに自分の現状を理解できたようだ。 お兄さんが刺しこんだ箇所は、ゲスまりさの眉の部分であった。 指を全て頭へ埋めこむと、指先を僅かに動かして中枢餡付近に食いこませる。 「いいかい、ゲス饅頭。いまから僕の話をよく聞いてね?」 「ど、どぼじでごんなごど……」 「返事」 ぐずり…… 指を動かして、体内の餡子をかき混ぜる振動を直に伝える。 「わがりまじだ! なんでもぎぎばず! だがらごろざ…!」 「うるさい」 「ゆぐりいいいいい!!」 「もしまた生意気な口…。さっきのじじいとかね。ああいうことを言ったら、まりさの中身を全部出すからね。理解出来た?」 「ゆ……、ゆっぐりりがいじだよ…!!」 「敬語忘れてるよ」 「ゆゆゆゆゆっぐりりがいじまじだ!!!」 痛みと不快感の中で、まりさはお兄さんの言葉を待つしかなかった。 間近に見える死。まりさはそれを回避するために全意識を集中させる。 その反応に満足そうな表情のお兄さん。いつの間にか口調も元に戻っていた。 「話は簡単だ。まりさはどうしてこんな目にあってるのかな?」 「ゆ……、ば、ばりざのあがぢゃんがわるいんだよ!! わがままばがりいっで、ばりざをごばらぜるがら!!」 「答えになっていません。はいお仕置き」 お兄さんは手首を回すと、額に当たる部分の餡子をぐりぐりとかき回した。 「ゆぎゃ!? ゆびょ!? びょ! ゆっっぴょ!? ゆっぐ!?」 「次はこんなもんじゃないぞー? それとも、身体の中ぐちゃぐちゃにされたいの?」 ぐずりぐずりと体内から湧き上がる音にパニックを起こすまりさ。 それが治まるのを待って、再びおにいさんは声をかける。 体内をかき回されたことにショックを受けたまりさは、大人しくお兄さんの質問に答えるようになった。 自分たちはぎりぎりで冬を越せたが、量が足りないため人間の畑に餌を取りに来たこと。 番のれいむが死んだことで育児が面倒になり、赤ゆたちを最初から捨てる考えだったこと。 人間はゆっくりより弱いと考えていたこと。 一刻も早く手を抜いてもらいたい。そのためにまりさは偽りを騙る手間さえ惜しんでいた。 だがまりさは体験したことない責め苦に怯えながらも、自分が先ほど考えていた提案を口にする。 「じ、……おにいざん! ば、ばりざのおはなしをゆっぐりぎいでね!? ぎっどすごぐおどろぐよ!!」 「ん……お話?」 「ば、ばりざがあのおぢびじゃんだぢをどれいにぞだでであげるよ!!」(あのおちびちゃんたちを奴隷に育ててあげるよ) 餡子をこねくり回す手を止めて、お兄さんはまりさの顔を覗き込む。 かかった。ゲスまりさは心の中で笑みを浮かべながら、自分の提案を口にする。 その間お兄さんは空いていた手を顎に当て、何事か考えるそぶりを見せていた。 「…ど、どうおにいざん!? ごはんはうんうんだげだべざぜるじ、ずっぎりのあいでもできるようにざぜるよ!?」 お兄さんはずっと黙っているが、まりさには手ごたえがあったと根拠のない確信があった。 もしかすると、まりさの考えに驚いて声が出ないのかもしれない。 やがてお兄さんが口の端を釣り上げて自分を見下ろす。 そうして受け入れられる自分の未来を想像し…… 「お断りします」 「ゆ゛っ!?」 お兄さんから明確な拒絶を食らい、痛みも忘れて固まった。 ああ、よく似た親子だ。その様子を見て、お兄さんは苦笑する。 そもそも、子供を奴隷とする様なゆっくりと取引するつもりはなかった。 それにいつの間にか敬語も忘れている。だから早くお仕置きという名の虐待に移りたいのだ。 真面目に取り合うだけ時間の無駄だ。適当な嘘でお兄さんはこの話を切り上げることにした。 「あのゲス饅頭どもさ、全然使えなかったよ。ゴミだねゴミ」 「ゆ!?」 そんなはずはない。まりさは咄嗟にそう口に出そうとしたが、続くお兄さんに遮られる形となった。 「全く、言った話を聞きやしないし覚えもしない。ほとんど潰しちゃったよ」 「ど、どぼじでぞんなごどじだのおおおお!?」 「だって捨てたじゃないか。それをどう扱おうが僕の勝手だよ。もういないけど」 「じゃあばりざをゆるじでよおおおおお!!」 「ダメだよ、お野菜食べたんだし。それに、あの赤まりさたちは役に立たなかったし……もういないけど」 「ばりざのごどもがやぐにだだないわげないでじょおおおお!? ばがなの!? じぬの!?」 「まあ、そんなわけで穴埋めをゲスまりさにしてもらうことと相成りました。はい拍手」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおお!?」 「それにさ、ゲスの子供が何の役に立つの、ゴミでしょ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「ばりざばげすじゃないいいいいいいいいいい!!」 「全く。赤ん坊も言ってたよ。おかーさんを潰してまりさを助けてね、ってさ。もういないけど」 「ゆがあああああああ!! ぐぞばりざどもおおおおおおおお!!」 「いや、お前の子だし。役に立たないとことかそっくりだね。もういないけど」 「あんなのばりざのごどぼじゃないいいい!!」 「じゃあやっぱり好きにしていいんだよね。もういないけど」 「ゆっぐりじねえええええええ!!」 「一々煩いんだよこのゲス饅頭」 ここでようやくお兄さんはまりさの中に突っ込んでいた手を引いた。その手にわずかばかりのオマケを掴んでいる。 「ゆぎゃああああああ!! ば、ばりざのおべべえええええええええ!!」 「全く、敬語を使えと言っただろうに……あと、うるさい」 彼はまりさの顔から手を引き抜くと同時に手首のスナップを利かせ、掻き出す要領でまりさの眼から頬にかけて削ぎ落としていた。 ぽっかりと顔の左上半分が削られたまりさ。さぞかし甘くなったはずの餡子は、まりさが垂れ流した水分が多すぎて硬くなっていた。 お兄さんは掴んだ餡子を手の中でおにぎりの様に固めると、それを部屋の隅へ放り投げる。 「……あれは餡団子なのか、はたまた善哉の素になるのか……それが問題だ」 「ば、ばりざ! ばりざのおべべがえぜえええ!!」 その様子を見ていたまりさは餡子の転がった隅へ這いずると、どうにか自分の身体を取り返そうと舌を伸ばす。 だが、そんなことを許すほど虐待お兄さんは優しくない。 「はい、よく聞いてねゲスまりさ。じゃないと踏み潰すよ。この舌」 「ゆひぇ!?」 もう少しで届く、そう思って全神経を集中させた先端部分に、お兄さんは容赦なく足を置いた。 「まりさにはこれからしばらくの間、子供たちの分までお仕置きを受けてもらいます」 「ゆひぇひぇひぇ! ゆひゃんひゃにょほ!!」 「何言ってるかわかんないんで、こっちが勝手にしゃべるよ。それとも、踏みつぶしたらちゃんと喋れるかな?」 赤くなったり青くなったり忙しい饅頭だ。お兄さんは悪戯に足に力を込める。 残った片目が大きく見開かれた直後、すぐにまた力を抜く。安心したらまた力を込める。 お兄さんはこれを何度か繰り返し、お仕置きが嫌ならここで潰されるかと迫った。 その選択に、もはやまりさは目を伏せて諦めるしかなかった。 絶望を顔に張り付けた土饅頭を見て、ようやくお兄さんは舌から足を離す。 「じゃあ、まりさ。いよいよ本格的なお仕置きに行こうか?」 「あ、あれがおじおぎじゃないの!?」 当然です。 お兄さんはオレンジジュースを混ぜて練った小麦粉の塊をまりさの顔にくっつけて応急処置をすると、部屋を見渡して道具を探す。 「……そうだ。これにしよう」 「ゆ!? なにをずるの!? ぼうばりざをいじめないでね!? ゆっぐりざぜでね!!」 「ああ、終わったらゆっくりできるよ。……まあ、したくなくてもすることになるけど」 「おべがいだがらゆっぐりざぜでええええええええええ!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 適当に答えながら部屋の中を物色していると、ある物を発見して動きを止めた。 それは以前解体したゆっくりまりさの舌の長さを測るために使用した定規と、番いのありすの目の前で引き抜いた舌を輪切りにするために使った包丁。 そして輪切りにされた舌をありすに食べさせるために使用した爪楊枝だった。 結局ありすはまりさの舌を食べた直後に発狂し、自ら包丁を無理やり飲み込んで死んだ。 その二匹の亡骸は今、我が家のゆうかの畑の栄養としてゆっくりしていることだろう。 「そうだ、いい事を思いついた……」 お兄さんは早速それらをまとめて抱え上げると、すぐにまりさの方へ向き直る。 「ゆ!? なにずるの!? やべでね!! ゆっぐりできないがらやべでね!!」 「だから、終わったらさせてあげるって」 それだけ言うと、お兄さんは距離を取ろうとしていたまりさを髪を掴んでひっくり返す。 その拍子に帽子がとれたと騒がれても迷惑なので、素早く頭の下に敷いてやる。 潰れるとかゆっくりできないとか騒いだが、すでに直し様のない状態だったので、お兄さんは黙殺した。 「や、やべるんだぜ!! ゆっぐりできないんだぜ!! ゆっぐりじないでもどずんだぜ!?」 「うへぁ……気持ち悪」 少しの間だけとはいえ、休めたことで落ち着いたのだろうか。口調が「だぜ」に戻っていた。 それにしても、どうやらゆっくりは自分で起き上がることが難しいのは本当らしい。 横倒しならまだしも、逆さまにされると体を揺らすのも厳しいようだ。 うねうねうねうねうねうねうねうね……と、ゆっくりで言う『足』の部分が忙しなく動いている。 それはまるで、波打つ芋虫の背中のようだった。きもい、さすがゆっくり、きもい。 一瞬決意を挫かれそうになるお兄さんだが、そこは虐待魂。意を決して波打つ底辺に包丁を当てる。 残念だが、こんなにうねるようでは定規は役に立ちそうにないので放り投げる。 「なに!? なにをずるんだぜええええ!?」 自分で確認できない場所に何かをされる。その事実に、まりさは声を震わせた。 すでに片目付近がごっそりと失われているのだ。死角が増えている今、自分の状況を知ることは無理だろう。 さてと、これからは集中力が大事である。彼は素早く包丁を突き立てた。 失敗しても支障はないが、やはり自分なりに難易度を上げるのも一興だろう。 お兄さんは大きく息を吐くと、すっと深く長い一本線の切り込みをまりさの足に引いていく。 「ゆぎゃあああああ!? なに!? なにじでるんだぜええええええ!!」 「何って、足を切ってるんだよ……」 「やべでよおおお!! ばりざあるげなぐなっぢゃうでじょおおお!!」 あ、また「だぜ」口調じゃなくなった。 だがそんなことはどうでもいい。 「まりさ、これはお仕置きだ。もう二度と君が狩りをできない身体にするんだよ」 「ゆぎゃあああ!! おべがいでず! やべでぐだざい!! ばりざあるげなぐなっぢゃうううう!!」 「……当然じゃないか。その為にしているんだから」 何を言ってるんだい? お兄さんは呆れた声でまりさの足へ切り込みを入れていく。 「いやだあああああああ!! あるげなぐなるのいやだああああああ!!」 「そりゃ僕だって嫌だよ。でもまりさはお仕置きだからね。ゆっくり切られてね」 「ばりざなんいもじでないいいいい!! いだいいだいよおおおやべでくだざいいいいい!!」 「人の畑に入ったし、子供を見捨てた。それに何より饅頭風情が人間をバカにした。殺されないだけいいと思うんだね」 「ごべんなざい、もうじまぜん! にどとじまぜん!! いうごどだっでぎぎまずがらあああああ!!」 「じゃあ動くなよ。足を切り落とすのが面倒になるから」 「あじをぎらないでぐだざいいいいいいいいいい!!」 「相変わらず無茶を言う…。なら、加工所に行こうか?」 「かこうじょいやだああああああああああ!!」 「だったら、諦めるんだね」 まりさの意味のない声を聞き流して、お兄さんはさらに包丁を突き刺して切り込みを入れていく。 それは寺小屋で子供たちが画用紙を縦に切って短冊を作るのと、よく似ていた。 数分後、彼の目の前には、縦に何本もの切り込みを入れられたまりさがひっくり返っていた。 その顔は水分を出し切ったはずなのに、まだ砂糖水の涙でぐしょぐしょに濡れていた。 「ふう……」 「ゆぐっ……、こんなんじゃもうばりざゆっぐりでぎないいいいい……」 まりさは自分で見ることはできないが、どんな風にされてしまったのかは感覚でわかるのだろう。 縦に切られた足はまだ時折動くが、先ほどまでの様に元気よく波を立てることができなくなっていた。 うねる波が不規則になり、その隙間からは餡子が見え隠れする。 中身を傷をつけずに捌けたことに彼は少しばかりの達成感。 だが、これならまだ十分治癒できる程度だ。お兄さんはまりさに声をかける。 「まさか、これくらいならすぐに治るよ」 「ゆ!? ぼんど!? なおるの!?」 「もちろん。だから、もっと切らないとダメだね」 無論、絶望を与えるために。 「ごのおにいいいい!! あぐまああああ!! ゆっぐりじねえええええええええ!!」 「ははは、ありがとう。それなら、本当に悪魔みたいなことをしてあげようか?」 「ばなぜ!! もどぜ!! ばりざをだずげろおおおおおおお!!」 「さーて、次は横に細切れだー」 まりさの罵詈雑言など当然スルー。 むしろ、余計な事を言えば尚更痛い目を見ると教えてやる。 お兄さんは先ほど切り込みをを入れた傷に交わるように、今度は横に包丁の切っ先を走らせた。 縦で慣れたおかげもあり、横切りは実にスムーズに進む。 「やべでよおおおお!!! いだいよおおおおおお!!」 「止めろと言われてやめるわけないじゃないか、馬鹿なの? 死ぬの?」 「やべで!! やべでよ!! どぼじでごんばごどずるのおおおおお!?」 「何言ってるかわかんないよ。……ほい、半分」 「おにいざんだっで、いだいごどざれだらいやでじょおおおおお!!」(痛いことされたらいやでしょおおお) 「うん、嫌だね。だから人は悪い事をしないんだよ。でも、まりさは悪いゆっくりだから仕方無いの」 「おにいざんがゆるじでぐれればいいんだよおおおおおお!! ぞんなごどもわがらないの!? ばがなの!? じぬの!?」 「ええと……、………そうだあれだ。『絶対に許さない、絶対にだ』」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおお!? いだいいだいいだいだいいだい!!」 「ははは、そんな流れに運んだまりさが悪いんだよ。……よし、できた」 絶えず痛みを訴えるまりさを適当にあしらいつつ、お兄さんは順調に作業を進めていた。 そしてようやく完成したことに満足すると、額の汗をぬぐう仕草をする。 お兄さんの前にあるもの。それはいくつもの見事な正方形に区分けされたまりさの底面だった。 ちょうど、将棋盤のようなものだと思ってもらえればいいだろう。 そんな細かく切り分けられたまりさの小麦粉の皮膚は、辛うじて中身の餡子とくっついてる程度だ。 動かそうとしてもここまで(あるかわからない)神経を断裂されると、それは最早無理なこと。 人間で言うならば、足の指の根元を裂かれたようなものだ。 まりさの足も所々が個別に痙攣するだけで、底面が波打つことはもうできないだろう。 オレンジジュースでもかければ傷も塞がるだろうが、そんなことは死にそうになってからで十分である。 終わらない拷問に叫び、神経をすり減らしたことで、まりさは心身ともにズタボロになっていた。 「うーん、将棋の網目の数ってこれでよかったんだっけかな……。今度やる時はちゃんと調べておこう」 「ぼ、ぼうやべでぐだざい…。ばりざをおうぢにがえぢでぐだざい………」 「加工所に提案したら採用されないかな……。河童の棟梁とか……さすがに気に入ってくれないか……」 「おにいざん……、ばりざを……ばりざをだずげでぐざだざい」 先ほどまでは怒ったり泣いたりと忙しかったまりさも、足を刻まれたせいで抵抗する気を奪われてしまったようだった。 もう許してほしい。助けてほしい。ゲス特有の傲慢さすら、涙と共に体外へ出てしまっているような大人しさだ。 「………おいおい、何を言ってるんだ。まだまだこれからだろ?」 「ゆびぇぇぇえええええええええん!! おうぢがえるううううううう!!」 だが、それでもお兄さんは許してくれない。むしろ、ようやくギアが入ってきたところだ。 地獄は行った事がないが、生き地獄とは、もっともっと苦しいものだと思う。 そう、これからが本番である。 「さて、それじゃその足も役に立たないし、剥こうか」 「ゆ゛っっっっ!?」 剥く。それがどんな意味を持つかまりさにはわからなかったが、とにかくゆっくりできないことは間違いない。 一時は為すがままに諦めようとも考えたまりさは、必死に身体を揺らして態勢を整えようとする。 だが悲しいかな。立て続けの責め苦にまりさの体力は限界を超え、足を切られたせいで運動能力は元の半分以下。 さらには、潰れた帽子の中へ逆さまに入る形になっているせいで、妙な安定感がまりさに働いていた。 何一つ、まりさの味方になってくれる存在は無かった。 頼れるのは己のみ。その己すら、お兄さんには手も足も出ないという現実が、まりさをより追い詰める。 「おべがいだがらやべでよ!! ばりざをゆっぐりざぜでええええ!!」 「やれやれ……いい加減何度も騒がれると鬱陶しいな」 お兄さんは再びまりさの顔に手刀を打ち込むと、半ば叩きつけるようにして閉じ込めていた箱の中へと戻した。 続きの事も考えて、逆さまのままである。 箱の中でも騒ぎ続けるまりさだが、箱の中に声がたまるので幾分か聞こえてくる声は小さくなった。 相変わらず甲高いが、それでも先ほどに比べれば随分マシである。 「さ、まりさ。覚悟はできたかい?」 手を振り払って餡子を床にまき散らしながら、お兄さんは親しみをこめた三日月型の笑顔を向けた。 後編2 まりさ一家 へ続きます ============================================ あとがき 長すぎました……。 あまりにもやりたかったことを試して行ったら伸びる伸びる……。 お兄さんの独壇場で、まりさが頑丈すぎました……。 wikiなどで感想を下さった方、こうして目を通して下さった方、ありがとうございました。 次回で完結します。 正直長いうえにやり過ぎだとは思いますが、最後は簡潔に済ませたいと思っています。
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ゆっくりいじめ系1996 育児放棄?そんなもんじゃないんだぜ!! 前編よりつづく 今回は赤ゆを言葉で苦しめます ゲスまりさは今回出番なし お兄さんが月気取りでストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり 後編のための過程作品です それでも構わないという方はどうぞ下へ 「おにいさん、おかえり」 「ああ、ただいま」 お兄さんが家に到着すると、縁側で赤れいむをお茶うけにオレンジジュースを摂って休憩しているゆうかが出迎えてくれた。 途中で回収したゲスまりさの入った箱を玄関に放置し、台所へと急ぐ。 畑で実の親まりさに見捨てられたうえ、重傷を負わされた姉まりさを治療するためだ。 罠用の箱から水槽サイズに赤まりさたちを移し替えると、お兄さんはすぐに瀕死だった姉まりさの状態を確認する。 「ゆ…ふ……ひゅぎゅ……」 今にも途切れそうな呼吸を繰り返すまりさ。 その様子は愛で派が見れば酷いと嘆き、虐待派が見れば心躍る惨状だった。 何度も壁に叩きつけられていたまりさの顔半分は潰れ、左目は眼窩からこぼれて頬にこびりついている。 許しを乞うために口を開いたせいで自らの歯により唇を裂き、舌の先端を噛み切ってしまっていた。 咥えられていた金色の髪は不揃いに千切れ、場所によっては毛根から引き抜かれて禿げてしまっている。 まりさ種自慢の帽子もぐしゃぐしゃに潰れ、ところどころに穴が開いている。もう水に浮かべることはできないだろう。 足に当たる部分も一部が破けていた。僅かばかり餡子が漏れ出しており、このまま放置すれば一時間後には衰弱死といったところか。 苦しいだろう、辛いだろう、そして悲しいであろう。お兄さんは心の中でほくそ笑む。 「……こんな状態なら、死なせたほうがいいような気もするけどね」 そう言いながら、まな板の上に傷ついた姉まりさを移動させるお兄さん。 いっそこのまま赤ゆ共の目の前で細切れにしてしまおうか。 そんな衝動が沸き起こるが、今はまだその時ではない。今回の目的のために理性で抑えつける。 二つの皿を準備し、片方には水で溶かすための小麦粉。もう片方にはオレンジジュースを注ぐ。 「しょんにゃきょちょいわにゃいぢぇー!」(そんなこといわないでー) 「おにぇーしゃんをちゃしゅきぇちぇー!」(おねーさんを助けてー) 彼の心境を知るはずもなく必死で姉を助けてほしいと懇願するのは、同じく箱に入れられたままの残りの赤まりさたち。 まりさ種にしては珍しい事だとお兄さんは思っていた。まりさと言えば自分のためなら家族すら捨てるゆっくりと認識されている。 その典型的なのが、コイツ等の親だろう。 そしてゆっくりは親からの餡子を通じ生まれるので、ゲス種からはゲスが生まれるのがセオリーである。 ましてゲスまりさに育てられた赤ゆ共ならば、姉を見捨てて命乞いをしないはずがない。 いったいこれはどうしてなのか…。もう片方の親がよほど教育熱心だったのだろうか。 そういえば…。と、お兄さんはふとあることに気づいて赤ゆたちに声をかけた。 「どうしてお前ら、全部まりさ種なんだ?」 「「「「ゆ?」」」」 お兄さんの質問の意図が分からないのか、赤まりさが全身を傾けて不思議そうな顔をする。 たしかあのまりさは母親だったか? お兄さんは赤ゆたちにわかりやすく訊き直した。 「おとーさんは誰なんだ? 他におねーさんは?」 「ゆゆっ! おとーしゃんはれいみゅだよ!」 「まりしゃたちはこりぇでじぇんいんだよ!」 「れいむ種が父親ねえ……」 通常ならば母性に強いれいむ種が母親役になり、行動力のあるまりさ種が父親になるものだが……。 新たな疑問が浮かび首を傾げるお兄さんだが、次の赤まりさの言葉でその謎が氷解した。 「れいむおとーしゃんはね、かりがちょーっちぇもじょうずなんだよ」 「おかーしゃんよりずーっとじょーずだったんだよ!!」 「おきょるちょきょわいけりょ……」(怒ると怖いけど……) 「おうちゃちょかたくちゃんおしえちぇくりぇちゃんだよ!」(お歌とかたくさん教えてくれたんだよ) 「なるほど………ん? ……『だった』?」 気になるフレーズが耳に入り、お兄さんは濃度を調整していた小麦粉を混ぜる手を止める。 すると赤まりさたちは、泣いていた顔をさらに歪ませながら話を続け、それを黙って彼は聞き続ける。 赤まりさたちの発音は聞き取りづらく時間もかかったが、どうにかお兄さんは内容を掴むことができた。 その話を要約するとこうだ。父親役だったれいむは森でも指折りの狩りの名手(笑)だったらしい。 まりさ種が本来は狩りを得意とするだろうが、それよりも上手かったのだから父親のれいむはよほどの腕前だったのであろう。 まあ、ゆっくりの中ではの話だが……。 そしてゲスであったまりさの事だ。おそらく優れたれいむを餌集めに利用するため、自ら母親になったと考えられる。 秋の場合は番いで餌を探したのだろうが、雪解け以降はれいむを利用する算段だったに違いない。 また十匹という赤ん坊の数から推測するに、植物出産であることは一目瞭然。典型的な冬ごもりの失敗例と言っていい。 通常ゆっくりたちは、餌が切れてしまわないよう冬ごもり中に子作りを抑えるハズだ。 もしくは胎生出産で産みすぎないように数を調整するものである。 だが目の前にいる赤ゆの数は明らかに多い。こいつらの両親は残りの餌で十分冬を越せると見誤り子作りをしたのだろうか。 胎生出産ならまだ望みはあった。だが植物出産をしてしまったことが、この家族の不運を決定づけてしまったのだ。 蔓からの出産は赤ゆの数が多く生まれるのも早い。ましてや生まれたばかりだと食欲も旺盛なのは周知の事実。 母親のまりさも出産後の疲れと食欲に任せて、予定より遥かに上回った食事を続けたと赤まりさたちは話した。 結果として春を目前にして餌は尽き、空腹の日々を送ることになった一家。 そもそも燃費の悪い赤ゆには、こまめな食事が必要不可欠である。 このままでは一家全員が餓死してしまうと、親れいむは質量不足の餡子脳で考えただろう。 大黒柱であり生来母性の強いれいむにとって、子供を間引くなどは考えられなかったはずだ。 ならばれいむに残された道は一つしかない。 ゆっくりたちが使える生涯最期の大技。自らを食料とする『お食べなさい』。これを使ったのだという。 そうして一家は、本当にギリギリの所で冬を越せたということらしい。 「おとーしゃん、はりゅになっちゃりゃきゃりをおしえちぇくりぇりゅっていっちゃのに……」(春になったら狩りを教えてくれるって言ったのに) 「「「「ゆえーんゆえーん!!」」」」 亡き父親の面影を思い出したのか、また赤ゆたちは声をあげて泣き始める。 どうやら最初の疑問だった全員が赤まりさなのは、単なる偶然だったようだ。 さてさて、それにしても親れいむも運が悪いことこの上ないとお兄さんは苦笑する。 せっかく恵まれた身体能力を持って生まれてきても、冬ごもりの相手がゲス。そして子孫を残そうとすれば全員がまりさ種。 結果だけ見れば、まりさ種の便利な道具兼食糧となった。これだけである。 そしてそのまりさのせいで、いま現在一家全滅の危機にあっているわけだ。 ここで自分がゲスまりさもろとも赤ゆを叩き潰せば、そのれいむの覚悟も水の泡となってしまう。 あまりにも無駄な生涯。お兄さんは筆に小麦粉を塗りながら口を開いた。 「なんだ、やっぱりゲスなゆっくりか」 「「「「ゆっ!?」」」」 今まで黙っていたお兄さんが発した突然の一言に、赤ゆたちは泣くことすら止めて見上げてきた。 「母親…じゃなかったな、父親か。お前ら自分の親食ったんだろ?」 「ゆ……」 勿論これはお兄さんの嫌みだ。『お食べなさい』とは、あくまで相手に食べてもらいたいから出来る行為だ。 これは強い仲間意識のもとでしかできず、またこれを行われた相手はその思いに応えなければならない。 この場合に限ったことだが、れいむを食べた事は正しい行為なのだ。 だがそんな事彼には知ったこっちゃない。 赤ゆたちの心にある罪悪感を全力で抉り始めた。 「まりさたちが巣の餌をバカになって食ったから、れいむは『お食べなさい』をしたんだ」 「ゆ……ゆ」 「じぇ、…じぇもまりしゃちゃちもおにゃか……」 「そんなの言い訳だろ? ガキだからって調子に乗って、父親の苦労も知らないで」 「ゆぇ……ゆぐ」 「どうせ『おにゃきゃへっちゃー』、『ちゃべもにょくりぇにゃいおとーしゃんにゃんかしにぇー』とか言ったんだろ?」 「「「「ゆあああああああああ!!!」」」」 お前らが父親を追い詰めたんだ。お前らが我慢していれば父親は助かったんだ。 何度もそう言いながら、お兄さんはまな板の上の姉まりさを治療していくことも忘れない。 瀕死だったまりさも、小麦粉を使った適切な処置で傷が塞がり、ジュースのおかげで窮地を脱した様だ。 意識もわずかばかり戻ってきているようで、残された右目でお兄さんを見つめている。 残されたその目に宿る感情は何か。お兄さんは小麦粉を塗り続けながら思う。 「ゲスから生まれた子はやっぱりゲスだよ」 そう吐き捨てると、彼は言葉を切って黙り込んだ。その間、一度も箱にいる赤まりさたちを見ることはなかった。 別に軽蔑していたわけではない。ただ手元が狂って姉の方を潰さないようにした為である。 「ま、まりしゃたゃちはげすじゃないよ!!」 「しょーだよ! おとーしゃんもげすじゃないよ!!」 「おとーしゃんちょまりしゃをばかにするおにーしゃんはゆっきゅりちね!!」 ちね! ちね! と騒ぎ始める赤まりさたち。 すでに半分近く治療を終えている姉まりさだけが、ただ黙ってお兄さんを見つめている。 「別にれいむをバカにするわけじゃないさ。お前らと母親に言ってるんだよ」 母親。その単語を聞いた直後、赤ゆたちは身を硬直させて黙り込んだ。 まな板の上の姉まりさも、その言葉に身体を震わせて反応した。筆先にわずかばかりの振動。 「だってそうだろ? こうしてのこのこ人間の住み家に野菜を盗みに来てるんだからな」 せっかく父親が命かけたのに、それで捕まってりゃ世話ねえっての。お兄さんは苦笑しながらオレンジジュースを染み込ませた筆に持ち替える。 「ゆっ! おやしゃいしゃんはかっちぇにはえちぇくりゅんだよ!!」(お野菜さんは勝手に生えてくるんだよ) 「しょんにゃきょちょもわきゃらにゃいじじいはばきゃにゃにょ? しにゅの?」(そんなこともわからないジジイはばかなの?) 相変わらず口うるさい…。今度こそ潰してしまおうかと思うが、それでも我慢してお兄さんは会話を続ける。 「あのさ、それ誰から聞いたわけ? れいむ? それともまりさ?」 「ゆっ、おきゃーしゃんだよ!!」 「おきゃーしゃんがおやしゃいしゃんのきょちょをおしえちぇくりぇちゃんだよ!!」(お母さんがお野菜さんの事を教えてくれたんだよ) 「へえ、お母さん………ねえ」 適当に相槌を打つと、もう一度小麦粉の筆に持ち替えた。餡子の流出は止まり、潰れた顔もようやく元の形に戻ってくる。 「お前らを捨てた親が何を教えたって言うんだよ」 「「「ゆっ!?」」」 捨てた。この決定的な一言に、赤ゆたちは意気込んでいた表情を強張らせた。 「お前らさ、さっき捨てられたんだよ? このまりさを殺そうとした母親にさ」 そう言ってお兄さんは、まな板の上の彼女たちの姉を筆で示す。 そこには餡子が漏れなくなったものの、未だ動けず片目を失ったまりさが横たわっていた。 「お、おねーしゃ……」 「まりさたちが教わった事って、全部嘘なんじゃない?」 「しょ、しょんにゃきょちょ……」 「おかーさんが狩りしてるとこなんて、見たことないんだろ?」 「「「……!?」」」 「どうせにがーい草さん食べさせられたんじゃない?」 「……にゃ、にゃんでしっちぇるにょ?」 「ほら、やっぱり騙されてたんだ。だってゲスな子供だし真面目に育てても意味無いよね」 「ゆ………ゆぐ」 「美味しいご飯を、どうして可愛くもない子供にあげなきゃいけないの?」 「ま、まりしゃたちはかわいよ、ぴゅんぴゅん……!」 「そんな子供に美味しいご飯なんて勿体ないよね!」 「まりしゃたちのはにゃしきいちぇりゅにょ? ばかにゃにょ?」(まりさたちの話聞いてるの? 馬鹿なの?) 「聞いてるとも。でもさ、かわいい子供を危険な外に出すわけないじゃない?」 「ち、ちぎゃうよ! きりぇーにゃおはにゃしゃんとかみしぇてくれるって」 「それなら普通は親が持ってきてくれるんだよ? 大事にされてなかったんだね!」 「しょ、しょんにゃきょちょなぃ……」 「そんなお野菜さんと子供じゃ交換しても割に合わないよね。役立たずのゴミなんて誰が欲しいの!?」 「まりしゃたちはごみじゃ……」 「そんなのが傍にあったら、ゆっくりできないね! まりさたちといてもゆっくりできないよね!」 「どうちでしょんにゃきょちょいうのおおおおおお!?」 「そんなゆっくりに価値なんてある? ないよね! 生ゴミ以下だよね!!」 「ゆびぃぃぃぃぃ! ちぎゃうゅうううううう!!」 「そんなゆっくりなんて、死ねばいいのにね!!」 「「「「ゆあああああああああああああああああああ!!」」」」 お兄さんは先ほど同様一気にまくしたてた。 ここで正しい正しくないなど餡子脳には判断できない。お兄さんは子供のケンカのノリで喋っただけだ。 だがそれは効果的で、単純な赤ゆたちは何一つ反論ができなかった。 とはいえお兄さんの言葉にも一理ある。先ほどの主張にも根拠が無かったわけではない。 山の自然界に於いて、生まれて間もない子供を狩りに連れていく動物はそういない。 ましてやゆっくり。場合によっては虫より脆弱なナマモノが大手を振って跳ねまわれるほど世界は甘くない。 しっかりした親ならば、子ゆっくりになるまで巣の中で外の知識を教えるものだ。 楽しいこと。嬉しいこと。危険なもの。怖いもの。それを餡子に刻み、子ゆっくりたちは外へ飛び出していく。 だが、こいつらの母親まりさはゲス。人間はゆっくりできないことなどを教えるわけがない。逆に弱くて便利な下僕だと教育したかもしれない。 またギリギリで冬を越したのだから、親まりさにも満足な体力はなかったであろう。 この赤ゆたちが生まれてどれだけ日が経ってるかはわからないが、雪解け直後は家の傍に生える雑草しか食べさせてもらえなかったはずだ。 赤ゆたちにも心当たりがあったのか、ガタガタと震えている。 自分たちは愛されているはずだ。そう母親を信じ切っていた子供たちの思いはすでに崩れかけていた。 「ゆ……、みゃみゃ…みゃみゃああ……」 「おきゃーしゃんにょばきゃああああ……」 やれやれと呆れてため息をつきながら、ここでようやくお兄さんは赤ゆたちに視線を移す。 そこにあったのは、絶望感に支配された小さな饅頭が10個ほど。 ある物は涙を流し、またある物は口から餡子を吐いて気絶し、そしてある物は放心状態のまま失禁していた。 まな板の上の赤まりさも残った眼からぽろぽろと砂糖水を流してただ震えている。 なんでもいい。あと僅かでこいつらが信じていた母親像は砕け散る。 お兄さんは大きく息を吸うと、さらに赤まりさを責め立てた。 「結局さ、親を食った時点でお前らはゲスなんだよ!! そんなゲスなんて誰も要らないんだよ!!」 「「「ゆびゃああああああああああああああああああああああ!!!」」」 「おとーしゃ……おとーしゃああああああ!!」 「ごべんにゃじゃいいいいいい!!」 「おぎゃーしゃんすちぇにぇいでええええええええ!!」 「もう遅いよ! お前たちのお母さんはみんな要らないって言ったからね!!」 「まりしゃのきょちょきりゃいににゃらにゃいでえええええ!!」 「いや、きっとだいっきらいだろうね! だってさっき捨てられたじゃないか!!」 「おねが…ゆげ…! おねぎゃいだぎゃ…ゆげぇ………まりじゃ、を…きりゃいににゃらにゃいいでええええええ!!」 「捨てたゴミなんて誰が好きになれると思うの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「ちが…ゆげぇ…! げぅ……まりじゃだぢはごみじゃ…!」 「ゴミが喋るな!! 虫唾が走る!!」 バァンッ!!!! お兄さんは心底怒った声をあげて、姉まりさのすぐ上の台を叩いた。演技でやったとはいえ、手が痛い…。 声とは違う空気の震える衝撃。少し前に畑で蹴りあげられたショックが、まだ意識を保っていた数匹の餡子に蘇る。 忘れていた。今まで何にもしてこなかったが、この人間は自分たちよりずっと強い。 箱の中の赤まりさたちは、お兄さんを怒らせてはいけないと餡子の危険本能で悟ったのか、口を閉じる。 その様子に満足したお兄さんは、優しい笑みを浮かべて箱の赤まりさたち一匹一匹を見て回った。 恐怖と絶望。二つの感情に支配された今の赤ゆたちの餡子はさぞかし甘くなっていることだろう。 お兄さんは頬笑みを崩さないまま、今度は囁くような優しい口調で語りかける。 ただしその内容は、ゲスに優るとも劣らないほど悪辣極まりない。 元々彼は話術でゆっくりを狂わせるタイプであるため、こちらの方が得意なのだ。 「いいかい、ゴミまりさ? 君たちにはもう誰も頼れる人がいない。食べ物を獲ってきてくれる親がいない。お勉強を教えてくれる親がいない。生き方を教えてくれる親がいない」 「……………」 「そんな赤ちゃんは、すぐに死んじゃうだろうね。もしかしたらさっきおかーさんに潰されていた方が幸せだったかな?」 「……………」 必要とされない物には生きる価値がない。 赤まりさにはもう生きている意味がない。 意味を見いだせない命は必要じゃあない。 お兄さんは本当に優しい声で、延々と赤まりさに自分たちの無価値さを説いた。 「そもそもね、まりさ種っていうのは最低のゆっくりなんだ。自分のためなら親兄弟も見捨てるやつらなんだよ」 「おきゃーしゃん………」 「うん、そうだね。さっきのまりさ達のおかーさんがいい例だね。皆もあんなゆっくりになるんだよ」 「まりしゃたちはそんにゃきょちょ……」 「いいや、絶対になるよ。だってゲスまりさから生まれて育てられたまりさたちなんだよ? しないわけないじゃないか」 「あ、あんにゃにょもうおやじゃにゃいよ……! まりしゃたちはちぎゃうんだよ!!」 「そう。じゃあ誰から生まれたんだい? れいむはおとーさんだよね?」 「ゆぅ……」 「そもそもみんなまりさ種じゃないか。都合の悪いことは全部人のせいにする、ゲスで乱暴で最低のゆっくりだろう?」 「まりしゃたちはちぎゃううううううう!!!!!」 「まさかまさか。だって母親にそっくりじゃないか。まだれいむ種に生まれればよかったかもねぇ……。うふふふふふふ」 「そにょわらいきゃちゃはゆっきゅりできにゃいいいいい!!」 餡子を吐き散らしながらも、自分たちの存在意義を主張する赤まりさ達。 お兄さんに散々罵られたせいで、赤ゆたちの葛藤によるストレスは多大なものであった。 さて、弄ることにも飽きたしそろそろ十分だろう。お兄さんはようやく話を本題に移すことにした。 「まあ、必要とされれば誰かが好きなってくれるだろうけどね」 赤まりさたちは、必要と好き。この二つの単語に敏感に反応した。 「それじゃあ試してみようか? まりさたちが本当に必要とされて好かれているのか」 「……ゆぁ、どうしゅればいいの?」 言葉責めされて精神を擦り減らされた赤まりさたちに、その提案を拒否する余裕なんてない。 すでに出来レースである賭けに乗るしか道はないのだ。 「さっき言ったよね。うちのゆうかからお野菜さんの勉強をしてもらうって」 彼の言葉に首を傾げる赤ゆと、うなずく赤まりさの二種類。 さすがに餡子脳では覚えていないかと予想していたが、どうやら賢い個体もいくつかいるようだ。 お兄さんは頷いた赤まりさたちを見て話を続ける。 「よく考えたらゆうかが気に入ってくれないと、君たちには勉強をさせることもできないしね」 「ゆ……! わかっちゃよ! やりゅよ!」 「まりしゃちゃちのかわいしゃで、めりょめりょになりゅにきまっちぇるよ!!」 「おにーしゃんしょんにゃきょちょもわきゃらないにょ? ばきゃなの?」 なんとまぁ…、さすがゆっくり。あまりの余裕ぶりにお兄さんは爆笑したくなる。 一匹に好かれればみんなに好かれると思いこんでる赤まりさたち。 お兄さんは、まだ縁側でゆっくりしているゆうかを呼び出した。 「なに、おにいさん?」 しばらくすると、口元の餡子を舐めながらゆうかが現れた。 「ゆうか。たしか畑の手入れが大変って言ってたよな。それでお手伝いに赤まりさなんて必要かと思ってね」 敢えて『必要』という単語を強調するお兄さん。 無論大ウソだ。ゆうか種は畑を作ることを楽しみとしており、そこに邪魔が入るのを極端に嫌う。 野生でも単独で行動する個体が多く、何より彼女は捕食種だ。他のゆっくりを無条件で好きになる謂れはない。 もしこの赤ゆたちが台所でなく彼女の領域内で出会っていたなら、瞬く間に全て始末されていたことだろう。 そして彼は、今回の話をゆうかに全て伝えていた。つまりは彼女も共犯者。 普段は物静かなゆっくりゆうかだが、その根っこはオリジナル特有のドSさを潜ませている。 当初は面倒事に巻き込まれることを渋っていたゆうか。 だが協力すれば夏には向日葵畑用の場所を用意するという旨を伝えると、彼女は二つ返事で了承してくれた。 本音を言えば、お兄さんは無条件で畑の一部をあげるつもりだったが…。ゆうかかわいいよゆうか。 そんな彼らの事情は露も知らない赤ゆたち。 見たことないゆっくりだが、きっと自分たちを可愛いと言ってくれるに違いない。 同族が現れたことで早速自分たちをアピールする赤まりさ達。 「「「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」」」」」 「ゆっくりしていってね。……おにいさん、これが?」 「そう、それじゃよろしく」 そう言うとお兄さんは、ほとんど治療を終えた姉まりさの方に向き直った。今度は破けた帽子の修復に取り掛かる。 修復といっても、黒い布切れに糊を張り付けるだけで済むやっつけ仕事なので一分もかからない。 台の上に乗せられていた姉まりさは、やはり黙ってお兄さんを見つめ続けている。 その目は先ほどまでと違い、何か意思を含んでいるようだ。 「ゆっきゅり! ゆっきゅり!!」 「ゆ、おねーしゃんまりしゃたちかわいいでしょ?」 「ゆっきゅりできりゅよにぇ?」 「おにぇーしゃんにしゅりしゅりしちゃいよ〜!」 「まりしゃたちちょゆっきゅりしよーにぇ!!」 「ゆぅ〜ん、おねーしゃんまりしゃおなきゃしゅいちゃよぉ〜!」 「…………………」 お兄さんが黙々と作業を進める背後では、赤まりさ達の声が何度もあがる。 自分たちは可愛い。自分たちはとってもゆっくりしている。 だからこそ、自分たちを嫌うゆっくりなんて絶対にいるわけない。 ほら、緑の髪のお姉さんだって自分たちの可愛さに声も出ないではないか。 あの母親と目の前にるお兄さんは、ゆっくりしていないからそんな事を言ったんだ。 根拠のない絶対的な自信を持って、まりさたちはひたすらゆうかに自分たちを売り込む。 もう少し、もう少しでおねえさんが自分たちを大事にしてくれる。 結果を餡子脳に浮かべて赤まりさたちが精一杯の笑顔を見せた次の瞬間、 「さいあく、なんで『まりさ』なの?」 ゆうかの一言で凍りついた。 まって、いまこのお姉さんは何て言ったの? 聞き取れなかったよ? その答えを聞いて口を開けたのはお兄さんただ一人。 「ははは、ごめんよ。捕まったのがそれだけでね……」 「まりさなんて、はたけをあらすだけよ。そんなゆっくりとはゆっくりできないし、いらないわ」 「要らないかい?」 「いらないわ。わたし、まりさなんてだいきらいだもの」 「言いきったね……。じゃあ、この赤まりさたちはどうする?」 「たべちゃえば?」 不機嫌そうに話すゆうかと苦笑するお兄さん。 二人の声も聞こえるし、姿も見える。けれど、赤まりさたちにはそれが餡子に入っていかない。 いらない。だいきらい。その言葉を言われないためにあれだけ努力したというのに……。 赤まりさの努力は一分も持たずに否定された。 お兄さんは母親に捨てられた時と同じような表情をして固まる赤まりさに振り返ると、少しだけ困った表情を浮かべてこう言った。 「だってさ………残念だったね?」 「ゆ………ゆびゃ! ゆびゃびゃびゃびゃ!!!」 「ぱぴぷぺぽ! ぱっぺぽおおおおおおお!?」 「ゆびゃらびゃばゆびゃびゃらゆびゅあ!?」 「ゆげ!? ゆっげげげげげげげげ!!」 「っと、やべ。壊れたか……?」 「だいじょうぶ。ただこんらんしているだけ。すぐにおちつくよ」 突如奇声を上げ始めた赤ゆっくりの様子に慌てるお兄さんに対し、落ち着いて同族の反応を見極めるゆうか。 その言葉通りお兄さんが姉まりさを治療し終えてしばらくする頃には、叫ぶことに疲れた赤まりさたちが箱の底につっぷして泣き始めた。 「まりしゃ……まりしゃいりゃにゃいきょなにょ?」 「いいきょににゃりゅよ……すちぇにゃいぢぇ……」 「みんにゃまりしゃをきりゃいなにょ…?」 そのどれもが完全に打ちひしがれていた。 最初は母親に。次はお兄さんに。そして最後は見知らぬゆうかに。 自分たちが今まで出会ってきた存在全てに否定されてしまった赤まりさたち。 途方に暮れた表情というのはこういうものを言うのだろうか……。お兄さんはしばしその様子を眺めていた。 すると、赤まりさたちの泣きじゃくる声が響く台所で、ほんの僅かな異音がお兄さんの耳朶を刺激した。 「さ…。…い…。お……、に……さん」 「……ん、誰だ? 僕を鬼さん呼ばわりするのは?」 「おにいさん、うしろ」 ゆうかの言葉に従って振り返ると、そこにはまな板の上で何度も身を捩じらせる姉まりさ。 先ほど彼を呼んだのは、この姉まりさだ。 潰れていた顔は膨らみを取り戻し切れていた唇なども綺麗に治されていたが、失った左目の部分だけは瞼が閉じたままだ。 「目が覚めたのか?」 「ゆ……、ゆっと、…おきちぇ……よ」(ずっと起きてたよ…) 「身体はどうだ、もう痛くないだろう」 「ゆ…ん……でも、あんよしゃんが……」 「それはお前の母親のせいだから、僕に言われてもね……」 「………ゆぅ……」 本音を言えば、あえてお兄さんは足を完治させなかったのだ。このままでは這いずりでしか移動できない。 足が満足に動かない状態では、腕のないゆっくりは起き上がるだけでも時間がかかる。 「お……、おに、…しゃん……は」 「待ってろ、今ジュースかけてやる」 動きは鈍く、話もたどたどしいのでは時間がかかってしまう。 体力回復のため、お兄さんはオレンジジュースを皮がふやけない程度、姉まりさに染み込ませると摘んで立ちあがらせた。 「あみゃあみゃしゃんだよ…、ゆっきゅりできりゅよ……」 「「「「「ゆああああん、おねえぢゃああああああん!!」」」」」 「だいじょーぶだよ、まりしゃは、もう、いちゃくにゃいよ……。ちょっとまっちぇちぇね…」(もう痛くないよ。ちょっと待っててね) 泣いて喜ぶ姉妹たちに対し、弱々しくも笑みを見せて応える姉まりさ。 まだどこか元気が無いように見えるが、これは精神的なものなので気にしない。 我ながらいけしゃあしゃあと対応できるものだと思うが、この程度のことなど虐待お兄さんにとっては最低スキルだ。 「で、どうしたんだい?」 「あの…にぇ…、まりしゃおにぇがいがあるにょ……」 「……お願い? それは何かな?」 お兄さんの質問に、姉まりさはしばし戸惑いを見せて悩む。 この先を言っていいものか、もし拒否されたらどうすればいいのか。そんな感情がありありと見て取れる。 そんな赤ゆっくりを見るのも一つの楽しみだ。お兄さんは何も言わず、ただ笑みを浮かべながら姉まりさの言葉を待つ。 「あのにぇ……、まりしゃちゃちをたしゅけちぇほしいにょ…」 「おねーしゃん?」 「どういうきょちょ?」 「ねえ、まりさ。それはどういう意味だい?」 「……まりしゃたちに、おやしゃいしゃんやいりょんにゃきょちょをおしえちぇくだしゃい!!」(お野菜さんやいろんな事を教えてください) 計画どおり。全てが彼の掌の上で進んでいた。 もちろん、彼はこの先の姉まりさの言葉を手に取るように予想していた。 そのためにここまで赤ゆたちを責めたのだ。幾度となく繰り返し赤ゆたちの心を抉り、餡子脳でも忘れにくいトラウマを植え付けたのだ。 全ては彼の楽しみのため。 そんな彼の計画をスムーズにしてくれたのは、この姉まりさであった。 おそらくこの姉は外見こそまりさ種だが、父親のれいむの餡子を一番強く受け継いでいるのだろう。 生きる事に執着するゲスの餡子と、仲間を思いやれる知性を兼ね備えた姉まりさ。 だからこそ彼は、わざわざ瀕死の姉まりさを治療したのだ。自分たちを見捨てた母を信じ、姉妹の事にも気を配れた姉まりさを。 無論姉まりさのような知性のあるゆっくりがいなくとも、お兄さんにはこの流れに持っていく用意はあった。 だがこれは嬉しい誤算だった。こうして姉妹の誰かが指揮を執ることによって、計画がさらに円滑に進められるからだ。 事実、待っていろと言われた妹たちは大人しく、事の成り行きを見守っている。 縋る物すべて失った赤ゆたちが生き残るには、姉まりさの考え付いたことしか方法がない。 人間の庇護下に入り、そこでルールを学ぶ。たとえゲスの母が言った通りの奴隷のような扱いをさせられるとしても…。 それでもどうにかして生き延びたい。姉妹を一匹でも多く救いたいという姉としての責任感を抱え、まりさはその道を選んだのであった。 ゆん生一代の決心をした姉まりさを見て、お兄さんはゆっくりと笑みを深めた。 「………わかったよ。君たちをしっかり教育してあげるとも」 「ほ、ほんちょ!? まりしゃたちをたしゅけちぇくりぇゆの!?」 「いいとも、もちろんしっかり勉強してくれるならだけどね」 「がんびゃりゅよ!」 「ゆぅ〜ん! おにーしゃんありがちょうね!!」 お礼を言うのはこっちの方さ。君たちのおかげで、しばらく楽しめそうなのだから。 お兄さんは赤まりさたちと出会った時のように、口を三日月の形に歪めて玄関の方へ顔を向けた。 すでに彼の意識は箱に入れらたままのゲスまりさへと向いている。 さあ準備は整った。ゲスまりさ、お前の苦しみはこれからだ! 後編へ あとがき ………反省します。ほんとごめんなさい。どんだけ月気取りだよお兄さん。 最初は二回に分ける予定だったのに、無性に赤ゆを苦しめたくなってしまいもうgdgd。 モニターの前で一度土下座しました。もう一回します。 そしてせっかくゲスまりさを徹底的にいじめ抜くハズだったのに、いつの間にか赤ゆの洗脳ルートに……。 次回で締められるように努力するとともに、もし読んで下さっている方がいるならば、この場を借りて感謝を意を述べさせて頂きます。 次回こそ……次回こそ……ヒャア! 虐待だぁ!!
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ゆっくりいじめ系1996 育児放棄?そんなもんじゃないんだぜ!! 前編よりつづく 今回は赤ゆを言葉で苦しめます ゲスまりさは今回出番なし お兄さんが月気取りでストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり 後編のための過程作品です それでも構わないという方はどうぞ下へ 「おにいさん、おかえり」 「ああ、ただいま」 お兄さんが家に到着すると、縁側で赤れいむをお茶うけにオレンジジュースを摂って休憩しているゆうかが出迎えてくれた。 途中で回収したゲスまりさの入った箱を玄関に放置し、台所へと急ぐ。 畑で実の親まりさに見捨てられたうえ、重傷を負わされた姉まりさを治療するためだ。 罠用の箱から水槽サイズに赤まりさたちを移し替えると、お兄さんはすぐに瀕死だった姉まりさの状態を確認する。 「ゆ…ふ……ひゅぎゅ……」 今にも途切れそうな呼吸を繰り返すまりさ。 その様子は愛で派が見れば酷いと嘆き、虐待派が見れば心躍る惨状だった。 何度も壁に叩きつけられていたまりさの顔半分は潰れ、左目は眼窩からこぼれて頬にこびりついている。 許しを乞うために口を開いたせいで自らの歯により唇を裂き、舌の先端を噛み切ってしまっていた。 咥えられていた金色の髪は不揃いに千切れ、場所によっては毛根から引き抜かれて禿げてしまっている。 まりさ種自慢の帽子もぐしゃぐしゃに潰れ、ところどころに穴が開いている。もう水に浮かべることはできないだろう。 足に当たる部分も一部が破けていた。僅かばかり餡子が漏れ出しており、このまま放置すれば一時間後には衰弱死といったところか。 苦しいだろう、辛いだろう、そして悲しいであろう。お兄さんは心の中でほくそ笑む。 「……こんな状態なら、死なせたほうがいいような気もするけどね」 そう言いながら、まな板の上に傷ついた姉まりさを移動させるお兄さん。 いっそこのまま赤ゆ共の目の前で細切れにしてしまおうか。 そんな衝動が沸き起こるが、今はまだその時ではない。今回の目的のために理性で抑えつける。 二つの皿を準備し、片方には水で溶かすための小麦粉。もう片方にはオレンジジュースを注ぐ。 「しょんにゃきょちょいわにゃいぢぇー!」(そんなこといわないでー) 「おにぇーしゃんをちゃしゅきぇちぇー!」(おねーさんを助けてー) 彼の心境を知るはずもなく必死で姉を助けてほしいと懇願するのは、同じく箱に入れられたままの残りの赤まりさたち。 まりさ種にしては珍しい事だとお兄さんは思っていた。まりさと言えば自分のためなら家族すら捨てるゆっくりと認識されている。 その典型的なのが、コイツ等の親だろう。 そしてゆっくりは親からの餡子を通じ生まれるので、ゲス種からはゲスが生まれるのがセオリーである。 ましてゲスまりさに育てられた赤ゆ共ならば、姉を見捨てて命乞いをしないはずがない。 いったいこれはどうしてなのか…。もう片方の親がよほど教育熱心だったのだろうか。 そういえば…。と、お兄さんはふとあることに気づいて赤ゆたちに声をかけた。 「どうしてお前ら、全部まりさ種なんだ?」 「「「「ゆ?」」」」 お兄さんの質問の意図が分からないのか、赤まりさが全身を傾けて不思議そうな顔をする。 たしかあのまりさは母親だったか? お兄さんは赤ゆたちにわかりやすく訊き直した。 「おとーさんは誰なんだ? 他におねーさんは?」 「ゆゆっ! おとーしゃんはれいみゅだよ!」 「まりしゃたちはこりぇでじぇんいんだよ!」 「れいむ種が父親ねえ……」 通常ならば母性に強いれいむ種が母親役になり、行動力のあるまりさ種が父親になるものだが……。 新たな疑問が浮かび首を傾げるお兄さんだが、次の赤まりさの言葉でその謎が氷解した。 「れいむおとーしゃんはね、かりがちょーっちぇもじょうずなんだよ」 「おかーしゃんよりずーっとじょーずだったんだよ!!」 「おきょるちょきょわいけりょ……」(怒ると怖いけど……) 「おうちゃちょかたくちゃんおしえちぇくりぇちゃんだよ!」(お歌とかたくさん教えてくれたんだよ) 「なるほど………ん? ……『だった』?」 気になるフレーズが耳に入り、お兄さんは濃度を調整していた小麦粉を混ぜる手を止める。 すると赤まりさたちは、泣いていた顔をさらに歪ませながら話を続け、それを黙って彼は聞き続ける。 赤まりさたちの発音は聞き取りづらく時間もかかったが、どうにかお兄さんは内容を掴むことができた。 その話を要約するとこうだ。父親役だったれいむは森でも指折りの狩りの名手(笑)だったらしい。 まりさ種が本来は狩りを得意とするだろうが、それよりも上手かったのだから父親のれいむはよほどの腕前だったのであろう。 まあ、ゆっくりの中ではの話だが……。 そしてゲスであったまりさの事だ。おそらく優れたれいむを餌集めに利用するため、自ら母親になったと考えられる。 秋の場合は番いで餌を探したのだろうが、雪解け以降はれいむを利用する算段だったに違いない。 また十匹という赤ん坊の数から推測するに、植物出産であることは一目瞭然。典型的な冬ごもりの失敗例と言っていい。 通常ゆっくりたちは、餌が切れてしまわないよう冬ごもり中に子作りを抑えるハズだ。 もしくは胎生出産で産みすぎないように数を調整するものである。 だが目の前にいる赤ゆの数は明らかに多い。こいつらの両親は残りの餌で十分冬を越せると見誤り子作りをしたのだろうか。 胎生出産ならまだ望みはあった。だが植物出産をしてしまったことが、この家族の不運を決定づけてしまったのだ。 蔓からの出産は赤ゆの数が多く生まれるのも早い。ましてや生まれたばかりだと食欲も旺盛なのは周知の事実。 母親のまりさも出産後の疲れと食欲に任せて、予定より遥かに上回った食事を続けたと赤まりさたちは話した。 結果として春を目前にして餌は尽き、空腹の日々を送ることになった一家。 そもそも燃費の悪い赤ゆには、こまめな食事が必要不可欠である。 このままでは一家全員が餓死してしまうと、親れいむは質量不足の餡子脳で考えただろう。 大黒柱であり生来母性の強いれいむにとって、子供を間引くなどは考えられなかったはずだ。 ならばれいむに残された道は一つしかない。 ゆっくりたちが使える生涯最期の大技。自らを食料とする『お食べなさい』。これを使ったのだという。 そうして一家は、本当にギリギリの所で冬を越せたということらしい。 「おとーしゃん、はりゅになっちゃりゃきゃりをおしえちぇくりぇりゅっていっちゃのに……」(春になったら狩りを教えてくれるって言ったのに) 「「「「ゆえーんゆえーん!!」」」」 亡き父親の面影を思い出したのか、また赤ゆたちは声をあげて泣き始める。 どうやら最初の疑問だった全員が赤まりさなのは、単なる偶然だったようだ。 さてさて、それにしても親れいむも運が悪いことこの上ないとお兄さんは苦笑する。 せっかく恵まれた身体能力を持って生まれてきても、冬ごもりの相手がゲス。そして子孫を残そうとすれば全員がまりさ種。 結果だけ見れば、まりさ種の便利な道具兼食糧となった。これだけである。 そしてそのまりさのせいで、いま現在一家全滅の危機にあっているわけだ。 ここで自分がゲスまりさもろとも赤ゆを叩き潰せば、そのれいむの覚悟も水の泡となってしまう。 あまりにも無駄な生涯。お兄さんは筆に小麦粉を塗りながら口を開いた。 「なんだ、やっぱりゲスなゆっくりか」 「「「「ゆっ!?」」」」 今まで黙っていたお兄さんが発した突然の一言に、赤ゆたちは泣くことすら止めて見上げてきた。 「母親…じゃなかったな、父親か。お前ら自分の親食ったんだろ?」 「ゆ……」 勿論これはお兄さんの嫌みだ。『お食べなさい』とは、あくまで相手に食べてもらいたいから出来る行為だ。 これは強い仲間意識のもとでしかできず、またこれを行われた相手はその思いに応えなければならない。 この場合に限ったことだが、れいむを食べた事は正しい行為なのだ。 だがそんな事彼には知ったこっちゃない。 赤ゆたちの心にある罪悪感を全力で抉り始めた。 「まりさたちが巣の餌をバカになって食ったから、れいむは『お食べなさい』をしたんだ」 「ゆ……ゆ」 「じぇ、…じぇもまりしゃちゃちもおにゃか……」 「そんなの言い訳だろ? ガキだからって調子に乗って、父親の苦労も知らないで」 「ゆぇ……ゆぐ」 「どうせ『おにゃきゃへっちゃー』、『ちゃべもにょくりぇにゃいおとーしゃんにゃんかしにぇー』とか言ったんだろ?」 「「「「ゆあああああああああ!!!」」」」 お前らが父親を追い詰めたんだ。お前らが我慢していれば父親は助かったんだ。 何度もそう言いながら、お兄さんはまな板の上の姉まりさを治療していくことも忘れない。 瀕死だったまりさも、小麦粉を使った適切な処置で傷が塞がり、ジュースのおかげで窮地を脱した様だ。 意識もわずかばかり戻ってきているようで、残された右目でお兄さんを見つめている。 残されたその目に宿る感情は何か。お兄さんは小麦粉を塗り続けながら思う。 「ゲスから生まれた子はやっぱりゲスだよ」 そう吐き捨てると、彼は言葉を切って黙り込んだ。その間、一度も箱にいる赤まりさたちを見ることはなかった。 別に軽蔑していたわけではない。ただ手元が狂って姉の方を潰さないようにした為である。 「ま、まりしゃたゃちはげすじゃないよ!!」 「しょーだよ! おとーしゃんもげすじゃないよ!!」 「おとーしゃんちょまりしゃをばかにするおにーしゃんはゆっきゅりちね!!」 ちね! ちね! と騒ぎ始める赤まりさたち。 すでに半分近く治療を終えている姉まりさだけが、ただ黙ってお兄さんを見つめている。 「別にれいむをバカにするわけじゃないさ。お前らと母親に言ってるんだよ」 母親。その単語を聞いた直後、赤ゆたちは身を硬直させて黙り込んだ。 まな板の上の姉まりさも、その言葉に身体を震わせて反応した。筆先にわずかばかりの振動。 「だってそうだろ? こうしてのこのこ人間の住み家に野菜を盗みに来てるんだからな」 せっかく父親が命かけたのに、それで捕まってりゃ世話ねえっての。お兄さんは苦笑しながらオレンジジュースを染み込ませた筆に持ち替える。 「ゆっ! おやしゃいしゃんはかっちぇにはえちぇくりゅんだよ!!」(お野菜さんは勝手に生えてくるんだよ) 「しょんにゃきょちょもわきゃらにゃいじじいはばきゃにゃにょ? しにゅの?」(そんなこともわからないジジイはばかなの?) 相変わらず口うるさい…。今度こそ潰してしまおうかと思うが、それでも我慢してお兄さんは会話を続ける。 「あのさ、それ誰から聞いたわけ? れいむ? それともまりさ?」 「ゆっ、おきゃーしゃんだよ!!」 「おきゃーしゃんがおやしゃいしゃんのきょちょをおしえちぇくりぇちゃんだよ!!」(お母さんがお野菜さんの事を教えてくれたんだよ) 「へえ、お母さん………ねえ」 適当に相槌を打つと、もう一度小麦粉の筆に持ち替えた。餡子の流出は止まり、潰れた顔もようやく元の形に戻ってくる。 「お前らを捨てた親が何を教えたって言うんだよ」 「「「ゆっ!?」」」 捨てた。この決定的な一言に、赤ゆたちは意気込んでいた表情を強張らせた。 「お前らさ、さっき捨てられたんだよ? このまりさを殺そうとした母親にさ」 そう言ってお兄さんは、まな板の上の彼女たちの姉を筆で示す。 そこには餡子が漏れなくなったものの、未だ動けず片目を失ったまりさが横たわっていた。 「お、おねーしゃ……」 「まりさたちが教わった事って、全部嘘なんじゃない?」 「しょ、しょんにゃきょちょ……」 「おかーさんが狩りしてるとこなんて、見たことないんだろ?」 「「「……!?」」」 「どうせにがーい草さん食べさせられたんじゃない?」 「……にゃ、にゃんでしっちぇるにょ?」 「ほら、やっぱり騙されてたんだ。だってゲスな子供だし真面目に育てても意味無いよね」 「ゆ………ゆぐ」 「美味しいご飯を、どうして可愛くもない子供にあげなきゃいけないの?」 「ま、まりしゃたちはかわいよ、ぴゅんぴゅん……!」 「そんな子供に美味しいご飯なんて勿体ないよね!」 「まりしゃたちのはにゃしきいちぇりゅにょ? ばかにゃにょ?」(まりさたちの話聞いてるの? 馬鹿なの?) 「聞いてるとも。でもさ、かわいい子供を危険な外に出すわけないじゃない?」 「ち、ちぎゃうよ! きりぇーにゃおはにゃしゃんとかみしぇてくれるって」 「それなら普通は親が持ってきてくれるんだよ? 大事にされてなかったんだね!」 「しょ、しょんにゃきょちょなぃ……」 「そんなお野菜さんと子供じゃ交換しても割に合わないよね。役立たずのゴミなんて誰が欲しいの!?」 「まりしゃたちはごみじゃ……」 「そんなのが傍にあったら、ゆっくりできないね! まりさたちといてもゆっくりできないよね!」 「どうちでしょんにゃきょちょいうのおおおおおお!?」 「そんなゆっくりに価値なんてある? ないよね! 生ゴミ以下だよね!!」 「ゆびぃぃぃぃぃ! ちぎゃうゅうううううう!!」 「そんなゆっくりなんて、死ねばいいのにね!!」 「「「「ゆあああああああああああああああああああ!!」」」」 お兄さんは先ほど同様一気にまくしたてた。 ここで正しい正しくないなど餡子脳には判断できない。お兄さんは子供のケンカのノリで喋っただけだ。 だがそれは効果的で、単純な赤ゆたちは何一つ反論ができなかった。 とはいえお兄さんの言葉にも一理ある。先ほどの主張にも根拠が無かったわけではない。 山の自然界に於いて、生まれて間もない子供を狩りに連れていく動物はそういない。 ましてやゆっくり。場合によっては虫より脆弱なナマモノが大手を振って跳ねまわれるほど世界は甘くない。 しっかりした親ならば、子ゆっくりになるまで巣の中で外の知識を教えるものだ。 楽しいこと。嬉しいこと。危険なもの。怖いもの。それを餡子に刻み、子ゆっくりたちは外へ飛び出していく。 だが、こいつらの母親まりさはゲス。人間はゆっくりできないことなどを教えるわけがない。逆に弱くて便利な下僕だと教育したかもしれない。 またギリギリで冬を越したのだから、親まりさにも満足な体力はなかったであろう。 この赤ゆたちが生まれてどれだけ日が経ってるかはわからないが、雪解け直後は家の傍に生える雑草しか食べさせてもらえなかったはずだ。 赤ゆたちにも心当たりがあったのか、ガタガタと震えている。 自分たちは愛されているはずだ。そう母親を信じ切っていた子供たちの思いはすでに崩れかけていた。 「ゆ……、みゃみゃ…みゃみゃああ……」 「おきゃーしゃんにょばきゃああああ……」 やれやれと呆れてため息をつきながら、ここでようやくお兄さんは赤ゆたちに視線を移す。 そこにあったのは、絶望感に支配された小さな饅頭が10個ほど。 ある物は涙を流し、またある物は口から餡子を吐いて気絶し、そしてある物は放心状態のまま失禁していた。 まな板の上の赤まりさも残った眼からぽろぽろと砂糖水を流してただ震えている。 なんでもいい。あと僅かでこいつらが信じていた母親像は砕け散る。 お兄さんは大きく息を吸うと、さらに赤まりさを責め立てた。 「結局さ、親を食った時点でお前らはゲスなんだよ!! そんなゲスなんて誰も要らないんだよ!!」 「「「ゆびゃああああああああああああああああああああああ!!!」」」 「おとーしゃ……おとーしゃああああああ!!」 「ごべんにゃじゃいいいいいい!!」 「おぎゃーしゃんすちぇにぇいでええええええええ!!」 「もう遅いよ! お前たちのお母さんはみんな要らないって言ったからね!!」 「まりしゃのきょちょきりゃいににゃらにゃいでえええええ!!」 「いや、きっとだいっきらいだろうね! だってさっき捨てられたじゃないか!!」 「おねが…ゆげ…! おねぎゃいだぎゃ…ゆげぇ………まりじゃ、を…きりゃいににゃらにゃいいでええええええ!!」 「捨てたゴミなんて誰が好きになれると思うの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「ちが…ゆげぇ…! げぅ……まりじゃだぢはごみじゃ…!」 「ゴミが喋るな!! 虫唾が走る!!」 バァンッ!!!! お兄さんは心底怒った声をあげて、姉まりさのすぐ上の台を叩いた。演技でやったとはいえ、手が痛い…。 声とは違う空気の震える衝撃。少し前に畑で蹴りあげられたショックが、まだ意識を保っていた数匹の餡子に蘇る。 忘れていた。今まで何にもしてこなかったが、この人間は自分たちよりずっと強い。 箱の中の赤まりさたちは、お兄さんを怒らせてはいけないと餡子の危険本能で悟ったのか、口を閉じる。 その様子に満足したお兄さんは、優しい笑みを浮かべて箱の赤まりさたち一匹一匹を見て回った。 恐怖と絶望。二つの感情に支配された今の赤ゆたちの餡子はさぞかし甘くなっていることだろう。 お兄さんは頬笑みを崩さないまま、今度は囁くような優しい口調で語りかける。 ただしその内容は、ゲスに優るとも劣らないほど悪辣極まりない。 元々彼は話術でゆっくりを狂わせるタイプであるため、こちらの方が得意なのだ。 「いいかい、ゴミまりさ? 君たちにはもう誰も頼れる人がいない。食べ物を獲ってきてくれる親がいない。お勉強を教えてくれる親がいない。生き方を教えてくれる親がいない」 「……………」 「そんな赤ちゃんは、すぐに死んじゃうだろうね。もしかしたらさっきおかーさんに潰されていた方が幸せだったかな?」 「……………」 必要とされない物には生きる価値がない。 赤まりさにはもう生きている意味がない。 意味を見いだせない命は必要じゃあない。 お兄さんは本当に優しい声で、延々と赤まりさに自分たちの無価値さを説いた。 「そもそもね、まりさ種っていうのは最低のゆっくりなんだ。自分のためなら親兄弟も見捨てるやつらなんだよ」 「おきゃーしゃん………」 「うん、そうだね。さっきのまりさ達のおかーさんがいい例だね。皆もあんなゆっくりになるんだよ」 「まりしゃたちはそんにゃきょちょ……」 「いいや、絶対になるよ。だってゲスまりさから生まれて育てられたまりさたちなんだよ? しないわけないじゃないか」 「あ、あんにゃにょもうおやじゃにゃいよ……! まりしゃたちはちぎゃうんだよ!!」 「そう。じゃあ誰から生まれたんだい? れいむはおとーさんだよね?」 「ゆぅ……」 「そもそもみんなまりさ種じゃないか。都合の悪いことは全部人のせいにする、ゲスで乱暴で最低のゆっくりだろう?」 「まりしゃたちはちぎゃううううううう!!!!!」 「まさかまさか。だって母親にそっくりじゃないか。まだれいむ種に生まれればよかったかもねぇ……。うふふふふふふ」 「そにょわらいきゃちゃはゆっきゅりできにゃいいいいい!!」 餡子を吐き散らしながらも、自分たちの存在意義を主張する赤まりさ達。 お兄さんに散々罵られたせいで、赤ゆたちの葛藤によるストレスは多大なものであった。 さて、弄ることにも飽きたしそろそろ十分だろう。お兄さんはようやく話を本題に移すことにした。 「まあ、必要とされれば誰かが好きなってくれるだろうけどね」 赤まりさたちは、必要と好き。この二つの単語に敏感に反応した。 「それじゃあ試してみようか? まりさたちが本当に必要とされて好かれているのか」 「……ゆぁ、どうしゅればいいの?」 言葉責めされて精神を擦り減らされた赤まりさたちに、その提案を拒否する余裕なんてない。 すでに出来レースである賭けに乗るしか道はないのだ。 「さっき言ったよね。うちのゆうかからお野菜さんの勉強をしてもらうって」 彼の言葉に首を傾げる赤ゆと、うなずく赤まりさの二種類。 さすがに餡子脳では覚えていないかと予想していたが、どうやら賢い個体もいくつかいるようだ。 お兄さんは頷いた赤まりさたちを見て話を続ける。 「よく考えたらゆうかが気に入ってくれないと、君たちには勉強をさせることもできないしね」 「ゆ……! わかっちゃよ! やりゅよ!」 「まりしゃちゃちのかわいしゃで、めりょめりょになりゅにきまっちぇるよ!!」 「おにーしゃんしょんにゃきょちょもわきゃらないにょ? ばきゃなの?」 なんとまぁ…、さすがゆっくり。あまりの余裕ぶりにお兄さんは爆笑したくなる。 一匹に好かれればみんなに好かれると思いこんでる赤まりさたち。 お兄さんは、まだ縁側でゆっくりしているゆうかを呼び出した。 「なに、おにいさん?」 しばらくすると、口元の餡子を舐めながらゆうかが現れた。 「ゆうか。たしか畑の手入れが大変って言ってたよな。それでお手伝いに赤まりさなんて必要かと思ってね」 敢えて『必要』という単語を強調するお兄さん。 無論大ウソだ。ゆうか種は畑を作ることを楽しみとしており、そこに邪魔が入るのを極端に嫌う。 野生でも単独で行動する個体が多く、何より彼女は捕食種だ。他のゆっくりを無条件で好きになる謂れはない。 もしこの赤ゆたちが台所でなく彼女の領域内で出会っていたなら、瞬く間に全て始末されていたことだろう。 そして彼は、今回の話をゆうかに全て伝えていた。つまりは彼女も共犯者。 普段は物静かなゆっくりゆうかだが、その根っこはオリジナル特有のドSさを潜ませている。 当初は面倒事に巻き込まれることを渋っていたゆうか。 だが協力すれば夏には向日葵畑用の場所を用意するという旨を伝えると、彼女は二つ返事で了承してくれた。 本音を言えば、お兄さんは無条件で畑の一部をあげるつもりだったが…。ゆうかかわいいよゆうか。 そんな彼らの事情は露も知らない赤ゆたち。 見たことないゆっくりだが、きっと自分たちを可愛いと言ってくれるに違いない。 同族が現れたことで早速自分たちをアピールする赤まりさ達。 「「「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」」」」」 「ゆっくりしていってね。……おにいさん、これが?」 「そう、それじゃよろしく」 そう言うとお兄さんは、ほとんど治療を終えた姉まりさの方に向き直った。今度は破けた帽子の修復に取り掛かる。 修復といっても、黒い布切れに糊を張り付けるだけで済むやっつけ仕事なので一分もかからない。 台の上に乗せられていた姉まりさは、やはり黙ってお兄さんを見つめ続けている。 その目は先ほどまでと違い、何か意思を含んでいるようだ。 「ゆっきゅり! ゆっきゅり!!」 「ゆ、おねーしゃんまりしゃたちかわいいでしょ?」 「ゆっきゅりできりゅよにぇ?」 「おにぇーしゃんにしゅりしゅりしちゃいよ〜!」 「まりしゃたちちょゆっきゅりしよーにぇ!!」 「ゆぅ〜ん、おねーしゃんまりしゃおなきゃしゅいちゃよぉ〜!」 「…………………」 お兄さんが黙々と作業を進める背後では、赤まりさ達の声が何度もあがる。 自分たちは可愛い。自分たちはとってもゆっくりしている。 だからこそ、自分たちを嫌うゆっくりなんて絶対にいるわけない。 ほら、緑の髪のお姉さんだって自分たちの可愛さに声も出ないではないか。 あの母親と目の前にるお兄さんは、ゆっくりしていないからそんな事を言ったんだ。 根拠のない絶対的な自信を持って、まりさたちはひたすらゆうかに自分たちを売り込む。 もう少し、もう少しでおねえさんが自分たちを大事にしてくれる。 結果を餡子脳に浮かべて赤まりさたちが精一杯の笑顔を見せた次の瞬間、 「さいあく、なんで『まりさ』なの?」 ゆうかの一言で凍りついた。 まって、いまこのお姉さんは何て言ったの? 聞き取れなかったよ? その答えを聞いて口を開けたのはお兄さんただ一人。 「ははは、ごめんよ。捕まったのがそれだけでね……」 「まりさなんて、はたけをあらすだけよ。そんなゆっくりとはゆっくりできないし、いらないわ」 「要らないかい?」 「いらないわ。わたし、まりさなんてだいきらいだもの」 「言いきったね……。じゃあ、この赤まりさたちはどうする?」 「たべちゃえば?」 不機嫌そうに話すゆうかと苦笑するお兄さん。 二人の声も聞こえるし、姿も見える。けれど、赤まりさたちにはそれが餡子に入っていかない。 いらない。だいきらい。その言葉を言われないためにあれだけ努力したというのに……。 赤まりさの努力は一分も持たずに否定された。 お兄さんは母親に捨てられた時と同じような表情をして固まる赤まりさに振り返ると、少しだけ困った表情を浮かべてこう言った。 「だってさ………残念だったね?」 「ゆ………ゆびゃ! ゆびゃびゃびゃびゃ!!!」 「ぱぴぷぺぽ! ぱっぺぽおおおおおおお!?」 「ゆびゃらびゃばゆびゃびゃらゆびゅあ!?」 「ゆげ!? ゆっげげげげげげげげ!!」 「っと、やべ。壊れたか……?」 「だいじょうぶ。ただこんらんしているだけ。すぐにおちつくよ」 突如奇声を上げ始めた赤ゆっくりの様子に慌てるお兄さんに対し、落ち着いて同族の反応を見極めるゆうか。 その言葉通りお兄さんが姉まりさを治療し終えてしばらくする頃には、叫ぶことに疲れた赤まりさたちが箱の底につっぷして泣き始めた。 「まりしゃ……まりしゃいりゃにゃいきょなにょ?」 「いいきょににゃりゅよ……すちぇにゃいぢぇ……」 「みんにゃまりしゃをきりゃいなにょ…?」 そのどれもが完全に打ちひしがれていた。 最初は母親に。次はお兄さんに。そして最後は見知らぬゆうかに。 自分たちが今まで出会ってきた存在全てに否定されてしまった赤まりさたち。 途方に暮れた表情というのはこういうものを言うのだろうか……。お兄さんはしばしその様子を眺めていた。 すると、赤まりさたちの泣きじゃくる声が響く台所で、ほんの僅かな異音がお兄さんの耳朶を刺激した。 「さ…。…い…。お……、に……さん」 「……ん、誰だ? 僕を鬼さん呼ばわりするのは?」 「おにいさん、うしろ」 ゆうかの言葉に従って振り返ると、そこにはまな板の上で何度も身を捩じらせる姉まりさ。 先ほど彼を呼んだのは、この姉まりさだ。 潰れていた顔は膨らみを取り戻し切れていた唇なども綺麗に治されていたが、失った左目の部分だけは瞼が閉じたままだ。 「目が覚めたのか?」 「ゆ……、ゆっと、…おきちぇ……よ」(ずっと起きてたよ…) 「身体はどうだ、もう痛くないだろう」 「ゆ…ん……でも、あんよしゃんが……」 「それはお前の母親のせいだから、僕に言われてもね……」 「………ゆぅ……」 本音を言えば、あえてお兄さんは足を完治させなかったのだ。このままでは這いずりでしか移動できない。 足が満足に動かない状態では、腕のないゆっくりは起き上がるだけでも時間がかかる。 「お……、おに、…しゃん……は」 「待ってろ、今ジュースかけてやる」 動きは鈍く、話もたどたどしいのでは時間がかかってしまう。 体力回復のため、お兄さんはオレンジジュースを皮がふやけない程度、姉まりさに染み込ませると摘んで立ちあがらせた。 「あみゃあみゃしゃんだよ…、ゆっきゅりできりゅよ……」 「「「「「ゆああああん、おねえぢゃああああああん!!」」」」」 「だいじょーぶだよ、まりしゃは、もう、いちゃくにゃいよ……。ちょっとまっちぇちぇね…」(もう痛くないよ。ちょっと待っててね) 泣いて喜ぶ姉妹たちに対し、弱々しくも笑みを見せて応える姉まりさ。 まだどこか元気が無いように見えるが、これは精神的なものなので気にしない。 我ながらいけしゃあしゃあと対応できるものだと思うが、この程度のことなど虐待お兄さんにとっては最低スキルだ。 「で、どうしたんだい?」 「あの…にぇ…、まりしゃおにぇがいがあるにょ……」 「……お願い? それは何かな?」 お兄さんの質問に、姉まりさはしばし戸惑いを見せて悩む。 この先を言っていいものか、もし拒否されたらどうすればいいのか。そんな感情がありありと見て取れる。 そんな赤ゆっくりを見るのも一つの楽しみだ。お兄さんは何も言わず、ただ笑みを浮かべながら姉まりさの言葉を待つ。 「あのにぇ……、まりしゃちゃちをたしゅけちぇほしいにょ…」 「おねーしゃん?」 「どういうきょちょ?」 「ねえ、まりさ。それはどういう意味だい?」 「……まりしゃたちに、おやしゃいしゃんやいりょんにゃきょちょをおしえちぇくだしゃい!!」(お野菜さんやいろんな事を教えてください) 計画どおり。全てが彼の掌の上で進んでいた。 もちろん、彼はこの先の姉まりさの言葉を手に取るように予想していた。 そのためにここまで赤ゆたちを責めたのだ。幾度となく繰り返し赤ゆたちの心を抉り、餡子脳でも忘れにくいトラウマを植え付けたのだ。 全ては彼の楽しみのため。 そんな彼の計画をスムーズにしてくれたのは、この姉まりさであった。 おそらくこの姉は外見こそまりさ種だが、父親のれいむの餡子を一番強く受け継いでいるのだろう。 生きる事に執着するゲスの餡子と、仲間を思いやれる知性を兼ね備えた姉まりさ。 だからこそ彼は、わざわざ瀕死の姉まりさを治療したのだ。自分たちを見捨てた母を信じ、姉妹の事にも気を配れた姉まりさを。 無論姉まりさのような知性のあるゆっくりがいなくとも、お兄さんにはこの流れに持っていく用意はあった。 だがこれは嬉しい誤算だった。こうして姉妹の誰かが指揮を執ることによって、計画がさらに円滑に進められるからだ。 事実、待っていろと言われた妹たちは大人しく、事の成り行きを見守っている。 縋る物すべて失った赤ゆたちが生き残るには、姉まりさの考え付いたことしか方法がない。 人間の庇護下に入り、そこでルールを学ぶ。たとえゲスの母が言った通りの奴隷のような扱いをさせられるとしても…。 それでもどうにかして生き延びたい。姉妹を一匹でも多く救いたいという姉としての責任感を抱え、まりさはその道を選んだのであった。 ゆん生一代の決心をした姉まりさを見て、お兄さんはゆっくりと笑みを深めた。 「………わかったよ。君たちをしっかり教育してあげるとも」 「ほ、ほんちょ!? まりしゃたちをたしゅけちぇくりぇゆの!?」 「いいとも、もちろんしっかり勉強してくれるならだけどね」 「がんびゃりゅよ!」 「ゆぅ〜ん! おにーしゃんありがちょうね!!」 お礼を言うのはこっちの方さ。君たちのおかげで、しばらく楽しめそうなのだから。 お兄さんは赤まりさたちと出会った時のように、口を三日月の形に歪めて玄関の方へ顔を向けた。 すでに彼の意識は箱に入れらたままのゲスまりさへと向いている。 さあ準備は整った。ゲスまりさ、お前の苦しみはこれからだ! 後編?へ あとがき ………反省します。ほんとごめんなさい。どんだけ月気取りだよお兄さん。 最初は二回に分ける予定だったのに、無性に赤ゆを苦しめたくなってしまいもうgdgd。 モニターの前で一度土下座しました。もう一回します。 そしてせっかくゲスまりさを徹底的にいじめ抜くハズだったのに、いつの間にか赤ゆの洗脳ルートに……。 次回で締められるように努力するとともに、もし読んで下さっている方がいるならば、この場を借りて感謝を意を述べさせて頂きます。 次回こそ……次回こそ……ヒャア! 虐待だぁ!!